ハンムラビ法典の前段となる他の法典たちについての覚書き:古代メソポタミアの判例集

ハンムラビ法典は、かつては世界最古の法典と呼ばれていたが、より古いものが見つかって、今は「ほぼ完全に残っているものとしては世界最古の」、という書き方に変わっている。 その前段となる法典について覚書をしておきたい。 なお、これらはlaw of~ではなくCode (Collection of Laws) of ~という英語で検索すると全…

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古代エジプト第0王朝(王朝黎明期)と、ナルメル王は実際には「統一王」では無かったという話

第0王朝とは、最初の統一王朝である第一王朝誕生以前の黎明期を差している。ここは日本で言うヤマト政権の誕生以前、首長国家とでも言うべき地域ごとの小国が連立していた時代になる。 アビドスとか、ヒエラコンポリスとか、メンフィスとか、ナカダとか、都市を中心とした一定の範囲で別れた勢力が存在していた。これはざっくり言うと、各地域の土器の様式が統…

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ロバという便利な生き物について。それは人類が最初に手に入れた「運搬道具」だった

突然だが、「ロバは人類が手に入れた極めて優れた荷物運搬用の使役動物だった」という話をしたい。 よく古代エジプトには荷車が無かった、車輪が発明されなかったという話が出てくるが、そもそもエジプトは家畜ロバの原産地に近く、かなり早い段階からロバを使役していたと考えられる。便利なロバがいれば、敢えて荷車を開発する必要もなかったからだという…

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ウォレス線はどうやって形成されたのか。生物種の境界には「気候変動時の適応力」が関係するのでは、という説

まずは前提知識だが、オーストラリア大陸は元々は南極近くにあり、アジア方面に向けて北上してきて今の位置になった。 実はオーストラリアの北にあるニューギニア島もオーストラリア大陸の一部であり、一緒に北上してきている。長らく他の大陸と繋がっていなかったオーストラリアでは、独自の生き物が多数進化した。 このニューギニア島では、オ…

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サハラの岩絵、タッシリ・ナジェールとへンリ・ロートの探検による問題について

サハラ砂漠の真ん中辺り、リビアとアルジェリアの境目に位置する砂岩の渓谷に、先史時代以降の多数の岩絵が残されている。そのうちの代表的な場所がタッシリ・ナジェール(Tassili n'Ajjer)だ。 写真はググれば色々出てくる。 →参考;Wikipedia で、ここの壁画について、「過去の探検家によってエジプト風の壁画が捏造さ…

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エジプト人はなぜゾウやキリンを神格化しなかったのか。「珍しい動物は神格化しない」というルール

古代エジプトでは、様々な動物が神格化されている。動物の頭を持つ神、または動物を神聖な動物とする神は多い。 ただ、ヒエログリフに登場するくらいメジャーでありながら、決して神格化されなかった動物もいる。たとえばゾウやキリンなど。 これらの動物が近くにいたことは確実で、壁画や小物の意匠などでは登場しているのだが、神と結び付けられることがな…

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「リビアのピラミッド」はエジプトからの影響か。→メロエからの影響では?

リビアにあるピラミッド型の墓の並ぶネクロポリスに、エジプトからの影響があるかもしれない。という話を見かけたので、ちょっと調べてみた。 まずリビアのピラミッドと呼ばれているものは、紀元前2世紀半ばにサハラ砂漠で台頭したガラマンテス人(Garamante)の王国で作られたものになる。ヘロドトスの記述で有名な部族だが、過酷な砂漠に都を作って…

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ユダの丘にある洞窟は「死者との対話」のために使われた? ローマ支配下の異教活動

イスラエルはユダの丘にある広大なテオミム(Te’omim)の洞窟内部から見つかった人骨と大量のランプは、ローマ支配時代に洞窟内で行われた黒魔術の痕跡ではないか、という論文が出ていて、面白そうだったのでメモしておく。 論文タイトルに「ネクロマンシー」とあるように、死者の頭蓋骨とランプを持ち込んで、洞窟内で何らかの儀式を行い、イタコの…

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水難事故の多くなる季節なので。この猛暑でも渓谷の水は「冷たすぎる」! 川で泳ぐのはオススメしないぞ

えー、この猛暑の中を元気に登山してる中の人です。 まぁ暑いんですけどね。晴れてたらこう…なんか…山に呼ばれてる気が… さてこの暑い季節、川べりのキャンプ場は大盛況、バーベキューWithビールなどでナイル<川>を讃える儀式に興じるご家族連れなども多くなって参りました。登山者はその横を山道に急ぐわけですが。 見てると、…

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蛍光X線分析で見る古代エジプトの墓壁画/描き直しの跡いろいろ

エジプト壁画に描き直しの跡が見つかった、という論文が出てて、いやーそりゃ描き直しくらいするっしょ?? とは思ったものの、ちょっと読んでおくことにした。使っているのはMA-XRFとのことなので、日本語だと「蛍光 X 線分析」あたりになるだろうか。これでぐぐると、なんとなくやり方はわかる。 ただ、エジプトの墓の壁画は狭い墓の中の壁面に描か…

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ネケブ砂漠の十字路と旅人の墓、そこに納められたのは誰なのか

紀元前1千年紀の砂漠の十字路に位置する「旅人のための墓」、これは面白そうな発見だなぁと思ったのでメモしておく。 旅人の墓と言われているのは、近くの集落のいずれとも関係なく、様々な地域/様々な所属コミュニティの持ち物が雑多に数百年分重なっていることから、砂漠ルートの途中で死んだ人を納める共同墓地だったと考えられているからだ。 Do…

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都市の誕生から現代まで、三千年の"時"を通史で語る「ダマスクス」

分厚い本なのだが、ぺらぺらめくっていると、やたらと本文内でエジプトに言及している箇所があって気になった。そんな感じで手に取った本、「ダマスクス」。タイトルどおり、現シリア・アラブ共和国の首都でもあるダマスカスという「街」についての通史である。この街の名前は、ダマスカス鋼などの言葉としても有名だが、意外と、その起源や歴史については知らない…

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テティシェリ王妃のピラミッドが修復完了、公開される

テティシェリ王妃のピラミッドが修復され公開された、というニュースが流れていた。この王妃は第18王朝の創始者アハメス(イアフメス)の祖母で、第17王朝セナクトラー・タア(タア1世)の妻だったとされる。また、ヒクソスと戦って戦死したと考えられているタア2世は、彼女の息子の一人と考えられている。 アハメスのピラミッドはエジプト世界で最後に作…

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チベット、エチオピア、アンデス。世界の高地民を巡る写真集「極限高地」

世界の高原地帯に住む人々を巡るという珍しいテーマの写真集。前に広告だけ見かけて気になっていたのだが、たまたま見かけたので手にとってみた。 実はこれら三箇所の高地は、自分も既に巡っている。だからこそ、そこに行くキツさの想像がつく。 チベットはラサが入り口、アンデスはクスコから、エチオピアはアディスアベバからラリベラへと飛行機で飛んでそ…

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マヤの世界観とアルマジロ、新大陸ならではの神話について

マヤの遺跡からは大量のアルマジロの骨が出てくる、おいしい食用としても、甲羅を装飾品として使うためにもたくさん狩られていた。という話を見かけたので、ちょっと調べてみた。 まず最初に出てきたのがスペイン人が最初に新大陸でこの動物わ見た時に、何に分類していいか分からず「ブタ」と呼んだりしていたという情報。なるほど言われてみればアルマジロ…

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