今夜あなたと呪詛したい。キリスト教時代の「古代エジプト神の出てくる呪詛」についての覚書き

古代エジプトの神々は、黒魔術では人気の題材だった。だが、中世末期にいきなり人気になった、とかではなく、その前段がある。 前段となるのが、ローマ支配以降、キリスト教がまだ国教となる以前。1世紀~5世紀くらいの事例が多く、8世紀半ばには禁止によって消滅する。そのあたりの資料が、こちらの本である。 古代世界の呪詛板と呪縛呪文 - ゲイ…

続きを読むread more

古代エジプト人と黒曜石の利用;輸入ルートの実態など

前提として、「エジプトでは黒曜石はとれない」。 古代エジプト人は、一部、黒曜石も利用していたが、それらはすべて輸入品である。 黒曜石はある種の火山の活動によって作られるものなので、火山のある場所でしか見つけることが出来ないのだ。日本でも、火山のない四国では黒曜石の拾える場所はないのである。エジプトも火山がないので状況は同じ。 …

続きを読むread more

古代エジプト人の髪型が「黒髪ぱっつん」にされたのは何故なのか。遡るとけっこう昔からあるっぽいのだが…

近代の創作物で、古代エジプト人の髪型が何故か黒髪ストレートのサラッサラなおかっぱ頭にされていることが多いのだが、実際の壁画とか像とかでそんなのほぼ見たことがないのである。だいたい細かい編み込みのされた髪型か、縮れた毛になっている。なんでストレート…? と思ってちちょっと過去にさかのぼってみた。 一つのルーツは、おそらく1963年の…

続きを読むread more

古代アンデス民はジャガイモを食っていた? 狩猟採集民ではなく「採集狩猟民」だったかもしれない

古代、最初期にアンデスに住み着いた人たちは、既にジャガイモを食べていたかもしれない。 そんな研究が出ていたので、ちょっと論文を読んでみた。 ざっくり要約すると ・人骨の同位体比を調べることで、食べていた食物の種類と比率がわかる ・9,000 年~6,500年前という超初期の人類の骨を調べてみたところ、8割がC3植物だった …

続きを読むread more

人類の誕生から近代までの宗教一直線「ホモ・サピエンスの宗教史」

ぺらっとめくったらエジプトの宗教の話ししてたから、スッ…てレジにいった。 エジプトの話が出てくる本は取り敢えず読む。いつものアレ。 分厚いが、前半は原始時代~古代あたりの原始宗教まで、後半は一神教などお馴染みの世界宗教や宗教改革といった歴史の話で、後半部分は他にいろんな本で詳しく触れられている人気ジャンル(?)かと思う。なので自…

続きを読むread more

古代エジプトの死者の書 125章「否定告白」は実はバリエーション色々あるよ。というわけで

というわけで! 説明するのが面倒くさいので! リスト作っておいたよ!(どーん) まず代表的な「死者の書」の一覧。 http://www.moonover.jp/bekkan/sisya/index-list.htm 「アニのパピルス」、「ネブセニのパピルス」あたりは大英博物館が所蔵してて、もりもり資料を出して…

続きを読むread more

古代エジプト人「死後の世界でもお肉食べたい…せや!」→肉ミイラ製造へ

寒い季節は体温を上げるためにガッツリしたもの食べたくなりますよね。お肉とか。 というわけで古代エジプト人の死後の世界とお肉の話。 「死者の書」の前身となる「ピラミッド・テキスト」には、死後の世界で飢えることがないように、との希望から、呪文の中にお肉やパン、ビールといった好物を書いていた。 それだけに飽き足らず、副葬品にも乾燥さ…

続きを読むread more

ハトシェプストが「男装」した理由と、古代エジプト人の概念「マアト」

ハトシェプスト女王は、古代エジプトの複数いる女王の中でも何故か妙にフェミニズムとか性同一性の話だとかに「利用」されやすい存在となっている。だが、そもそも彼女は男性になりたかったのだろうか。 私はそうではないと考えている。理由は簡単で、彼女は結婚して子供もいるし、男性の格好をして壁画に登場しているものが一部あるだけで、それ以外は女性の姿…

続きを読むread more

アマゾンのジャングルの下に眠る集落がLiDAR技術で明らかに。アマゾン文明の知見がまた一つ

LiDAR技術は何度かここでも取り上げている。 よく知られる使用方法は自動運転技術で、光を当てて、その反射光を光センサでとらえて物体までの距離を測定するというリモートセンシング手法になる。その手法が、実はいま考古学の世界ではアツい。 木に覆われて地表の見えないジャングルで使うと、植生に埋もれている遺跡の形を「透視」出来てしまうのだ。…

続きを読むread more

古代人は乗馬が出来ない。それが出来たらチャリオットは要らない

古代エジプト創作をする人が、漫画・小説・その他と種類問わず高確率で間違えて出してしまう「馬に乗って移動」という描写。 これを絶対出してはいけないと口を酸っぱくして言っている理由が、「馬に直接乗れたらチャリオット要らん」になってしまうからです。 一般人レベルでほいほい馬に乗れてしまうのなら、当然兵士も馬に乗れますよね。 つまり騎馬兵…

続きを読むread more

古代世界で金属矢じりの矢は超高級品。うかつに出すと財政破綻しちゃうゾ★ というわけで矢じり種類の資料を置いておくよ

古代エジプトイラスト、矢じりに金属ついてるやつけっこう見かけて「この時代の青銅くっそコスト高なんでそれはちょっとファラオ様の財政が厳しいぞ??」って思ったんだけど、よく考えたら一般人そもそも古代の矢とか知らんよなって思ったので、少し詳しいめにまとめておくことにした。 ●古代世界の「弓」 まず、弓には単弓と複合弓がある。単弓は…

続きを読むread more

ホルスの道の出発点を探して。~「シレの砦」はどこにある?

「ホルスの道」、一般的に Horus Road または Horus Military Route と呼ばれている古代エジプトの東に繋がる道は、交易路であるとともに東側諸国への軍隊の遠征路でもあった。下の図の、緑色の矢印になっているところが「ホルスの道」である。この道は中王国時代には記録に登場し、東の国境防衛線として「支配者の壁」というも…

続きを読むread more

20世紀初頭・ヌビアの貴重な発掘記録、100年ぶりに大学の倉庫の中から「再」発見される

第二次世界大戦中に失われたと考えられてきた貴重な下ヌビア(スーダンのエジプトに隣接するあたり)の発掘カードが、なんと大学の倉庫から再発見されたというニュース。見る限りそこそこ状態のいい部分があるようで、おおおお…その資料をデータベース化してくれ…見たい…と中の人の喉から手がにょろり。 ヌビアまじ、まとまった資料なかなか手に入らなくてさ…

続きを読むread more

「ニーベルンゲンの哀歌」―本編にくっつけられた外伝的な後日譚

「ニーベルンゲンの哀歌(クラーゲ)」とは、「ニーベルンゲンの歌(リート)」に付随する「後日譚」的な物語である。序盤の内容は本編のあらすじになっており、そこから、本編後に起きたことについての外伝的な展開が続く。 この部分だけの邦訳がでてるのを見つけた時は、正気か? これワイ以外の誰が買うんだ?? と思いながら手に取ったのだが、読んでみる…

続きを読むread more