帝国の支配者たる女たちの物語「モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち」

本屋の新刊コーナーにあったので、移動中に読もうと思って手に取った。著者プロフィールを見ずに読み始めたので、てっきり中国人が日本語で書いていると思っていたのだが、なんとモンゴル人で、ある意味関係者だった(笑) 途中で「私の一族の場合」とか出てきて、「???」と思ったのだが、著者名は中国語ペンネームで、本名のモンゴル語名と帰化後の日本名も…

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史実と創作のはざまで許されることとは。「中先代の乱」と「逃げ上手の若君」

鎌倉と北条氏推しのマンガ「逃げ上手の若君」がアニメ化されてヒットしているようだ。 マンガはもちろん売れているだろうが、その原典(?)とでも言うべき本のほうも是非、書店の方は平積みにしていただきたい…封神演義のマンガがあたった時と同じで絶対売れるから…。 そう、主人公の北条時行をテーマにした一冊の文庫本が既に出てるのである。 …

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アスワンのダム湖の中にはまだお宝がたくさん沈んでる。ダイビングで石碑を新発見

ダム湖に沈んでしまった遺物は水中考古学の範疇になるらしい。 1960年代までに、アスワン・ロウ・ダム(ハイ・ダムの下流に作られたダム)によって水没してしまった遺物を、ダイビングで改めて探してみたら、今まで知られていなかった第18王朝と第26王朝のファラオの石碑が見つかったよ。という話。 発表はエジプト政府(エジプト・フランス合同…

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東京に住む都会派カワセミと仲間たち「カワセミ都市トーキョー」

人の密集した環境は読み物がないとストレスに耐えきれない中の人ですよ。移動が多い週はとにかく本がほしいのです。 というわけで本屋適当に漁って見つけた本。なかなか面白くて一気に読めた。 カワセミ都市トーキョー 【電子限定カラー版】 (平凡社新書1049) - 柳瀬博一 ざっくり内容をまとめると、「カワセミといえば清流の鳥のイメ…

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ワニのミイラはどうやって作るのか。末期王朝ミイラの分析から

そういやワニって爬虫類だろ? 哺乳類とおなじミイラの作り方は出来んくない? と思ったから、ついでに調べてみた。 フランスのリヨンにあるMuse´e des Confluencesが所有するワニミイラの分析。このワニは小さいやつなので、末期王朝時代にミイラ化するために養殖されていたやつだと思われる。 Synchrotron “vi…

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水不足のエジプトさん、海水淡水化施設を増設。人々はナイルを離れ新天地へ…

雨の降らない国エジプトでは、ナイルは過去五千年に渡り、唯一の確実な水源だった。古代エジプト文明はナイルのほとりに生まれ、栄えた。 だが今、エジプトは、首都を砂漠の中へ移し、上流に作られた多数のダムによって水量の減ったナイルを頼りにしない道を歩み始めている。 Egypt Ramps Up its Desalination Effo…

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徳島城博物館で刀剣展示中。美しい海部刀がまとめて見れるぞ! 審神者はいっそげー

隠れ審神者なので、田舎帰ったついでに徳島城博物館でやってた刀剣イベントに行ってきた。 かつて阿波国の南部に存在した刀工集団によって作られ始めた「海部刀」がまとまって展示されている貴重な機会。近辺に潜んでる審神者は会期中に行っとくといいと思うよ!  公式 https://www.city.tokushima.tokush…

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古代エジプト:ワニのミイラから「最後の食事」が見つかる。(釣り針つきお魚)

仕事は多忙な時期にコロナで同僚がほぼ全滅、リアルでは親族の葬儀と片付け、とイイ感じに公私ともわちゃわちゃしていた中の人です。こんばんは。結局最後に一番頼れるものは自分だ…いざという時の体力、体力は正義。 というわけで色々力技で片付けたので、現代に戻してた分霊にはまた古代に旅立っていただきます。 古代エジプトのワニのミイラ…

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アサシンクリード・シャドウズ大炎上。だが過去作もけっこう雑な点はあったという話

暗殺者になってテンプル騎士団と戦うSF歴史アクションゲー、アサクリシリーズの最新作・シャドウズが炎上している。 今回は日本が舞台なのだが、日本人が主人公じゃない、日本史のリサーチが甘い、日本と思えない表現が多い、日本語トレイラーに中国語入ってた、などなど、いろんな方向から火が放たれて本能寺状態なのである。謀反人は明智だけだと思ってたら…

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古代エジプトの書記は体のどのへんに負荷がかかっていたか。骨の変形から見る結果

古代エジプトの書記の骨(というか関節)を調べて、その変形から仕事の負荷を見てみようという研究が出ていた。 論文のタイトルにもあるとおり、対象はアブシールで出土した古王国時代の書記たち。「書記」かどうかは、埋葬から上流階級だなというところや、墓の副葬品、故人の職業として歯書記だと明確に書かれているかどうかなどで判別しているらしい。正確な…

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古代エジプトのペンは「葦」ではなく「イグサ(灯心草)」。日本語使い分けどうしよう…

今までなんとなく、古代エジプトのペン(筆)のことを「葦」と書いてきた。だが、実は「イグサ」のほうが訳語としては正しい、ということにフト気づいてしまった。 実はプトレマイオス朝の頃にペンの種類が変わり、文字体が変化したのだが、その前後でペンに使われる植物の種類が変わっているのだ。 ●王朝時代 Juncus maritimus →…

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解読できないエジプト語「バルーア・ステラ」→文字が風化しすぎて分からん

ヨルダンに、古代エジプト語っぽいけど未解読の石碑がある、という話を読んで、ほうどんなものかなと思って調べにいってきたのでメモを残しておく。 バルーア・ステラ(Balu'a Stele)という名前のもの。検索したらすぐ出てきた。 出土地はヨルダンで、おそらく新王国時代の後半、第19~20王朝のもの。エジプトがレバントを支配し、強い影響…

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古代エジプトに存在したのは「スイレン」、だがLotusの一般的な訳語はハスという面倒さ

まず最初に、古代エジプトに生えていたのは「スイレン」であり、「ハス」ではない。ということを念頭においてもらいたい。 「睡蓮」と書いている本は正解で、「蓮」と書いてある本は全て間違い。蓮はインド亜大陸から東南アジアあたりが原産のものと、アメリカ大陸が原産のもののニ系統が知られているが、どちらも古代にはエジプトに入ってきていない。そし…

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ギリシャ語文献にヒッタイトが残らなかったもう一つの理由は「接触時期が短い」か?

ヒッタイトは、ほんの1世紀前に再発見された新しい文明である。大国としてエジプトと渡り合った時代がありながら忘れ去られ、その首都の場所やかつての王たちの名前も埋もれたままになっていた。 原因の一つは、ギリシャ語記録に全く残っていなかったからだ。以前、年表を書いて考えてみたが、クレタ島の文明崩壊後、文字を失ってしまったギリシャ系の民族…

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