Beowulf&Grendel(日本語タイトル:ベオウルフ)

ブログに標準でついてくる、AMAZONの商品検索をいじって遊んでいたら、前々から気になっていたBeowulf&Grendel(ジェラルド・バトラー主演)のDVDを発見してしまい即購入。びばネット通販。だがドアノブに商品ひっかけて帰った佐○急便の人は、オーディンの罰を受けるがいい。

ベオウルフ 呪われし勇者」と全く同じ主題を扱いながら、宣伝と扱いはこっちがかなり下だったりして、ジェラルド・バトラーファンやベーオウルフファンによって上映嘆願運動が行われたこともありました。(んで、お誘いうけてちょこっとだけ参加したもんの大した力になれなかったとかいう縁ですorz)


DVDでは英語・日本語・字幕がありますし、お値段的にも分厚い小説を買うよりは安かったりしますので、もし気になってる方がいらっさるなら…

…と、言いたいところなんですが、… これ、うーん、…ベーオウルフの元ネタ知らない人が見て楽しいのだろうか。いや、ベーオウルフを知っていたとしても、ベーオウルフ愛じゃない人には果たして面白いと感じられるのだろうか…。

ストーリー展開が微妙。

微妙と感じさせるのは、そう、敢えて言うならば、「キャラクターへの思い入れの強さ」が強すぎるから。王と王妃、村人Aや子供たち、仲間の一人一人、さらには敵であるグレンデルたちにまで思い入れが及び、深読みさせようとしているんですよ。なのでそれらに全く気がつかない人には淡々として薄っぺらに感じられるだろうなと予想できる。

しかし逆にターゲットを絞り込むことで北欧ファンならきっと喜べるはずの出来になっているので、まずは良いところを。


この作品の見所は、なんといっても風景。
さすがロケ地がアイスランドなだけある。自然は、どんな人間が空想で描くよりもっとすごいものを作り出してくる。凍てつく海をゆく竜骨船、氷河が削った断崖絶壁、地平線まで広がる永久凍土… まさに北欧神話やサガの世界。

小道具、背景、空気は全てホンモノ。そして生身の人間はやっぱりすごい。仲間が死ぬときのデネ人、イェーアト勢それぞれの表情の微妙さ、俳優さんの演技力。そうしたものは、今のCGには決して追いつけない領域だと思うのです。

ただあまりにもリアルに作りすぎて、戦闘の派手さがない(CGで火を噴かせたり、血が派手にドビューっとなるようなシーンはない)。そもそも、戦闘自体、ほとんどない。英雄も怪物も人間的で、現実味を帯びた存在になっている。
そしてグレンデルとベーオウルフ、どっちもカッコいい生き方をしていて、渋い。理知的な存在として描かれているため、無駄なチャンバラはしない。そこも地味に見える理由かな。

北欧神話、サガの世界は、問答無用で流血沙汰になるのがデフォルトなので、お互いの「戦う理由、死ぬ理由」とか、「敵なのに殺さないという心」とかを出してしまうと、素材の力強さが弱まってしまうのだと思った。
かといって、有無をいわさず斬りかかるのは現代的な感覚では只の乱暴者なわけで、ヒーローとして感情移入はしにくいかもしれない。難しいとこですね。


ちなみに、フルCGの「呪われし勇者」と、どちらが面白いかというのは比べようがない、全く別ジャンルです。

なんか派手なアクションがあって、ストーリーがさくさくすすんで、気軽に楽しめるのが「呪われし勇者」。たぶん大衆娯楽に向いてるのはこっち。

伏線の予測、世界観への同化など頭を使いながらじっくり浸りたい人、ヴァイキングたちの生き様に惹かれる人には、こちらの「ベオウルフ」をお勧めしたい。

…両方見てみるとわかりますが、不必要にネタが被りすぎ。(笑)
原典からチョイスするシーンも同じだったり、洗礼ネタや、グレンデルの腕が落ちるシーンなどはモロ被り。ただでさえ、同じ時期に同じ題材で作ってるんだから、もっと違えればいいのに。あのシンクロ率は一体何だ。

個人的には、こちらのジェラルド・バトラー主演の「ベオウルフ」のが好き。あの終わり方はいい。サガっぽい世界観が見事にあらわされてます。あの子供、海岸でひとり佇むベオを見てどう思ったんだろうか。
役者さんの演技が巧いんで、ほんのちょっとした視線に意味を感じ取れる。間合いが巧い、というのも、この映画の凄いとこです。


グレンデルの命に対価を支払い、竜骨船に乗って名誉だけを道連れに国へともどり行くベーオウルフたちの姿は遠い海に。

そして魔女と巨人は、多くの躯とともにデネの地に。

結局、この映画の主題とは、戦うことのむなしさとか、英雄と呼ばれる者もいつか死ぬとか、そういうことだったのだろうか、とちょっと考えてみる。


Beowulf&Grendelの英語公式はコチラ。素敵なおじ様…じゃない猛きヴァイキングの雄姿が心行くまで拝めますぞ。

ちなみに、英語版タイトル「Beowulf&Grendel 」は多分、ベーオウルフとグレンデル、二人とも「主人公」だという意味でつけられたものだと思う。日本語タイトルがベオウルフだけになってんのはどういうことだ…
そこが一番残念だ。

ベオウルフ
ベオウルフ [DVD]

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