「崖の上のポニョ」の元ネタが北欧神話かどうかを考察したい貴方のために

どういうわけだか、ポニョが北欧神話と関連がある、というデマが出回っているらしい。
(出回って「いる」のか、「いた」のか、これから出回りそうな気配があるのか、は不明)

何故この作品が北欧神話? ニーベルンゲンの指輪?
それは私に食いつけということなのか。

mixiでその事実を教えられ、流されるままに Wikipedia → yahoo映画の感想 →教えてgoo と放浪して、なんとなく察したことは、この映画が「思わせぶりで、何か深い意味があるんじゃないかと思わせるんだけど釈然としない」「あっさり終わりすぎることと説明のないできごとが多い」…という、深読みしたくなる心理を誘引するものだった、ということだ。映画を見終わったあとで何とかして自分の中の整合性を取りたくなった人々が、ポニョと北欧神話の関連説に食いついたということだろうか。


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中の人は映画を見に行っていません/見に行く予定はありません
なので以下に映画に関するネタバレはないです
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ポニョの公式サイトには、

アンデルセンの「人魚姫」を今日の日本に舞台を移し、キリスト教色を払拭して、幼い子供たちの愛と冒険を描く。


と、書かれている。人魚姫にキリスト教色、というのも「??」だが、「人間に恋して地上を目指す魚の子」というあらすじからしても、人魚姫なら納得するが北欧神話のニオイはしない。なのに何故、北欧神話やらニーベルンゲンやら出てくるのかというと、


 ポニョの本名が「ブリュンヒルデ」だから。


これはちょっとびっくりした。人魚姫と北欧神話は関係ない。何故混ぜようと思ったのか…? (汗)
名前が一緒なだけで元ネタとの関係があるとは言えないはずだが、じゃあ逆に、わざわざ、この特別な目立つ名前を選んだことに意味はあるのかと言いたくなる。意味があるとすれば、それはそれで随分な皮肉だ。なぜなら、この名前は、

 決して成就しない恋愛に生きて悲劇的に死ぬ戦乙女の名前 なのだから。


コンセプトを見失っていたのか、悪い冗談か、本気で何か勘違いしているか…。落としどころとしては「運命と戦う強い女性のイメージを持たせたかった」くらいだろうが、見た目もファンシー、設定的にもオコチャマの主人公にふさわしいとは思えない。ここに意味を見出そうとするのは確かに難解だ。


もし、ポニョが「ニーベルンゲンの指輪」の戦乙女たるブリュンヒルデなら、 その愛は、試練を越えて勝ち取らねばならない。 ポニョに愛される宗助は勇者ジークフリート(シグルド)様だ。しかも、ジークフリートはブリュンヒルデの愛を裏切って、そのために殺されることになっている。
そして、北欧神話でも、他のニーベルンゲン伝説でも、世界は破滅する運命にあり、その運命は逃れることが出来ない。運命を変えようとした神々は、それに失敗し滅び去ってゆく。この映画の目指すところが救いようのない悲劇と破滅であるならば、北欧神話やニーベルンゲンを元にしたと主張してもいいだろう。


この映画にあまり興味がないので、見に行ってまでどうこう言う気はないのだけれど、なぜ主人公の本名がプリュンヒルデなのかは、是非とも作った本人に聞いてみたいところだ。




# 参考までに

これからポニョ+神話ネタで盛り上がりたい、映画を見た神話ファンのために、これを置いておきます。

”ニーベルングの指輪”のあらすじ+簡単な解説 ⇒ゲルマン関連伝承



勘違いされやすいですが、「ニーベルンゲンの」と「ニーベルンゲンの指輪」は別物です。完全に元になっている、というわけでもなく… 
簡単にまとめると、成立の流れはこんなかんじ。

(1)
いくつかの歴史的な出来事や実在した民族を元につくられた伝承が北欧神話の一部と絡んで発展したものが「ニーベルンゲン伝説」で、北欧神話の最大の原典でもある「エッダ」に、その中のエピソードの幾つかが分散して残っている。

(2)
「ニーベルンゲンの歌」は、それらの分散したさまざまなバリエーションのエピソードを一つにまとめ、編成して、13世紀初頭に成立した叙事詩です。編纂者は不明です。また、この物語は「ニーベルンゲンの災い」とも呼ばれる。

(3)
ほぼ同時期に作られた、ディートリッヒという王(エッダにも、ニーベルンゲンの歌にも登場している)を主人公とした「シドレクス・サガ」という物語にも、「ニーベルンゲンの歌」とほぼ同一のエピソードが収録されている。

(4)
(2)と(3)のほか、ヴォルスンガ・サガやエッダも元にして、19世紀にワーグナーがオペラとして作ったのが「ニーベルンクの指輪」。神話を元にはしているが、女神エルダや、ワルキューレは9人であるといったオリジナル設定も多い。
「ブリュンヒルデ」という名前が登場するのは、この作品。

エピソード別 簡易相違表 はこちら

あとは、「ニーベルングの指輪」は北欧神話をかなり改変して登場人物の立ち位置や行動理念などの意味合いを変えてしまった物語なので、「指輪」のほうが関係しているというのなら、北欧神話はあんまり関係ないと思う。

…北欧神話ファンからは、「あんなヘタレなオーディン好かん」などと文句を言われることもあります。ハイ。

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