エジプト文明のダメなとこ Part3 「資源がない」

え?
古代エジプトは世界有数の金保有国だった、って? 金が豊かだったからファラオの副葬品も金だらけだった?
まあ完全な間違いじゃない。でもね。

 その金 エジプトの産出物じゃないんだよ…。


正確に言おう。金の産出地はヌビアだ。
エジプトで使われていた鉱物資源の多くは、近隣からかき集めたものだった。主な入手ルートは以下のようなものだ。

 銅 ⇒ シナイ半島(国がない、ベドウィンが散在するフリー地帯)
     または国内の紅海沿岸
 金 ⇒ ヌビア(王朝初期からの植民地)
 鉄 ⇒ シリア、レバノン (交易で入手)
 木材 ⇒ シリア、レバノン(交易で入手)

分かり易い地図を二枚貼っておくのでじっくり眺められたし。

画像

―「古代エジプト 都市文明の誕生」/古谷野 晃/古今書院 より

画像

―「地図で読む世界の歴史 古代エジプト」/ビル・マンリー/河井出書房 より


前エントリ「Part2 貿易に弱い」でも使ったが、エジプトの輸入品の大半は、国内で採れない貴重な鉱物や宝石だ。鉄も銅も、金も銀も、象牙やラピスラズリのような装飾に使う宝石も、エジプト国内ではほとんど採れなかった。通貨も存在せず物々交換で頑張ってるのに良くやったもんだよエジプト人。


逆に、国内で十分手に入ったものは、以下のような品々。

 ・ピラミッド、神殿の建築に使う良質な石材
 ・紙の原料となるパピルス
 ・ミイラ作りや医薬品として使う天然ソーダ

エジプトといったら真っ先に思い浮かぶであろう「巨大な石材建築」「パピルス文書」「ミイラ」原料が、モロにここに被ってくる。つまりあれだ。エジプトでは石は余ってるからピラミッドやミイラは死ぬほど作れるけど、金属武器の大量生産には向かなかったってことですよ。(「Part1 戦争に弱い」という話とも繋がる)


金については、植民地支配していたヌビアから幾らでもひっぱってこられたから、支配力があるうちは潤沢に手に入った。しかしヌビアが勢力を得てエジプトから離反するようになってくると、もはや金は手に入らない。また銅についても、紅海を渡ってシナイ半島に遠征に行かなくては手に入らなかったので、遠征隊を送るだけの余裕がなくなってくるラメセス6世の時代あたりには、鉱山が放棄され、良質な銅が入ってこなくなる。(結果として、過去の王墓を暴いて副葬品をリサイクルすることが、王命によって行われるようになる)

エジプトが利用できた資源の量は、その時代ごとの支配力の及ぶ範囲と密接に関係している、というわけだ。


エジプト文明が自国範囲で持っていた、他国にない資源とは、古代世界で言う豊かさだった。「最低限、人が生きていくためのもの」、自給自足のための、水と豊かな耕作地。農耕技術の発達や交易路の確立により、元々もっていた自然環境の豊かさが決定的な優位を生み出さない時代になったから、エジプト文明は勢いを失ってしまった。と、いう見方も出来るだろう。


****

らすと。
Part4 「まとまりがない」へ続く。

この記事へのトラックバック