「黒いアテナ」(一時期話題になったけど多分読むのは時間の無駄…)
タイトルで既に感想の要旨が分かってしまう。(笑)
「黒いアテナ 古典古代のアフロ・アジア的ルーツ」、これは古本屋でも買わなくて正解でした。ていうか図書館で借りても上巻の半分まででイッパイイッパイですよ。いくらエジプトネタでもこれはキツい…。
超要約するとこういうこと。
(1)ヨーロッパ(アメリカも入る)の文明とは、
ギリシャ(ローマは入れない…?)がルーツである。
(2)しかしギリシャ文明は
エジプトがギリシャを支配した時代に与えたものである。
(3)そしてエジプト文明は黒人の作ったものである。
(4)よってヨーロッパの文明は元々は黒人の文明である。
ちなみにタイトルは、おそらく「ギリシャ神話のアテナ女神も元々はエジプトの女神(なんとネイト?!)であって、黒人の女神だったはずだ」というところから来ています。文明のルーツは古代エジプトだそうですよ…。なんじゃそら。
オカルトなんかで良く見かける超三段論法(※)とも異なって、(1)~(4)のどの間をとってみても飛躍しているし、どれも正しくないという無茶苦茶ぶり。ギリシャ人は「黒く見える」から始まり、己が過去にヨーロッパに与えた偉大なる栄光の歴史によってヨーロッパは栄えているのにギリシャは現在では「貧しい国である」など、しょっぱなから差別・思い込み発言がガンガン飛び交う非常に辛い本になっています。まあ確かにギリシャ人は黒いけどね。それは日焼けっちゅーんだよ。あの日差しの強い海辺の地中海で暮らしてたら、そりゃ日焼けもするよ…。
ギリシャの文明はエジプトから来たはずだ、かつてギリシャはエジプトが植民地支配をしていたはずだ、などとエジプトに絡んでくるので、さぞギリシャとエジプトの関係に詳しく言及しているのかと思ったら…そうでもない。大半は根拠も書いていない妄想で、「影響した」ことと「起源となる」ことを明確に分けていません。よって何か関係があったら全て「起源」とするのがこの本です。
エジプト語からの借用語がある周辺地域の言語はすべてエジプト起源です。逆にエジプト語にギリシャ語からの借用があることは無視です。「mottainai」や「TUNAMI」を世界中に広めて数千年経てば、この著者が「日本は世界中の文明に影響を与えた」ことにしてくれます。あるいはマンガやアニメが普及している地域は、それらの物資を証拠に「思想的に支配された植民地であった、日本は世界中に広がる大帝国を持っていた」くらい誇張してくれるかもしれません。何てクレイジー。
なんでこの人はこんなに飛躍しまくりなんだ…。
エジプト文明が最盛期にあった時代なら周辺諸国に影響を与えないはずがないですし、人の行き来もあるのだから似ている点が出てくるのは当然でしょっていう。書いてる途中で気がつかなかったのか。
話はぐだぐだ長いんですが、「根拠」の部分が全て適当なので、要約したら30ページくらいに収まりそう(笑)
で、この本の何が問題なのか、については、上巻のP42を読めばまとめてくれています。
実はこの本はここで終了してます。
なぜならば、ここに書かれた、専門家が否定している四つの問題を「応」とすることで、この本の理屈は成り立っているから。最初に書いた、
(1)ヨーロッパ(アメリカも入る)の文明とは、
ギリシャ(ローマは入れない…?)がルーツである。
(2)しかしギリシャ文明は
エジプトがギリシャを支配した時代に与えたものである。
(3)そしてエジプト文明は黒人の作ったものである。
(4)よってヨーロッパの文明は元々は黒人の文明である。
これと同じこと。
(1)から(4)まで全て間違っているとすれば、この本の存在する価値は何もないわけですから…判りますよね。
お読み物としても楽しい部類ではないので、とりあえず時間の無駄だけど、人に何も与えないであろう文章をこう長々と書ける才能を見てみたいなら、手にとってみるといいかもしれません。私の感想はそんなもんです。
これが「聖書以来、もっとも議論された本」だっていうのも、宣伝文句としては皮肉にしか思えない。
そりゃ、これだけ分厚くて長ったらしいのにほぼ全頁ツッコミどころ満載なんだから、いちいち律儀にツッコんでいったら大量の反論書が出来るに決まってるじゃないですか。
おかしいところはきちんとおかしいと指摘しとかんと後で「専門家に無視された」とか言い出しますからね。これ読み込んで反論するのは専門家も大変だったと思います。
この著者がやりたかったことは、わからなくもない。
白人優位の世界という前提に一石を投じたい。という話でしょう。
でも、そもそも世界は白と黒で出来ているわけではなく、文明のルーツをギリシャ・ローマに置くという考え自体が時代遅れ。時代遅れなものを、さも世界中の人が信じているかのようにヒステリックに反論されても困る。それは自分が人を白か黒かで判断し、文明には優劣があるという偏見を持っているという逆告白だし。何より、根拠がデタラメなんじゃ、結論が正しい間違ってる以前の問題ですよ★
世界がどうやって成り立っているのかとか、文明の起源がどうだったかってこの本を読むくらいなら、ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」をお勧めします。そっちのほうが遥かに論理的で、根拠があると感じられるでしょう。
-----------
※ 超三段論法
私が勝手にそのように名づけているもの。明らかに誤りで根拠も薄い論法を指す。
この論法を使えば、世の中のどんなことも説明可能である代わりに、どんな誤りも正解と出来てしまう恐ろしいワザである。
<例>
(1)キクラゲはキノコである。
(2)キクラゲにはクラゲという名前がついている。
(3)ゆえにキノコはクラゲの仲間である。
(1)海にはクラゲという生き物がいる。
(2)キノコの仲間にもキクラゲというものがいる。
(3)ゆえにキノコはかつて海に住んでいたはずである。
この論法の特徴は、(1)と(2)は正しいのだが、何故か結論に至る部分で常人には理解しがたい飛躍をかまし、結論だけが大きく誤っているという点である。証明の手法や提示する証拠が、その結論を出すに不適切ということだ。
*---**---**---**---**---**---**---**---**---**---*
これで終わるとこのエントリ自体がつまらなくなってしまうので、折角なのでギリシャ神話とエジプト神話の関連に述べた部分について少しだけ。
ギリシャ神話とエジプト神話のどっちがルーツなのかとか、どこらへんが影響しあっているのかについてはマトモに研究している方がいて、面白い指摘も数々あります。
が、この本の著者は、そうした、既にある研究は一切無視。何処から持ってきたんだかよく判らない独自説で突っ走ります。
いちいち細かく挙げていくとつらいので、小見出しだけ並べてみると…
・ネイト、水をつかさどる神
・ネイトとセトの戦い、アテナとポセイドンの戦い
・ポセイドン/セト
・デルポスとアヌビス
・メライナ/ネフティス
・アリオンとペガソス
・ネイト/アテナとネフティス/エリニュス
・アヌキス/オンカ
ある意味 面白そうですか?(笑)
この他、アヌビス=ヘルメス説やアポロン=ホルス説なども登場します。根拠も述べずにいきなり「昇る太陽のシンボルとしてのアポロは、エジプトのアポロに当たるホルスとケプリと同じように青年であり」(上/P181)から始まりますが! ケプリはともかく、ホルスは太陽のシンボルじゃな… あ、もしかしてホルベヘデティの太陽円盤のこと… か?

この本にとって重要なはずのネイト=アテナの部分も超適当です。少なくとも私にはそう感じられます。
ネイトはエジプト神話では弓を手に赤冠をかぶる戦いの女神。その女神を唐突に農耕、治水の女神としての役割が本質であると論じ始める著者。
(1)ネイトの本質は多産な牝牛アヘトとしての側面を持つ
(2)これはすなわちメヘト・ウェレト(牛の姿をとる女神)を意味し、大洪水、沼地、原初の水(ヌンのことだろう)と関連している
(3)ピラミッド・テキストによればネイトは豊穣の神の側面も持ち、河岸と島に関連している
(4)通路をひらく者と呼ばれるが、これは水路を開くことを意味するに違いない
(5)よって彼女は湿地を切り開き畑を整地する女神である
? ? ? ?
な…何を言っているか判らないと思うが(ry
えっと、本当にそう書いてあるのだからしょうがないのです。とりあえず突っ込んでおくと、
(1)アヘトは増水の季節を意味する言葉だし女神として神格化もされてるけど、それが何でネイトに関係しているの? てか何で牛?
(2)メヘト・ウェレトは確かに牛の女神だし沼地や原初の水とも関係しているけど、それが何故ネイトになるの? ハトホルと間違えてないか? メヘト・ウェレトはメトイエルと混同してないか?
(3)どのピラミッド・テキスト…?
(4)通路をひらくの通路は水路を意味しない。灌漑によって作られた単語は別にあり、水に関係した決定詞がついている。ウプウアウト(ウェプアウト)の名前にある「通路」と、ここで言及している単語Wpは同じなんだから、意味も同じだろそりゃ
ここでイシスに言及するならまだ少しわかる気もしますがイシス関係なし。かすりもしません。
イシスは白人だから触れたくないのか?
そもそもなぜ著者がネイトにこだわるのかもわからない。黒人の姿をとる女神だったらネイトじゃなくてサティスじゃないのか。 サティスの肌は常に黒く描かれます。おまけにサティスならムリにこじつけなくてもナイルの氾濫神話や治水に関係しています。著者は神様の名前を間違えてんじゃないかと本気で心配してしまう。
と、いうわけで結論はともかくそこに至る根拠が理解できません。全編この調子です。
その後、セト=ポセイドン 説が来て、アテナとポセイドンがアテネの町をかけて戦ったようにネイトとセトが戦ったことになったりするから更にわけが判らなくなってきます。ギリシャ人自身はセトをテュポンと呼んだのに(笑) エジプトには海の神様はいなくて、例外として「ヤム」(バアルの兄弟のあのヤムのこと)という言葉を借りて海を呼んだくらいのに。
エジプト神話に関する自説だったらグラハム・ハンコックのほうがよく調べていたし、根拠も明確に書いていたように思います。(まぁだから、ツッコみも具体的に出来たという話。言ってることは正しくはないのだけれど)
最後に、エジプト人が黒人だったかどうかについてだけ、過去に作ったコラムをリンクしておきます。
古代エジプト人は、「何人」か?
エジプト人が黒人か白人かを論ずることはもちろん、人種に「白」と「黒」を規定しようとすること自体がナンセンスとだと私は思っています。てか、北の方の人はそりゃ白いし、南の端っこの人はそりゃ黒いけど、エジプト人は中間だから色々まじってるよ。俺らアジア人の血だって混じってるかもしれないよ。肌の色はイコール人種ではないよ。文明の起源なんて一箇所とは限らないし、相互作用するもんだよ。…そのくらい、本書く前に気づこうよ。
とにかく、この本は、自分の言いたいことをそれっほく見せかけるために本当に見せかけだけの証拠(ガラクタともいう)を山ほど積み上げただけの本だったという感想です…。ほんと面白くない。
「黒いアテナ 古典古代のアフロ・アジア的ルーツ」、これは古本屋でも買わなくて正解でした。ていうか図書館で借りても上巻の半分まででイッパイイッパイですよ。いくらエジプトネタでもこれはキツい…。
超要約するとこういうこと。
(1)ヨーロッパ(アメリカも入る)の文明とは、
ギリシャ(ローマは入れない…?)がルーツである。
(2)しかしギリシャ文明は
エジプトがギリシャを支配した時代に与えたものである。
(3)そしてエジプト文明は黒人の作ったものである。
(4)よってヨーロッパの文明は元々は黒人の文明である。
ちなみにタイトルは、おそらく「ギリシャ神話のアテナ女神も元々はエジプトの女神(なんとネイト?!)であって、黒人の女神だったはずだ」というところから来ています。文明のルーツは古代エジプトだそうですよ…。なんじゃそら。
オカルトなんかで良く見かける超三段論法(※)とも異なって、(1)~(4)のどの間をとってみても飛躍しているし、どれも正しくないという無茶苦茶ぶり。ギリシャ人は「黒く見える」から始まり、己が過去にヨーロッパに与えた偉大なる栄光の歴史によってヨーロッパは栄えているのにギリシャは現在では「貧しい国である」など、しょっぱなから差別・思い込み発言がガンガン飛び交う非常に辛い本になっています。まあ確かにギリシャ人は黒いけどね。それは日焼けっちゅーんだよ。あの日差しの強い海辺の地中海で暮らしてたら、そりゃ日焼けもするよ…。
ギリシャの文明はエジプトから来たはずだ、かつてギリシャはエジプトが植民地支配をしていたはずだ、などとエジプトに絡んでくるので、さぞギリシャとエジプトの関係に詳しく言及しているのかと思ったら…そうでもない。大半は根拠も書いていない妄想で、「影響した」ことと「起源となる」ことを明確に分けていません。よって何か関係があったら全て「起源」とするのがこの本です。
エジプト語からの借用語がある周辺地域の言語はすべてエジプト起源です。逆にエジプト語にギリシャ語からの借用があることは無視です。「mottainai」や「TUNAMI」を世界中に広めて数千年経てば、この著者が「日本は世界中の文明に影響を与えた」ことにしてくれます。あるいはマンガやアニメが普及している地域は、それらの物資を証拠に「思想的に支配された植民地であった、日本は世界中に広がる大帝国を持っていた」くらい誇張してくれるかもしれません。何てクレイジー。
なんでこの人はこんなに飛躍しまくりなんだ…。
エジプト文明が最盛期にあった時代なら周辺諸国に影響を与えないはずがないですし、人の行き来もあるのだから似ている点が出てくるのは当然でしょっていう。書いてる途中で気がつかなかったのか。
話はぐだぐだ長いんですが、「根拠」の部分が全て適当なので、要約したら30ページくらいに収まりそう(笑)
で、この本の何が問題なのか、については、上巻のP42を読めばまとめてくれています。
専門家のなかでもっとも批判的、いや、攻撃的なのは、アメリカ合衆国のウェルズレイ大学のメアリ・レフコビッツで、彼女は同じ大学の同僚の専門家とともに、『黒いアテナ再訪』と題した、各分野の「否」の専門家二十人の論文を集めた五二二頁の大部の本を偏してつくった。この大部の本の裏表紙に、何がこの本のなかで問題にされているのかが判る設問が列挙されている。『黒いアテナ』が提起している、そして、専門家が「否」と答を出している問題であるのと、なぜかくも大論争になったかが判ると考えるので、ここで引用しておきたい。設問は次の四つだ。
「西洋文明は古代エジプト、フェニキア人によってつくられたのか。」
「古代エジプト人は黒人と都合よく呼ばれていいのか。」
「古代ギリシア人はエジプト人、フェニキア人から宗教、科学、哲学を借り受けたのか。」
「学者たちは人種差別と反ユダヤ主義によって西洋文明の根源を無視して来たのか。」
実はこの本はここで終了してます。
なぜならば、ここに書かれた、専門家が否定している四つの問題を「応」とすることで、この本の理屈は成り立っているから。最初に書いた、
(1)ヨーロッパ(アメリカも入る)の文明とは、
ギリシャ(ローマは入れない…?)がルーツである。
(2)しかしギリシャ文明は
エジプトがギリシャを支配した時代に与えたものである。
(3)そしてエジプト文明は黒人の作ったものである。
(4)よってヨーロッパの文明は元々は黒人の文明である。
これと同じこと。
(1)から(4)まで全て間違っているとすれば、この本の存在する価値は何もないわけですから…判りますよね。
お読み物としても楽しい部類ではないので、とりあえず時間の無駄だけど、人に何も与えないであろう文章をこう長々と書ける才能を見てみたいなら、手にとってみるといいかもしれません。私の感想はそんなもんです。
これが「聖書以来、もっとも議論された本」だっていうのも、宣伝文句としては皮肉にしか思えない。
そりゃ、これだけ分厚くて長ったらしいのにほぼ全頁ツッコミどころ満載なんだから、いちいち律儀にツッコんでいったら大量の反論書が出来るに決まってるじゃないですか。
おかしいところはきちんとおかしいと指摘しとかんと後で「専門家に無視された」とか言い出しますからね。これ読み込んで反論するのは専門家も大変だったと思います。
この著者がやりたかったことは、わからなくもない。
白人優位の世界という前提に一石を投じたい。という話でしょう。
でも、そもそも世界は白と黒で出来ているわけではなく、文明のルーツをギリシャ・ローマに置くという考え自体が時代遅れ。時代遅れなものを、さも世界中の人が信じているかのようにヒステリックに反論されても困る。それは自分が人を白か黒かで判断し、文明には優劣があるという偏見を持っているという逆告白だし。何より、根拠がデタラメなんじゃ、結論が正しい間違ってる以前の問題ですよ★
世界がどうやって成り立っているのかとか、文明の起源がどうだったかってこの本を読むくらいなら、ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」をお勧めします。そっちのほうが遥かに論理的で、根拠があると感じられるでしょう。
-----------
※ 超三段論法
私が勝手にそのように名づけているもの。明らかに誤りで根拠も薄い論法を指す。
この論法を使えば、世の中のどんなことも説明可能である代わりに、どんな誤りも正解と出来てしまう恐ろしいワザである。
<例>
(1)キクラゲはキノコである。
(2)キクラゲにはクラゲという名前がついている。
(3)ゆえにキノコはクラゲの仲間である。
(1)海にはクラゲという生き物がいる。
(2)キノコの仲間にもキクラゲというものがいる。
(3)ゆえにキノコはかつて海に住んでいたはずである。
この論法の特徴は、(1)と(2)は正しいのだが、何故か結論に至る部分で常人には理解しがたい飛躍をかまし、結論だけが大きく誤っているという点である。証明の手法や提示する証拠が、その結論を出すに不適切ということだ。
*---**---**---**---**---**---**---**---**---**---*
これで終わるとこのエントリ自体がつまらなくなってしまうので、折角なのでギリシャ神話とエジプト神話の関連に述べた部分について少しだけ。
ギリシャ神話とエジプト神話のどっちがルーツなのかとか、どこらへんが影響しあっているのかについてはマトモに研究している方がいて、面白い指摘も数々あります。
が、この本の著者は、そうした、既にある研究は一切無視。何処から持ってきたんだかよく判らない独自説で突っ走ります。
いちいち細かく挙げていくとつらいので、小見出しだけ並べてみると…
・ネイト、水をつかさどる神
・ネイトとセトの戦い、アテナとポセイドンの戦い
・ポセイドン/セト
・デルポスとアヌビス
・メライナ/ネフティス
・アリオンとペガソス
・ネイト/アテナとネフティス/エリニュス
・アヌキス/オンカ
ある意味 面白そうですか?(笑)
この他、アヌビス=ヘルメス説やアポロン=ホルス説なども登場します。根拠も述べずにいきなり「昇る太陽のシンボルとしてのアポロは、エジプトのアポロに当たるホルスとケプリと同じように青年であり」(上/P181)から始まりますが! ケプリはともかく、ホルスは太陽のシンボルじゃな… あ、もしかしてホルベヘデティの太陽円盤のこと… か?

この本にとって重要なはずのネイト=アテナの部分も超適当です。少なくとも私にはそう感じられます。
ネイトはエジプト神話では弓を手に赤冠をかぶる戦いの女神。その女神を唐突に農耕、治水の女神としての役割が本質であると論じ始める著者。
(1)ネイトの本質は多産な牝牛アヘトとしての側面を持つ
(2)これはすなわちメヘト・ウェレト(牛の姿をとる女神)を意味し、大洪水、沼地、原初の水(ヌンのことだろう)と関連している
(3)ピラミッド・テキストによればネイトは豊穣の神の側面も持ち、河岸と島に関連している
(4)通路をひらく者と呼ばれるが、これは水路を開くことを意味するに違いない
(5)よって彼女は湿地を切り開き畑を整地する女神である
? ? ? ?
な…何を言っているか判らないと思うが(ry
えっと、本当にそう書いてあるのだからしょうがないのです。とりあえず突っ込んでおくと、
(1)アヘトは増水の季節を意味する言葉だし女神として神格化もされてるけど、それが何でネイトに関係しているの? てか何で牛?
(2)メヘト・ウェレトは確かに牛の女神だし沼地や原初の水とも関係しているけど、それが何故ネイトになるの? ハトホルと間違えてないか? メヘト・ウェレトはメトイエルと混同してないか?
(3)どのピラミッド・テキスト…?
(4)通路をひらくの通路は水路を意味しない。灌漑によって作られた単語は別にあり、水に関係した決定詞がついている。ウプウアウト(ウェプアウト)の名前にある「通路」と、ここで言及している単語Wpは同じなんだから、意味も同じだろそりゃ
ここでイシスに言及するならまだ少しわかる気もしますがイシス関係なし。かすりもしません。
イシスは白人だから触れたくないのか?
そもそもなぜ著者がネイトにこだわるのかもわからない。黒人の姿をとる女神だったらネイトじゃなくてサティスじゃないのか。 サティスの肌は常に黒く描かれます。おまけにサティスならムリにこじつけなくてもナイルの氾濫神話や治水に関係しています。著者は神様の名前を間違えてんじゃないかと本気で心配してしまう。
と、いうわけで結論はともかくそこに至る根拠が理解できません。全編この調子です。
その後、セト=ポセイドン 説が来て、アテナとポセイドンがアテネの町をかけて戦ったようにネイトとセトが戦ったことになったりするから更にわけが判らなくなってきます。ギリシャ人自身はセトをテュポンと呼んだのに(笑) エジプトには海の神様はいなくて、例外として「ヤム」(バアルの兄弟のあのヤムのこと)という言葉を借りて海を呼んだくらいのに。
エジプト神話に関する自説だったらグラハム・ハンコックのほうがよく調べていたし、根拠も明確に書いていたように思います。(まぁだから、ツッコみも具体的に出来たという話。言ってることは正しくはないのだけれど)
最後に、エジプト人が黒人だったかどうかについてだけ、過去に作ったコラムをリンクしておきます。
古代エジプト人は、「何人」か?
エジプト人が黒人か白人かを論ずることはもちろん、人種に「白」と「黒」を規定しようとすること自体がナンセンスとだと私は思っています。てか、北の方の人はそりゃ白いし、南の端っこの人はそりゃ黒いけど、エジプト人は中間だから色々まじってるよ。俺らアジア人の血だって混じってるかもしれないよ。肌の色はイコール人種ではないよ。文明の起源なんて一箇所とは限らないし、相互作用するもんだよ。…そのくらい、本書く前に気づこうよ。
とにかく、この本は、自分の言いたいことをそれっほく見せかけるために本当に見せかけだけの証拠(ガラクタともいう)を山ほど積み上げただけの本だったという感想です…。ほんと面白くない。