ヴァイキング時代の武器は粗悪品が多かったという話

ヴァイキング好き、武器好き双方から全力でツッコまれそうなネタですが果敢に突っ込んでみる。フォローミー!

字幕としてはイマイチだった「ザ・ヴァイキング」ですが、内容としては面白いことを言っていた。
で、テレビで言ってることを鵜呑みにするほど可愛げのない人なので、その番組の中で言われていたことを少し追加確認してみました。


●ヴァイキングは手先が器用だが武器は粗悪品。

番組の中でヴァイキングの使っていた武器防具についての検証が行われていましたが、その中で「武器は個々のクオリティにばらつきがあり、ほとんどは粗悪品」といわれていました。
どこかで読んだ気がしたので本棚を漁り…
「オスプレイ・メンアット・アームズ」シリーズの「サクソン/ヴァイキング/ノルマン ~ブリテンへの来寇者たち」に似たような記述を発見。(「寇」は元寇と同じ字ね)

サクソンの剣は当初はローマのスパタに酷似したもので、約75cmの幅広の両刃をもち、刃はまっすぐで切っ先はやや丸められていた。柄は飾り気がなく、おおむね鍔を欠いていた。職人の鋳造手法によって品質に大きな開きがあった時期に一気に作られたこのような武器の刃は、たいがいの場合 鍛接によって鍛えられた場合によい結果を得られた。


この時代の最高の剣身はフランク人によって作られており、サクソン人同様ヴァイキングたちも自らが使用する剣身をラインラントから輸入していた。もっともすべてが鍛接ではなく、その多くは地方の単純な製品であった。あるアイスランドのサガでは、戦士ステインホルが柄に美しい銀がはめ込まれた剣を持っており、戦いにおいて「彼はみごとなつくりの剣が鎧に当たっても貫かないことに気づき、頻繁に戦いを中断し、刃を足でまっすぐにしなければならなかった」と記されている。こうした代物は悪夢であり、輸入品の剣がもてはやされたことも驚くにはあたらない。


ヴァイキング時代の鍛冶の技術は、技術差が大きかったようです。
柄の部分に装飾を入れたり、刃にルーネが刻まれていたりするのは、よく壊れる武器に対する気休め的なおまじないの意味もあったんじゃないかという意見を昔どこかで見たんですが… まあ、それもあったのかもしれない、本当に。

鍛接によって作られたものの品質はよく、それ以外の(おそらくもっと単純に、金属棒を叩いて伸ばすような)方法で作られた剣はすぐに曲がってしまう、という話は、シグルズが養い親の作った剣を次々と叩き折ってしまい、最後に自らの手で父親の剣を再生するという、ニーベルンゲン伝説の仲のエピソードを思い出させるところですね。

また、

最も高価ではあるがさほど一般的ではない武器、それが剣である。その価値の高さから父から子へ譲られたり、褒章として偉大な戦士や王に捧げられたりしたので、剣が墳墓から見つかることは稀である。剣は古ければ、あるいは過去に名うての戦士のものであったならば、より高い価値を持つとされた。したがって初期の王はこうした小さな剣のコレクションを保有し、武勇を上げた戦士にそれを与え、戦士が死んで剣が王のもとへ戻るとその価値はより高くなったのである。


サガの中で、親から子へ剣が受け継がれたり、殺した相手の武器を自分のものにしたりしているのも、おそらく 折れない剣が貴重品だったから。
ある一定以上のクオリティの武器は、もったいないから墓に埋めてる余裕はなかったんじゃないかと。



●実は木の盾ではハンド・アックスの攻撃は防げない。

これはねー…
「ああ、まあそうだよね」っていうか…

番組の中で耐久実験をやって、木目に沿って殴られると板が割れるから意味がない、偶然攻撃が木目に沿って当たってしまったら南無。みたいなことを言われていたのですが、確かに考えてみればそうですね…。

番組の中では「木目の向きを隠すために盾に模様を描いた」とされていましたが、持ち手を木目に対して平行につけちゃったらバレる気がする。
相手の攻撃に対して、木目が垂直に当たるように持てばいいんでしょうが。盾は、へりにつけた金属の留め金を使って相手の武器を受け止めるのが一番効果的な使い方だと思う。

攻撃力はアックスが特に高く、斧>弓>槍>剣 というイメージです。
弓は熟練していないと使えないかわりに、矢を弓なりに飛ばして頭上から攻撃すると非常に貫通力が高かったそうです。(FFTでもそーだったな…) もちろん至近距離だと使えないですが。


●鎧を着ても泳げる

ヴァイキングの着ていたメイルは基本的にチェインメイル。
「ベーオウルフ」で主人公が鎧着たまま遠泳してますが、プレートメイルを想像するから沈みそうに思えるだけで、意外と泳げたかもしれないそうな。あじですか。
金属の輪を鎖状に繋いだものなので、意外と軽いみたいです。軽いといっても現代人がつけて泳いだら確実に溺死しそうですが。軽くて脆くて、番組の耐久テストでは散々な結果になっていましたが、これも剣同様に「気休め」「ちょっとケガを軽くするかな」程度のものということか。

メール・シャツは7世紀末のアングロ・サクソンの法律で最初に言及されているが、その価値ゆえに本書で扱っている時代の終わりまでその数は不足し続けた。メール・シャツはまたきめ細かいメッシュで、肌に密着し綿密に織られたと思われる。<中略>実際にはより脆いものだったと思われ、戦いのたびに損傷し、修理を必要としたということがたびたび描かれている。


自分がヴァイキングだったら、身を守るものを真っ先に開発しようと思いますが、こいつらそういうものもロクに開発せずによく戦いに出たな。裸でもノリノリで戦ってしまいそうだから困る。



ところで、自分も長いこと間違って使っていましたが、ヴァイキング=ゲルマン人 ではないです。ゲルマン人の中で、9-11世紀ごろに組織だって略奪行為を行った北方の人々がヴァイキング。同じゲルマン人であるアングロ・サクソン人はヴァイキング時代の始まるより前にブリテン島に定住していて、ヴァイキングに略奪される側でした。

ヴァイキングの略奪対象には、ゴドランド(大航海だとヴィスビーのある島ね)も入っていたようで、そこ略奪しちゃったら東方交易の拠点がなくなっちゃう、いいの? という気がしなくもない。

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引用部分は以下の本から。

このシリーズはイラストなどが判りやすいのですが、何かもう本屋さんには売ってない模様。
まだ買ってない部分あるのに!




このシリーズ、新紀元が出してるので、地雷が混じってる可能性がなくもない。

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