アマルナより愛を込めて:ネフェルティティは二度微笑む

世界一有名な美女といえば誰を挙げるだろう。
絵画の世界ならモナリザ、歴史人物といえばクレオパトラ、彫像といえばネフェルティティ…

と、いうわけで、ネフェルティティのお陰で年間200万ドル儲けているのがドイツのベルリン博物館。
この美女に「実はニセモノ?!」疑惑があったことは、あまり知られていないかもしれない。ていうか私も知らなかった。
どういうことかというと、第二次世界大戦中、空襲を避けて地下に隠された美術品の中にネフェルティティの胸像も含まれていて、しかも一旦そこに隠された後、ヒトラーに命令されたごく少数の兵士が、一部をコッソリ贋作と摩り替えたというのだ。
小説のネタとしては面白いと思うが、事実だとすると少々出来すぎな話である。

ただしヒトラーがネフェルティティを気に入っていたのは事実のようで、かつてエジプト政府がネフェルティティ像の返還を求めたとき、一度はいいよと承諾したものの、実際に像を見て気が変わり、「この像は永遠にわが国に留める」と宣言したという話がある。お陰で、ネフェルティティ像は今もドイツにある。

ヒトラーが絡むと何でも陰謀めいた話になってしまうが、実際、像の取替えというのはあったのだろうか?



…まあ、あれだ。
顔料とか調べれば判ると思うんだけどね。

ネフェルティティ像は、石を削って顔の芯を作った上から漆喰塗って顔料で色をつけてあるものだから、色に使われている材質がアマルナ時代のものと一致すれば本物と判定出来るんじゃないだろうか。と、いうか、もう既に検証はされているかもしれない。
「モナ・リザ」は二枚あり、非常に精巧で、どちらが本物か区別がつかずモメた(今もまだ論争している)が、ネフェルティティ像は二つあるわけではないし、エジプト彫刻の贋作は、手順が確立されていないという意味で、絵画の贋作を作るより難しいだろう。



で、このネフェルティティ像、有名なのは首から上だけだが実は胴体部分もある。
なぜ胴体が表に出てこないかというと、見事に粉砕されていたからだ(笑)

そもそもネフェルティティの像は、王宮や墓からではなく、エル・アマルナの都の、彫刻師の自宅から発見された。胴体部分はその同じ彫刻師の家にあり、着色もされておらず、未完成で、石のかけらになって埋まっていた。胴体と首を別に仕上げて後からジョイントする予定だったんだけど、完成前に都が放棄されたか、何らかの理由で彫刻師が仕事を取りやめてしまったのだと思われる。

胴体も一緒に展示しないのかというと…
どうやら、展示しようとした形跡はある。が、…

 バランスが悪くて、軽くホラーだったわけだな。

イメージ検索の中に復元時の写真がちらほらと


彼女は首だけのほうが美しかった、というわけです。
あれだサモトラケのニケは首がないほうが荘厳な感じがする、みたいな。うんまぁエジプトの彫刻ってナイスバディいないしね。貧乳スレンダー固定。何の話だ。


そんなわけで、ここのところザヒ・ハワス博士がネフェルティティのミイラ探しに躍起になっているのも、像をドイツに取られた恨みつらみとブームに乗った仕掛けの一部かもしれないと思えてきた今日この頃。
有名な美術には、偽者論争やスキャンダルはつきもの。それすらも宣伝文句の一部でしかない。
ヒトラーをも魅了したその微笑は、古代においても、現代においても、寸分たがわぬ魅力を持って発せられていることだろう。

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