丑年+古代エジプト というわけで古代エジプトの牛の話。
エジプトネタで時事ネタを久しぶりに。
明日全く使えない豆知識、だがそこがいい。そんな貴方に送る古代エジプトのすべらない牛の話。
古代エジプトで、牛は、王朝時代を通して重要な家畜だった。
古代エジプトで飼育されていた牛の種類は多く、古くは野生種に近い巨大な角を持つもの。そのうちツノが小型化するが、ぶち、黒毛、茶毛など、様々な種類の牛が飼育されていたという。
古代エジプト人は、牛肉を食することは殆どなかったようだ。
乳を食用とするほか、神々への供物、牛皮の利用、また何より農作業の補助をする動物として重宝された。スキをつけて畑を耕したり、脱穀の際の動力源としたことが、墓の壁画や墓から見つかる人形によって知られている。
と、いうわけで古代のエジプト人にとって、牛は生活のパートナーだったわけだが、同時に、神の化身として信仰の対象になる神聖な存在でもあった。おびただしいミイラや、神殿に刻まれた聖なる牛たちの記録、またヘロドトスなど異国人の記述からも、古代エジプトで牛がいかに特別視されていたかを知ることが出来る。
しかし雄牛と雌牛は、全く同じように信仰されていたわけではない。
以下に基本的な信仰ディテールと例として実際に信仰されていた神様を何柱か挙げてみる。時代や地域によって細部は異なっていただろうし例外もあったと思うが、今回は考慮していない。あくまで代表例だ。
■雄牛の場合
基本的に、気高さや雄雄しさの象徴。
太陽信仰と結び付けられることも多いが、冥界神プタハの町ではプタハの化身または使いとされた雄牛もいた。
王権との結びつきとしては、王の正装の一つに牛のしっぽを模した帯というものがある。
実際に信仰されていた牛の神として、代表例は以下のような方々。
いずれも、実際の牛をこれらの神々になぞらえて崇め、死ぬと一定の手順で埋葬していた。また、太陽神アメン・ラーや冥界神オシリス、プタハなど他の有名どころの神々と同一視されているのも特徴的だ。
アピス
ブキス
ムネヴィス
■雌牛の場合
基本的に、母性や愛の象徴。
ほぼ例外なく太陽信仰と結びつきますが、死者(=胎内で新たな誕生を待つ子供)に乳を与えるため冥界に居る姿で描かれることもある。
王の母としてイシス女神と同一視されることもあり、王権に関わる祭儀への登場頻度は高い。
牛の女神様で、なんといっても第一はこのお方。
ハトホル
太陽神ラーの妻または娘として、ホルスの妻または恋人として知られる女神様。角の間に日輪を掲げる。
ハトホル様の印象が強いため、他の牛女神様たちは、のきなみハトホルと同一視されている。
牛は母性の象徴であることから、新王国時代ごろにはイシス女神がハトホルの角をつけるようにもなる。
その他、牛と関連づけられる女神たちには以下のような方々がいる。
ヘザト
バト
メトイエル
と、まあ、このように牛は、エジプト神話とも関連の深い動物である。
ちなみに雄牛より雌牛のほうが地位が高かったという説もあり、ヘロドトスは「歴史」第二巻で以下のように述べている。
現代のエジプトにおいては、牛は聖なる信仰の対象ではないが、農村部にいけば古代と変わらず人々と生活を共にし、畑で飼われている牛の姿を見ることが出来ることだろう。
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*関連エントリ「牛飼育の起源と牛神様の起源が被っているかもしれない妄想」
人類最古の飼育牛は、エジプトのナイル上流から見つかっているそうです。
明日全く使えない豆知識、だがそこがいい。そんな貴方に送る古代エジプトのすべらない牛の話。
古代エジプトで、牛は、王朝時代を通して重要な家畜だった。
古代エジプトで飼育されていた牛の種類は多く、古くは野生種に近い巨大な角を持つもの。そのうちツノが小型化するが、ぶち、黒毛、茶毛など、様々な種類の牛が飼育されていたという。
古代エジプト人は、牛肉を食することは殆どなかったようだ。
乳を食用とするほか、神々への供物、牛皮の利用、また何より農作業の補助をする動物として重宝された。スキをつけて畑を耕したり、脱穀の際の動力源としたことが、墓の壁画や墓から見つかる人形によって知られている。
と、いうわけで古代のエジプト人にとって、牛は生活のパートナーだったわけだが、同時に、神の化身として信仰の対象になる神聖な存在でもあった。おびただしいミイラや、神殿に刻まれた聖なる牛たちの記録、またヘロドトスなど異国人の記述からも、古代エジプトで牛がいかに特別視されていたかを知ることが出来る。
しかし雄牛と雌牛は、全く同じように信仰されていたわけではない。
以下に基本的な信仰ディテールと例として実際に信仰されていた神様を何柱か挙げてみる。時代や地域によって細部は異なっていただろうし例外もあったと思うが、今回は考慮していない。あくまで代表例だ。
■雄牛の場合
基本的に、気高さや雄雄しさの象徴。
太陽信仰と結び付けられることも多いが、冥界神プタハの町ではプタハの化身または使いとされた雄牛もいた。
王権との結びつきとしては、王の正装の一つに牛のしっぽを模した帯というものがある。
実際に信仰されていた牛の神として、代表例は以下のような方々。
いずれも、実際の牛をこれらの神々になぞらえて崇め、死ぬと一定の手順で埋葬していた。また、太陽神アメン・ラーや冥界神オシリス、プタハなど他の有名どころの神々と同一視されているのも特徴的だ。
アピス
ブキス
ムネヴィス
■雌牛の場合
基本的に、母性や愛の象徴。
ほぼ例外なく太陽信仰と結びつきますが、死者(=胎内で新たな誕生を待つ子供)に乳を与えるため冥界に居る姿で描かれることもある。
王の母としてイシス女神と同一視されることもあり、王権に関わる祭儀への登場頻度は高い。
牛の女神様で、なんといっても第一はこのお方。
ハトホル
太陽神ラーの妻または娘として、ホルスの妻または恋人として知られる女神様。角の間に日輪を掲げる。
ハトホル様の印象が強いため、他の牛女神様たちは、のきなみハトホルと同一視されている。
牛は母性の象徴であることから、新王国時代ごろにはイシス女神がハトホルの角をつけるようにもなる。
その他、牛と関連づけられる女神たちには以下のような方々がいる。
ヘザト
バト
メトイエル
と、まあ、このように牛は、エジプト神話とも関連の深い動物である。
ちなみに雄牛より雌牛のほうが地位が高かったという説もあり、ヘロドトスは「歴史」第二巻で以下のように述べている。
かく、すべてのエジプト人は清い雄の牛や子牛をいけにえにするが、雌牛はイシスの聖獣であって、彼等は、それをいけにえにすることは許されない。すなわち、イシスの神像は丁度ギリシャ人がイオを描くように、雌牛の角を持った婦人になっているのであって、あらゆるエジプト人は等しく雌牛をどんな家畜よりもだんぜん一番あがめている。
―ヘロドトス「歴史」 青木 巌 訳
現代のエジプトにおいては、牛は聖なる信仰の対象ではないが、農村部にいけば古代と変わらず人々と生活を共にし、畑で飼われている牛の姿を見ることが出来ることだろう。
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*関連エントリ「牛飼育の起源と牛神様の起源が被っているかもしれない妄想」
人類最古の飼育牛は、エジプトのナイル上流から見つかっているそうです。


