「フィンズブルフの戦い」とベーオウルフ

フィンズブルフの戦い とは何か。Google様に聞いても出てこなくて、仕方がないから自分で調べてきたぜ!


まず「フィンズブルフ」とは、「フィンの城」という意味の単語。Finn's burg("ブルフ"=ドイツ語の"ブルグ"(城)に該当する単語と思われる)。原文は古英語のはずなのにFinns-Castleでは検索に引っかからないのが面白い。

フィン王はベーオウルフの中で言及されるフリジアの王で、デネ族の王フネフの妹、ヒルデブルフを妻に迎えたといわれている。しかしのちにフィンとフネフは争いとなり、フネフは殺され、フネフの息子もまた殺される。
ベーオウルフでこの話が言及されているのは、第十六節(1050-1124)。
物語の本編には関係なく、グレンデル討伐成功後の打ち上げ宴会の場で、吟遊詩人が昔物語として歌い上げる詩なのである。

だから「フィンズブルフの戦い」は、「ベーオウルフ」の世界の中では"劇中劇"として扱われているものが、独立した別の物語として存在した可能性を示すものなのだと解釈できる。フリジアの王フィンも、デネの王フネフも歴史上の実在モデルがいた可能性がある。実在したとすれば、「ベーオウルフ」の前編、グレンデル討伐時より以前の話となる。

詩自体は断片しか残っていないようで、和訳されているものを見ると、改行をすっとばせば文庫本にして僅か2ページ。内容はクライマックス部分のみ、お互いの陣営の有名どころの戦士の名が挙げられ、彼らがみな戦死してしまうさまを簡潔かつ悲壮感たっぷりに歌い上げている。



さて少し気になったのは、この断片が、「ニーベルンゲンの歌」クライマックス部分とえらく酷似していることである。

・城が包囲されている。立てこもるフネフ側で、門を守るのは熟練の戦士
・城は焼け落ちるが門は守られている
・攻撃のフィン側に、初陣を迎えた血気盛んな若者(ニーベルンゲンではウォルフハルトに該当)がいて、調子に乗って突撃してあえなく戦死
・双方ほぼ相打ちで多数の戦死者を出す

実際に生き残るのはフィン側だが、従者たちはほとんど討ち死にし、数人しか残らなかった、とベーオウルフのほうの挿入部分で言われている。これも「ニーベルンゲンの歌」クライマックス部分と合致する。
「ニーベルンゲンの歌」と比較すると、対応するのは…

フリジア勢(フィン王) =アメルンゲン勢 (ディェトリーヒ、ヒルデブラント) & フン族 (エッツェル王)
デネ勢(フネフ王) =ブルグント族 (グンテル、ハゲネ)

こういう感じか。この続きで行くと、ヒルデブルフ <> クリエムヒルト ということになる。クリエムヒルトが戦いの渦中で息子を亡くすように、ヒルデブルフもまたフネフとの間に出来た息子を戦禍に失う展開なのは、興味深い。
「吟遊詩人のオススメ! 悲劇的な戦いの顛末」という雛形みたいなものが、何か、このあたりから系譜として受け継がれているのかもしれない。(笑)

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