大英博物館:エジプト関連収蔵品レポート。

アッシュモーリアンが館内改装で閉館中だったため大英博物館のみ…。


大英はフラッシュ使用OK、全展示品の写真撮影OK。
そのせいなのか、あんまり貴重なものや脆いものの展示はなし。ヘンなものも無くて、無難で代表的なものが展示されてるなァ、っていう感じ。うーん、いや、代表的なものを一通り展示して、入館料も無料にして、一般の多くの人々に教養を得てもらおう、っていう目的からすれば正しいんですが。小学生なんかが初めて触れる異文化、とか、学校の勉強のために、っていう意味では良いチョイス。


 ただ、変わったもの好きには物足りん部分もあったりなかったり。


なんといってもカイロ考古学博物館の迫力には数段劣った…。チョイスが無難すぎる&無駄のないソツない展示すぎるのだよ(笑)
一部屋まるまるスカラベオンリー「すいません、置く場所ないから全部積み上げちゃいました」 …とか、古王国時代からローマ時代まで延々ホルス尽くし「木製の鷹像っていうカテゴリに集めたらこうなっちゃいました」 …とか、あの、一体何の意味があるんだ、ただの物置かココは。 みたいな絶望感にも似たショック 圧倒的な存在感のあとでは、あまりにインパクトが薄い。危なげ無さすぎだよ! もっとこう… あれだ。心配になるくらい無防備かつ大胆に、そこらへんにホコリまみれの石棺放置しちゃうようなハラハラさせられるエジプトが好き っていうか。
当たり前なんだけど、ごくごく 普 通 の 博物館でした。


 カイロのアレは、むしろ貴重な考古学遺産が有り余りすぎて置く場所すら無いっていう
 本場ならではの余裕の表れだったのかもしれん…


何しろ、あれだけ積み上げてもまだ、全遺跡の七割はまだ砂の下らしいからなあ。エジプト。

これでもかといわんばかりに、超一級品とそれ以外の未整理のものをごっちゃにして全部出しちゃうカオスな展示と比べちゃいかんのだろうけど、大英は、ロゼッタストーンとシャバカ石のほかは、それほど知名度の高い目を引くものも無く。展示せずに隠してあるものが多そうだ。



で、エジプト関連の展示品の中でいちばん気に入ったのがコレ

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古代のおべんとうセット


フタつきの編みカゴが可愛い。これ持って書記学校とか行くんですね! わかります!
ええのう… ほほえましいのう…。
こういう、ちょっとした生活用品が残ってるのが嬉しい。


あとは、どこかの本で見たっきり出典を忘れてしまって探していたハゲと再会。

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おやっさん天頂ハゲです。
古代エジプト人だってハゲる時はハゲるんだぜ! 的な主張。



混ぜるな危険。魚と鷹をドッキング。

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何をどう考えたらこういうモノを思いつくのか…



人面スカラベはここにもありました。
…スカラベも、バー(通常は人面の鳥)と同じ扱いだったんかね。

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・・・
・・・・・うん、まあ、普通の展示だからね。あまり変わったものはなかったです。
神像少なし。あっても護符のような小さなものがほとんど。やたらとセクメト様ばかりあったのは、イギリス人がライオンが好きだからなのか。

ミイラ室は子供おおはしゃぎでロクに見てないぜ。
展示は一室だったけど、実際の所蔵はあんまもんじゃないはず。かなりの数を隠してあるとみた。




展示の中で面白かったのは、色んな文化圏が交じり合った、中間的な遺物の存在かな。
人間の文化、歴史っていうのが、相互作用の中で作り上げられていったことを考えさせられた。

●BC550~330 "Persian Empire"時代のエジプト ペルシャ風まじっちゃったミイラ
●BC100~AD25 "Roman"時代のイタリア モロにエジプトのパクリにしか見えないデザインの陶器
●BC550ごろ キプロス島で作られたアフロディテ+ハトホルな像

とか。紀元前6世紀ごろのキプロス&レバノンの発掘品は「こいつはッ…!」と思わされるものが結構ありましたことよ。エジプトは時代的に末期王朝から第三中間期のあたり。そんな時代にエジプト人は外国で一体何をしてたんだ?? いや、それとも技術流出…? エジプトでしか作られていなかったはずのエジプト風の芸術が、けっこう外国で作られていたという概念は、頭の中にあまり無かった。レバノン杉を輸入するのにに貢物を持っていったり、人を派遣してたりしたわけで、物流もある程度は存在した… はず、だけど芸術品や、まして神像なんかは、決して輸出品としては扱われなかったというのに。

そのあたりの資料も探ってみれば面白いかも。
たった一つの壷にもドラマがある。これが古代文明スキーの醍醐味ですことよ!

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