死に行くナイル: メロウェダム稼動とともに失われつつある神々の恵み

古代であれば、今ごろナイルは上流で降った雨が流れてきて水かさを増し、流れの運んだ豊かな黒土が農耕地を覆い、恵みは大地を潤し、人々をはぐくんでくれたはずでした。しかしそれも今は昔。ナイル上流、エジプトの南の国境にほど近いアスワンに築かれた巨大な壁、アスワン・ハイ・ダムによって流れは塞き止められ、今や決まったき説にナイルの水量が増すことは絶えてありません。

それでも、現代エジプトの人々の「生命線」として、尚も恵みをもたらし続けてきたナイルが、ついにその恩恵をエジプトの国に与えることが出来なくなってしまいそうです…。



「ナイルのたまもの」限界=代替資源開発へ-エジプト
http://www.zaikei.co.jp/article/biznews/090727/39142.html

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思ってたより早かったかな、という感じ。
エジプトの南にあるスーダンという国では、かねてからメロウェ・ダムという巨大なダムの建設をやってました。そのダムが本格稼動しはじめたのが今年の初め。アスワン・ハイ・ダムより上流に、さらに大きな壁が出来てしまったことで、ナイルの水量はかなり減ってました。


↓これがメロウェ・ダム(英語版Wikipediaより。)
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これが、エジプトに流れてゆくはずだった水。これが、多くの遺跡をその下に永遠に覆い隠してしまった膨大な量のナイルの水なんですね……


ナイルの水源はアフリカのはるか内陸にあり、スーダンを南から北へ通過してエジプトに流れこみます。エジプトはナイルの北の果て、海に接するいちばん下流の国です。
アスワン・ハイ・ダムはエジプトとスーダンの国境に作られているので、ダムが完成したときにエジプトの国土だけじゃなくスーダンの国土の一部も水没しました。で、その時に失った国土の面積に応じて利水権を分割。それが記事で言われている「エジプトとスーダンによる1959年の合意改訂」のことだと思うんですが、もともとスーダンは、自分たちのほうが沢山国土を提供したんだから自分たちのほうが水をいただく権利があると思ってました。「うちらんとこから出てる水やのに、うちらが利用でけへんの、おかしいんとちゃう?」とか言ってずっとゴネてた経緯があります。しかしスポンサーがつかず、自力でダムをつくる技術力もなく…。

そこへ、我らが隣人、親切な○国さんが…ゴニョゴニョ
ええ、詳細は下部にリンクしておく記事から辿るか、ご自分で検索してみてください…。
複雑な国際事情なので、私の口からはとても。

と、いうわけで、メロウェ・ダム建設が始まった時点で、いずれエジプトが水不足になることは多くの学者が予測していました。ただ、それが思ったより早かった & 問題が思っていたより深刻だった。

過去のエントリで地図を出しましたが、スーダンはメロウェ・ダム以外にも多数のダムを建設中です。
スーダンが上流でガンガン採水してしまうと、当然のように下流のエジプトには水がきません。このままいくと、いずれエジプトは古来からの神々の恵みを失い、ナイルは死にます。ついでにダム建設で遺跡が水没しまくってるので、一時はエジプトさえも支配下に置いたスーダンの栄光の歴史、積み重ねてきた今までの(元から住んでいた)民族の誇りなんかも永遠に消え去ります。アラブ系の移民にとっちゃどーでもいいことかもしれませんが。

遺跡(過去)より、現在を生きる人間が優先されるべき、というのは判るんですが。
今のやり方は自然から一方的に搾取するばかりに見えて、いずれスーダンを流れるナイルも死んでしまうんじゃないのかな…と、そのへんが心配。


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※メロウェ・ダムについては過去のエントリ参照

沈むナイルの遺産 メロウェダム Merowe dam(Hamdab dam/Kijbar dam)
https://55096962.seesaa.net/article/200802article_16.html

メロウェ・ダム建設の進捗状況
https://55096962.seesaa.net/article/200805article_34.html

※スーダンにある遺跡についての関連エントリ

「忘れられたヌビアの王国」―ヌビア黄金時代・メロエ王国の遺跡
https://55096962.seesaa.net/article/200901article_26.html

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エジプトは、古代から考えると、最もナイルの恩恵を受けてきた国。
そして、ナイル無くしては生きていけない国。
ナイルが死ぬときエジプトも死ぬ… と言っても間違いではなかろう。果たしてエジプトは生き残れるのか?

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