エジプトの彫刻は何故左足を出しているのかという問題

J. マレク(Jaromír Málek)の解説文を読んでも言葉だけでは意味が分からず悩んでいたのがようやく謎がとーけーたー!

エジプトの彫像がなぜ必ず左足を一歩踏み出してているのか。
それは…

 像の正面は像の右側(像の右腕側)だから。

古代エジプトにおいて、体の「右側」は左側より尊重されてました。ちょうと今の日本で、重要な腹心のことを「右腕」と読ぶのと同じような感覚です。方向についても右から左という流れが一般的で、パピルスに書かれた絵物語(死者の書なんかも)通常は右から左に場面が展開されます。

で、立像を、その像の右手側から見た場合、左足は奥になるんですね。

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直立の状態だと生きてるのか死んでるのか分からないし、片腕片足が隠れてしまっていて、体の一部が足りない様に見えてしまいます。古代エジプト人、五体満足であることを示すために壁画には「存在してほしいもの」すべてを描きました。なので、隠れている反対側の腕と足も描かなくちゃならなかったのです。

というわけで、左足と右足、左腕と右腕のどちらかを前に出すか後ろに出すかしてズラさなくてはならなかったのです。

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…図解するとこんなカンジ。

左手が前に出る理由については説明いらんですよね。右側から見て体の奥にある左腕は、前に出さないと描くことが出来ない。それに、手の甲よりは、内側の握ってる指が見えるほうがキレイです。

左足が前に出てる理由は、手前にある右足が前に出ちゃうとカッチョ悪いのと、普通、奥側にあるものが手前にあるものより右側に来るという法則からと思われます。

なんかあれだ、スフィンクスの尻尾が必ず体の右側にあるんだ、という話と繋がったよ…。
右側面のナナメ前から見ることを想定してたからしっぽが右側なのか。




私はずっと、左足を出しているのは「生きてるしるしに左足を出すんだ」という説を信じてたんですよね。左足と左腕のほうが心臓に近いし、昔は北枕で人を埋葬していたから、体の左側が東=日の出=生 の方向に通じるという考え方。これもなかなかありそうな説ではあるのですが。

エジプト美術では、生きてる人が踏み出すのは、ごく僅かな例を除いて必ず左足なのです。死んでる人(神)は両足をピッタリ揃えています。



本当の理由は古代エジプト人に聞かないと分かりませんが、「エジプト彫刻は彫刻の右側面から見るのが正式」というのは、覚えておくと後でいいことがあるかもしれません。

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