アーサー王とV字溝の剣 「エクスカリバーは模様鍛接で作られた?」

ナショジオの30分番組、歴史人物シリーズ・アーサー王。

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30分シリーズは時間が短いぶん、どれも浅くて「あーそれもう知ってる」なやつが多いが、アーサー王は剣について面白いことを言っていた。

実在したアーサー王候補の一人が、ブリテン島からローマ軍が撤退したあとも残っていたローマ系の人物、「アンブロシウス・アウレリアヌス」なのだけれど、この人物がローマ人の技術を使って作られた長剣を持っていたという記録があるらしい。

それはケルトの長剣を改造したもので、当時としては画期的な剣だったらしい。
ウェールズ語で書かれた「マビノギオン」の中でアーサー王が、ケルトの戦士の装備(長剣+短剣)で登場することを考え合わせると興味深いものはある。

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素敵な鍛冶屋のおじ様。リアルアルベリッヒ。
このおじ様になら騙されて竜退治に行かされてもいい。(おい)

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製法は「模様鍛接」というらしい。
鋼をよじって重ねたものを、叩きあわすシンプルな手法。

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「エクスカリバーは片刃か両刃か」で、しばしばアーサリアンの間で激しい論争になるが、模様鍛接で作られた剣は両刃の長剣で、ローマ撤退後に使われていたのは馬上から歩兵を攻撃するのに適した形だったよう。

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出来上がった剣を磨き上げ、最後に強酸で不純物を拭い去ると…

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独特の模様が浮かび上がる。
古英詩「ベーオウルフ」にも、波の模様が浮かび上がる剣=”巨人作りの剣”が登場するが、その剣というのも、こんな感じだったのかもしれない。

以前、「アーサー王の剣とは~エクスカリバーの起源」という記事で紹介したことがあるが、「エクスカリバー」は最初のアーサー王の剣として登場するウェールズの伝承では「Caledfwlch」(カレトブルッフ)と呼ばれていて、これが硬いV字の刻み(V字の刻みを持つ硬い剣)を意味するという。V字の「刻み」ではないが、少なくともV字の模様を持つ優れた剣ではあるので、エクスカリバー候補として相応しいという。



…これはこれで、ありそうだと思ったがしかし、じゃあスコットランドの伝承にも出てくる「カラドコルグ」とか、女神スカアハがくれる剣はエクスカリバー候補から外れちゃうのか? というと、ちょっと「うーん」。カラドコルグはカレトブルッフとは関係ない別ものだとすると、 ローマ人が作った長剣→カレトブルッフ→カリバーン→エクスカリバー という流れになるのかなあ。うーん…。

それだと、ローマ人が撤退するまでは「V字の模様を持つ優れた剣」は沢山あったはずだから、そう珍しいものでもなく、伝説になるのもおかしいよねえ…。


ある程度、歴史と伝説が符号はしていると思うので、もうちょい情報が欲しいと思った。


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この番組では、アーサー王の元になったのは5世紀の人物、「アンブロシウス・アウレリアヌス」と「リオタムス」で、その二人が混同されたのではないかとしていたけれど、そもそもリオタムスは称号であって人物名ではないこととか、アーサー王が「生きた」とされる5世紀の直後から「アーサー」という名前の流行が見られること(="アンブロシウス"ではなく、アーサーまたはアルトリウスに近い名前の人物が他にいた可能性)に触れていないので微妙に不満だったり。

アーサー王の伝説が広まる切っ掛けになったのは、ジェフリー・オブ・モンマスの「ブリタニア列王史」というのは妥当だけれど、それより古い時代にもアーサー王の伝説というのが伝えられていた断片的な証拠があるので、ジェフリーが伝説を混ぜて今に伝わるアーサー王像を作り上げる「前」から、既にアーサー王伝説はあったんだと思うなあ。


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とかいう濃い話を、きっとイギリス本国のマニアたちは日夜繰り広げているのだと思う。
あっちのマニアはガチすぎてしゃれになりません、アーサー王オンリーのコスプレ大会とかやってたりしますし。

私は日本の片隅で細々でいいです…怖いから。

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