ディスカバリーチャンネル「マスクを脱いだツタンカーメン」 ナナメ視聴
ディスカバリーチャンネルど放送されている二時間スペシャル「マスクを脱いだツタンカーメン」。
http://japan.discovery.com/tutankhamun/
二時間なうえに前編・後編で4時間もやってほんとに大丈夫か? 内容足りるんか? と思ってたけど大丈夫でした!
日本の特番なら4時間やっても半分はCMと、どーでもいいゲストの聞くに堪えないトークだったりするところ、この番組は5分たりとも手を抜かなかったぜ。登場するのはその道の一流プロばかりだったぜ。CMは多めだったけど、まぁ許容範囲。
というわけでエジプトスキーも古代文明ファンも是非とも再放送は見るんだ。
さてこの番組、何をやっとるかというと、今年2月に発表された「ツタンカーメンの両親はアクエンアテンと、その姉妹。ツタンカーメンの死因はマラリアでした」というニュースの裏舞台の放映。無駄な再現画像やドラマ仕立ての演出は殆ど無く、各ジャンルの研究者が一つずつ確証を積み重ねていくのを淡々と積み重ねていく。それだけで2時間番組作れるわけなんで、どれだけ膨大な研究時間を費やし、どれだけの研究者が関わったかというのが分かろうというもの。エジプト国内で完結しているように見えて、実はかなり大掛かりなプロジェクトです。
FBIが殺人捜査に使う遺伝子解析用の試薬なんか出てきたりして。
番組のつくりが家族の真実を明らかにするというテーマで作られていて、最後にツタンカーメンの両親が判明したところで「ファラオは長き旅の果てに父や母と再会した」というナレーションで締めくくられるのが気持ちよくてよろしい。父と母と子の三位一体は古代エジプトの理想的な聖家族像だからなあ。
スタートは、身元のはっきりしているミイラ、「イウヤ」「チュウヤ」夫妻や、アクエンアテンの父親である「アメンホテプ3世」の遺伝子の採取からです。母系のみで遺伝するミトコンドリアDNAや、父親からのみ遺伝するY染色体の比較などを組み合わせて、家系図を作っていく。
これが出来るのは、既に「候補」となる何体かの身元不明ミイラがあるからですね。
ハトシェプスト女王の時と同じで、時代ごとに異なる埋葬の方法、副葬品の流行、ミイラの作り方などのデータから、ミイラの作られた時代を絞り込み、さらに骨の状態などから死亡時の年齢を絞り込んで、ツタンカーメンと同時代の王族のミイラの中でも可能性のあるミイラを比較する。
こちらがアメンホテプ(アメンヘテプ)3世。
こちらが、かつてはスメンクカーラーといわれ、今はアクエンアテンと判明したミイラ。
名前の削り取られた棺は有名ですが、中身を見たのは始めて。
ミイラっていうか・・・・ 骨・・・ ですね。^^;
腰骨が広く、女性的な体つきにも見える王様だったようです。
ツタンカーメン。
おばあちゃんのティイ王妃。髪の毛ふっさふさです。
なんかこんな感じのおばあちゃん、現代にもいるよね…
そしてこちらが、名前不明のツタン様のご母堂。
番組終了時点では、ネフェルティティもしくはキヤの可能性が取りざたされていましたが、のちの発表でアクエンアテンの姉妹と判明しているので、どちらでもないことになります。
…ちょっと疑問なんだけど、エジプトの王権って基本的に女性が受け継ぐよねえ。
ツタン様のお母さんがアクエンアテンの姉妹だったってことは、お母さん自身が王位継承権を持ってるはずで、その息子であるツタン様は改めて「王の娘」と結婚しなくても、誰と結婚しても王になれたんじゃねーの…? なんでわざわざ、異母姉と結婚したんだろう。二代続けての近親結婚はリスキーすぎるだろう。
この選択の意味がよく分からない。次回放送の後編で触れられるのかな?
あと、近親婚を繰り返した場合って、遺伝子解析の結果はどうなるんだろうか。母親と息子が結婚したりしてた場合、今回分かった家計図はもっと複雑になるんじゃ…。
真面目な話はこのへんまで。
実は隠れた見所は、証拠品を探してバタバタ走り回る学者のみなさんの奮闘振り。今回も、エジプトのエジプトたる所以… エジプトらしさというか何というかが 大 爆 発 だ。
王女の遺体をなくした
比較対象の遺体の保存場所がわかんねーとかきた(笑)
ちょ、おま…。
倉庫につっこまれてたアメンホテプ3世もヒデェと思ったけど、何この斜め上。
遺跡の一部を倉庫として遺体山積みにしてたりする。
壁を壊して押し入り、遺跡から遺体を再発掘… しようとするけど 見つからない。
倉庫に入れたまま忘れ去られていた碑文。
むしろよくそれを思い出したなっていうか。
台帳載ってないのマズいやろ(笑)
データベースにもなければそりゃあ世の中の学者さんも利用できません。調べようにも存在に気づきようがありません…。
「三時間に及ぶ(博物館内の)捜索の結果…」とか、当たり前なのな。
かつて宝探しと発掘がごっちゃにされていた時代、掘り出したものをとにかく保存すればいいやってところから始まったのがカイロ博物館なんで、初期の収蔵品が整理不十分なのは理解できるんだけど。何十年も誰も整理してない、再検証もしていない、しかも一部どっかいっちゃってる、っていうのはなあ。
エジプト・アラブ共和国では 遺物は二度発掘される
一度は砂の中から
もう一度は博物館の倉庫から
これ標語か何かにして博物館に貼っておこうよ。あと、日本から整理の得意な人材をカイロ博物館に送り込んで、綿密な目録を作らせるべき。
少なくとも、銘文いりの金箔を、紙に挟んで100均で売ってそうなクリアファイルに突っ込んである とか 古代のファラオが物置に詰まれてる とかいうのは、改善したほうがいい。
というわけで、今回もエジプトパワー炸裂でした。
あとおまけ
映画か小説に出てきそうな風貌の考古学者 COLLEEN MANASSA女史。
「ナイルに死す」あたりに出演できそうだ…。
http://japan.discovery.com/tutankhamun/
二時間なうえに前編・後編で4時間もやってほんとに大丈夫か? 内容足りるんか? と思ってたけど大丈夫でした!
日本の特番なら4時間やっても半分はCMと、どーでもいいゲストの聞くに堪えないトークだったりするところ、この番組は5分たりとも手を抜かなかったぜ。登場するのはその道の一流プロばかりだったぜ。CMは多めだったけど、まぁ許容範囲。
というわけでエジプトスキーも古代文明ファンも是非とも再放送は見るんだ。
さてこの番組、何をやっとるかというと、今年2月に発表された「ツタンカーメンの両親はアクエンアテンと、その姉妹。ツタンカーメンの死因はマラリアでした」というニュースの裏舞台の放映。無駄な再現画像やドラマ仕立ての演出は殆ど無く、各ジャンルの研究者が一つずつ確証を積み重ねていくのを淡々と積み重ねていく。それだけで2時間番組作れるわけなんで、どれだけ膨大な研究時間を費やし、どれだけの研究者が関わったかというのが分かろうというもの。エジプト国内で完結しているように見えて、実はかなり大掛かりなプロジェクトです。
FBIが殺人捜査に使う遺伝子解析用の試薬なんか出てきたりして。
番組のつくりが家族の真実を明らかにするというテーマで作られていて、最後にツタンカーメンの両親が判明したところで「ファラオは長き旅の果てに父や母と再会した」というナレーションで締めくくられるのが気持ちよくてよろしい。父と母と子の三位一体は古代エジプトの理想的な聖家族像だからなあ。
スタートは、身元のはっきりしているミイラ、「イウヤ」「チュウヤ」夫妻や、アクエンアテンの父親である「アメンホテプ3世」の遺伝子の採取からです。母系のみで遺伝するミトコンドリアDNAや、父親からのみ遺伝するY染色体の比較などを組み合わせて、家系図を作っていく。
これが出来るのは、既に「候補」となる何体かの身元不明ミイラがあるからですね。
ハトシェプスト女王の時と同じで、時代ごとに異なる埋葬の方法、副葬品の流行、ミイラの作り方などのデータから、ミイラの作られた時代を絞り込み、さらに骨の状態などから死亡時の年齢を絞り込んで、ツタンカーメンと同時代の王族のミイラの中でも可能性のあるミイラを比較する。
こちらがアメンホテプ(アメンヘテプ)3世。
こちらが、かつてはスメンクカーラーといわれ、今はアクエンアテンと判明したミイラ。
名前の削り取られた棺は有名ですが、中身を見たのは始めて。
ミイラっていうか・・・・ 骨・・・ ですね。^^;
腰骨が広く、女性的な体つきにも見える王様だったようです。
ツタンカーメン。
おばあちゃんのティイ王妃。髪の毛ふっさふさです。
なんかこんな感じのおばあちゃん、現代にもいるよね…
そしてこちらが、名前不明のツタン様のご母堂。
番組終了時点では、ネフェルティティもしくはキヤの可能性が取りざたされていましたが、のちの発表でアクエンアテンの姉妹と判明しているので、どちらでもないことになります。
…ちょっと疑問なんだけど、エジプトの王権って基本的に女性が受け継ぐよねえ。
ツタン様のお母さんがアクエンアテンの姉妹だったってことは、お母さん自身が王位継承権を持ってるはずで、その息子であるツタン様は改めて「王の娘」と結婚しなくても、誰と結婚しても王になれたんじゃねーの…? なんでわざわざ、異母姉と結婚したんだろう。二代続けての近親結婚はリスキーすぎるだろう。
この選択の意味がよく分からない。次回放送の後編で触れられるのかな?
あと、近親婚を繰り返した場合って、遺伝子解析の結果はどうなるんだろうか。母親と息子が結婚したりしてた場合、今回分かった家計図はもっと複雑になるんじゃ…。
真面目な話はこのへんまで。
実は隠れた見所は、証拠品を探してバタバタ走り回る学者のみなさんの奮闘振り。今回も、エジプトのエジプトたる所以… エジプトらしさというか何というかが 大 爆 発 だ。
王女の遺体をなくした
比較対象の遺体の保存場所がわかんねーとかきた(笑)
ちょ、おま…。
倉庫につっこまれてたアメンホテプ3世もヒデェと思ったけど、何この斜め上。
遺跡の一部を倉庫として遺体山積みにしてたりする。
壁を壊して押し入り、遺跡から遺体を再発掘… しようとするけど 見つからない。
倉庫に入れたまま忘れ去られていた碑文。
むしろよくそれを思い出したなっていうか。
台帳載ってないのマズいやろ(笑)
データベースにもなければそりゃあ世の中の学者さんも利用できません。調べようにも存在に気づきようがありません…。
「三時間に及ぶ(博物館内の)捜索の結果…」とか、当たり前なのな。
かつて宝探しと発掘がごっちゃにされていた時代、掘り出したものをとにかく保存すればいいやってところから始まったのがカイロ博物館なんで、初期の収蔵品が整理不十分なのは理解できるんだけど。何十年も誰も整理してない、再検証もしていない、しかも一部どっかいっちゃってる、っていうのはなあ。
エジプト・アラブ共和国では 遺物は二度発掘される
一度は砂の中から
もう一度は博物館の倉庫から
これ標語か何かにして博物館に貼っておこうよ。あと、日本から整理の得意な人材をカイロ博物館に送り込んで、綿密な目録を作らせるべき。
少なくとも、銘文いりの金箔を、紙に挟んで100均で売ってそうなクリアファイルに突っ込んである とか 古代のファラオが物置に詰まれてる とかいうのは、改善したほうがいい。
というわけで、今回もエジプトパワー炸裂でした。
あとおまけ
映画か小説に出てきそうな風貌の考古学者 COLLEEN MANASSA女史。
「ナイルに死す」あたりに出演できそうだ…。