ハイビジョン特集「異端の王 ブラックファラオ」 やれば出来るじゃないか、NHK。

ひさびさにNHK特番のエジプト。

前に見た特集「エジプト発掘」シリーズは「超」のつくほどダメな番組すぎて途方に暮れたくらいだが、今回のは良かった。やればできるんじゃないか、国営放送。


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ゲストは、タレントなのか何なのか良く分からないアーティストの人。その人が旅の中で書いた絵の説明なんかいらんやろ。とも思ったが)、可愛いだけのアイドルに「きゃー、すごーい」とか頭悪いコメント連呼されるより100倍マシだったので、それはいいとしよう。

それより何より、ナビゲーターが松本先生ですよ。ヒエログリフ講座といえばこの人! の松本 弥先生。松本先生が出てくる番組は今までのところ安心のクオリティ。

ギルフ・ケビールといい、今回のヌビア人王朝といい、古代エジプト史としてはマニアックなところを担当してるみたいだけど、NHKの歴史もの特番に期待するのはコアでマニアックな番組であって、ツタンカーメンだのピラミッドだのミーハーなのは適当に民放に振ってりゃいいと思うんだよ。てか、松本先生の肩肘張らない終始穏やかな口調は、バラエティより教育テレビ向けなんだ…。

NHKは松本先生を専属にして、Y村さんとかは民放に回すべき。





で、内容としては、古代エジプト 第25王朝、ヌビア人系のファラオたちに焦点を当てたドキュメンタリー。
2008年2月号のナショナル・ジオグラフィックで特集されていた時にブログ記事にしたこともある。

http://55096962.at.webry.info/200802/article_2.html

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** 以下 番組内容 **

エジプトの南、現在のスーダンのあたりに栄えたクシュ人の国(ナパタ、のちにメロエ)は、500年にわたりエジプトの支配下に置かれていた。エジプトはクシュが産出する金によって大繁栄の時代を築くが、のちに国力が衰退し始め、ナイル下流地域が異民族支配を受けるようになると、クシュ王国は独立し、逆にエジプトを支配しようとする。

だが、かつて支配されていたクシュ王国は、エジプトに復讐するために兵を進めたわけではなかった。
彼らが求めたのは、神への奉仕と古きよきエジプトの伝統の復権だったーー。

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各々のファラオについてのデータはサイトURL参照。番組の内容はだいたい基本データに沿った物。

http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/index-matu.htm

新説が出てきた! とか、新しい遺跡が! とかではないため派手さには欠けるだろうが、古代エジプトのあまり知られていない一面を知ることが出来るという意味では是非オススメしたい。過去あまりスポットを当てられることのなかった時代と地域を取り上げる試みは支持する。


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エジプトファラオ戦隊★ブラックレンジャー



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さすがにハイビジョンだけあって映像がキレイ。おいらエジプトで一番好きなのは、こういうズバっとした「空! 川! 砂漠!」っていう風景なんだ。川がある、その周囲だけ人が住んでる、緑は美しいのに振り返ると不毛の大地。人の世界の内と外の境界線が目に見える風景が広がっているから、古代エジプト人の考えた世界観も二元論になってるんだろうと思う。

尺的にムリだったんだろうけどカワ遺跡も見てみたかった…






ちなみに、この時代と場所が注目を浴びたのは、2008年に完成した、中国資本の出資によるメロウェ・ダムのせい。番組内で流れていた美しいナイルの流れのすぐ近くにダムが作られている。
ダムによって貴重な遺跡が沈んでしまったのはもちろんのこと、下流のエジプトさんの水不足問題や、国内の失業問題を産み出してしまった。スーダンの舗装道路に対し「石油利権を求めて進出してきた中国の支援」とかサラッとナレーション入ってたけど、実は裏にあるのは深い話だったりします…。

ダムで発電することで、たしかに都市部の人々は豊かになったかもしれない。だけど、ダム付近の人は住居を無くしたり、畑や漁場を失って収入が無くなったりしている。その点、番組内で、古代に金の採掘場だった場所で金のカケラを探す人々を映したのは良かった。

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日本はなんだかんだいって豊かだし、金持ってない言ってる人も実は金持ちっすよ…。
「貧しい」の定義が、「今年はコートを新調できなかった」とか「ほしいCDを買えなかった」とか「寿司が食えない」とかだもん。普段どんだけ贅沢なんだと(笑)

砂嵐の吹く砂漠で一日中金を探して、わずか2g、日本円で6000円の金のカケラを見つけて「大金を手に入れました」と真剣に言う人々。「お金を手に入れて、ただ普通の暮らしがしたいだけ」とささやかな未来を語る若者。そんな世界もあるんだよ。石油によって急速に発展しつつある都市と、故郷を追われ元々の暮らしを失って途方にくれている人々の両方ともが現在のスーダンなんだ。

(そんなこんなもあって、先日、スーダンは南北に分かれることが決まったばかり。)

古代人には古代人の、現代人には現代人の試練がある。古代の人々がそうしてきたように、現代のスーダンの人々にも、戦ってよりよい未来を勝ちとってもらいたい。




ツッコミとか疑問点とかもあるけれど、それはまた別のエントリで。
ひさびさにNHKらしい、マニア「が」満足する良番組でした。


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※メロウェ・ダムについては過去のエントリ参照

沈むナイルの遺産 メロウェダム Merowe dam(Hamdab dam/Kijbar dam)
https://55096962.seesaa.net/article/200802article_16.html

メロウェ・ダム建設の進捗状況
https://55096962.seesaa.net/article/200805article_34.html

※スーダンにある遺跡についての関連エントリ

「忘れられたヌビアの王国」―ヌビア黄金時代・メロエ王国の遺跡
https://55096962.seesaa.net/article/200901article_26.html

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しかし、あれだ。

ゲストが遺跡指して「せんせー、あれなにが書いてあるんですかー」なんて言ったときに「うーん、そーですねー ざっと見てxxxって書いてありますねー」…なんて即答で読み上げちゃう松本先生、マジ神。あれがアドリブじゃなかったとしても、そのへんに転がってる柱の文字を手ぶらでさらっと読めるのはさすがだ…。

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