古代エジプトに「金の延べ棒」はあったのか? ―壁画に見る金の保存法

こないだのNHKのエジプト特番でちらっと見切れた壁画が気になっていた。
「これがクシュからエジプトに貢がれてきた大量の金です」というナレーションとともに映されたのが以下の図なのだが…。

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なんも知らない人が見たらこれ、ドーナツ山積みにしか見えんぞ(笑)

いやいや、これほんとドーナツだよ、載せてるのがお皿っぽいし。これ横に「金ですよ」っていう文字添えてなかったら、何意味してるかわからんと思うんだ。

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お皿に載った山盛りのドーナツのような貢物のスキマに書かれた矢印部分の文字が、「金がいっぱいだよ!」という意味を表している。「金」という文字の下に三つの点々が付け加えられているが、この点々が複数形を意味する。何かが「たくさん」「すごく」ある時は、点々を足すか、同じ文字を三回繰り返すんだ。

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ちなみに、金を意味する文字の原型は首飾りだ。(下の段の写真はドンピシャの形をしている)

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で、ここで疑問に思ったのは、なぜ金をこんなドーナツみたいな形で表現するのか ということ。

現代人の感覚では、金を保管・輸送するときの形状といったら「延べ棒」だと思う。それを敢えてこの形にしたのは、もしかして、このドーナツ型は金を保存するときの一般的な形だったのではないか。言い換えると、古代エジプトでの「金の延べ棒」はドーナツ型だったのではないか。

ドーナツ型にした理由は、たとえば、以下の図によって説明がつく。

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これは第18王朝、アマルナ時代の図だ。アクエンアテン王と家族が、家臣に報酬を与えている。その形が「首飾り」なのだ。そもそも、「金」を意味する形からして首飾り。図では皿に載せられているが、金属は装飾品として身につけて運ぶものというイメージが強かったんではないだろうか。

だとすると、金のドーナツ形も同じく身につけるため、腕を通して運ぶための形だったのでは。王様が部下に報酬として与えるにしても与えやすい形だよね。





類似といっていいのかどうかは断言できないが、古代のインカ地方でも金属を保存するのには独特の形があった。「ナイペ」と呼ばれるアルファベットの「I」の形をした銅板で、大きさは何種類かに決められていたのだという。通貨がわりに使われたのではないかという説もある。

同じように、このエジプトの腕輪型の金にも決められた大きさ・重さがあったとすれば、代理通貨として使えたんじゃないかなあ、と思ったり。同じ大きさの大量の腕輪っていうのは、古くは第四王朝のクフ王の母后の墓からも出土していることだし。

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ちぅわけで誰か、古代エジプトでは腕輪が代理通貨だった説とかで論文書いてください。(おい

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