古代エジプトの「美女の条件」

…が、知りたいと、ア●さんが繰り返すので。
まったくしょうがねぇなぁスターゲイトの向こうでナンパでもするのかい? ん? いいから好きな子選んじゃえよ。

というのはさておき、古代エジプト人の考える「美人」の条件。
まず絵画や像などの美術から判別できる内容が一応、ある。

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エジプト人は、神々および墓に描く人物(=永遠に残るとされるもの)には、「理想的な姿」を描くことが多かった。老人や、肉体的に障害のある人物が見られないのは、そのためである。つまり絵画や像の姿には、古代エジプト人の理想が、ある程度は投影されているはずだ。

そう考えた場合、特徴として挙げられそうなのは以下のようなものだ。


・女は色白。
・目が切れ長。
・髪は長いほうがいい。
・スリム。



ただ、これらが果たして美人の条件かというと、疑問符はつく。

「色白」については、壁画などの場合、女性のほうが色白に描かれていることが多いためだが、単にかき分けのためという可能性もある。ただし色白で日に焼けていないということは家の中に篭っている、畑仕事などをしていないということで、身分の高さも意味している。

目が切れ長でアイシャドウばっちりなのは、素体の美人の条件というより、化粧で身支度を整えていることが魅力的に思えるという話かもしれない。

髪の毛についても化粧と同様。

スリムなほうがいいのは…まあ、なんていうか、本当にスリム体型が好きだったのかどうかは良く分からない。現代エジプトだと、ちょっとぽっちゃりめで安産体型なほうがモテるらしい。旅行に行ったことのある女性なら、日本人は細すぎる! もっと食わんかい!! と、きっと言われたことがあるはずだ…。


というわけで、どれも、確実に「これが美人の条件!」と言えるモノではない。
しかし今の日本を見てみたところで、「この条件さえクリアすれば美人」というのは無いだろう。人それぞれ好みが違う。古今東西どこの人だってそんなもんのはずだ。


ちなみに、「見た目より性格」というのは、古代エジプトでもやっぱり存在する。

エジプト語でいうところの「ネフェル」は、「美しい」という意味と同時に「良い」も意味する。良き人々の顔は美しく、良き神々は美しいもの。「美しいから良い」のではなく、「良い物だから美しい」という考えを持っていたようで、死者の書には、死者を形容する言葉として、しばしば「(故人の名前)、顔美しき物」という言い回しが出てくる。良き死者だから死んだ後も顔が美しいのだ。

死後も永遠に生き続けるという概念に付随して、善良に生きた者は死んだ後は美しい姿のままでずっと生き続けられる、という考えに至ったのかもしれない。


「見た目より性格」を強く前面に撃ち出す文学としては、「二人兄弟の物語」がある。(大英博物館所蔵 ドービニーパピルス/新王国時代)
インプとバタという兄弟のうち、弟には、神々によって祝福され創られた、この世の最も美しい女が妻として与えられる。やがて女は、海に流れた女の髪の毛に恋をしたファラオに見初められるが、そのとき夫を裏切って弱点をファラオに教えてしまう。死んだ夫は、なんども姿を変えながら女に罰を与えようとする…。

この物語に登場する女は、姿こそ美しかったが正直者ではなく、最後には不名誉な剣の死(処刑)を遂げる。神の創ったものさえ誤るということ、神は見た目の美しさを与えることは出来ても、美しい心までは創れないということを示している。見た目より中身、なのである。


ついでだが、この物語は、ファラオが惚れた「女の髪」というポイントを教えてくれる。
ファラオが惚れたのは、髪の毛そのものの美しさというより「香り」である。現代エジプト人の香水好きと関係があるのかはともかくとして、「良い香り」はイイ女の一つの重要なポイントだったのではないかと思う。匂いが重要だったことは、壁画への登場頻度、神々への供物として重要視されてすたこと、また墓にまで大量に持ち込んだことからも伺える。

というわけで、さきほどの「目で見て」予測する美人の条件には、もう一つだけ付け加えておきたい。


・いい匂いがする。



…なんとなく、現代日本人の好みとあんま変わらないような気がしてくる今日この頃。




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ちなみに、文学にしろ何にしろ古代エジプトの文書記録・芸術品などは、圧倒的に男性によるものが多いです。というか女性の手になるものは殆ど無いと言ってもいい。男性から見た「理想の女性像」や「イイ女の条件」はなんとなく伺えますが、女性から見た「イケてる同姓像」は見えてきません。でも、古代にもカリスマ主婦がいたんじゃねーかなー とか、金持ちで何不自由なく暮らしてるような人は下々からはやっかまれてたんじゃないかなー とか、想像してみるとちょっと楽しいですね。

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