その者、黄金の頭飾りを身に着けて。 ~不可能と呼ばれた「髪飾り」を装備する覚悟とは

今回のお題は、こちら。古代エジプトの黄金の髪飾りである。
エジプト本などでたまに紹介されていることがあるので、見たことがあるエジプトスキーさんもいることと思う。

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時代的には新王国時代のもので、見た目からしてメソポタミアの影響を受けていることから、当時のパレスチナ方面にあった同盟国のいずれかから嫁いできた王女が身につけてきたものではないかともされる。

この髪飾りがまた面倒なことに、世界中のいろんな博物館に、房の部分がバラバラに収蔵されているのだ。
一例が、東京の国立博物館にあるコチラ。

http://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=TJ5677

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…が、この髪飾り。実は実用に適さないという話を小耳に挟んだ。

地金が金なので

髪飾り全体の総重量がえらいことになってしまい

ふつーに頭にのっけると首が死ぬ


と、いうのである。なんじゃらほい。


試しに計算してみた。

金の密度 =19.32g/cm3
写真の髪飾りの花ひとつの体積 =訳0.43cm3
復元模型から、一房に16花ついて側頭4連x2+後頭部5連とする =花208個

花の総体積は0.43x208 =89.44cm3

19.32g x 89.44cm3 =1727.98 g


地金だけでこの重さ。
さらにガラスや翡翠も加わることになるので、かなりどんぶり勘定になるが、完全体の黄金の髪飾りは トータル2kg程度 。

つまり2リットルいりのペットボトルを頭に乗っけるのにほぼ等しい、ということである。

(→のちほどツッコミあり、それぞれの花を連結している部分やヘアバンド状の部分も金らしく、それも入れれば5キロ超えるらしいです…。Mjd。)



試しにやってみた。

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…まあ、何一人でバカやってんだ というツッコミはともかく、これが意外と首にクること判明。最初の数分は「あ、いけるいけるー こんくらいよゆー」とか思えるんだが、その後、だんだんと頭痛がしてくる感じに。この髪飾りにカツラまで加えたら、そりゃ首死ぬわ…。しかも暑い国エジプトでやれとか(笑)

王族はよっぽど首を鍛えていたか、こうした重量物による深刻な肩こりは、プログラマーの痔の如く職業病だったのではあるまいか。


結論として、 黄金の髪かざりは選ばれし者が身につける装飾品、職業:王族 は必須。防御とカッコよさは上がるが素早さが下がる装備、ということである。

いやーなんていうか、古代エジプトの王族って体は半裸のくせに頭とか首周りとか動きにくそうな装備つけすぎだよね。ほんと。やっぱ庶民バンザイですよ。おいら古代に生まれても、亜麻布いっちょで気楽に生きていきたいよ…。


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まあ、まじめな話をすると、「そもそも実際は身につけていない」(=副葬品、あるいはイザというとき身につけて持ちはこべる形の財産)という考えもあるんだよね。

王族から家臣への黄金の贈与はなぜか首輪やブレスレットの形をしていた という話を以前のエントリで書いたことがあるけれど、「金の延べ棒」のようなものは無くて、貴金属は、持ち運びしやすく、見せびらかしやすいアクセサリの形で保管されていた。

この髪飾りは手が込んでいるので単純に保存のために作られたものではないだろうけど、持ってることに価値がある! 的な位置づけで、実際に身につけることはあんまり想定されていなかったような気がしなくもない。

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