「文明崩壊」とイースター島 マップ選びは重要だという話

「銃・鉄・病原菌」のジャレド・ダイアモンドが書いた別シリーズ、「文明崩壊」を読書中。
まだ1/3くらいなのだが、まあだいたい言いたいことはわかってきた。たぶんこの本は、古代文明スキーが読めば、著者の想定したのとは違った方向で楽しめると思われる。

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
草思社
ジャレド・ダイアモンド

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文明は崩壊しても再生する余力があれば何度でも立て直せる。が、立て直す余裕がなくなると生活レベルをいったん最低まで引き下げて、人口も最低限まで減らしてから長い時間をかけて立て直すしかない。現実世界にリセットボタンはない。シムシティで一回失敗したあと100万人都市までこぎつけるまでの苦労をリアルに何百年もかけて再現するみたいなもんだ。

そして、その「ミスったときに立て直せるか否か」というのが、そもそもプレイ開始したマップの立地条件に大きく依存するというのが、本書の前半部分のポイント。プレイ中のマップが狭すぎるとか、資源がないとか、森林破壊が行われた際の再生スピードが遅いとかだと、ゲームオーバー→民族絶滅 というのもあり得る。マップ選び重要。マジ重要。


文明崩壊=文明の担い手の全滅と思うといい。
そもそもの話として、容易に移住できる別環境が近くにあれば全滅はしにくい。しかし周囲がぜんぶ海、それも近くにほかの島なんてない、という環境だった場合、どうだろう。

イースター島の場合が、まさにそれだ。

モアイ像の作りすぎもそうだが、そもそも島で賄える人口に限度があるのに、その限度を超えて人が増えてしまったせいで食料が足りなくなり、しかもどこか新天地へ移住して人を減らすこともできない。島の住人は島内部で互いを潰し合い、適切なレベルまで人口を減らすしかくなくなった。当然、自ら食料を生産できない支配者層を賄う余裕もなくなり、支配者層しか持っていなかった文化もその時点で失われる。

もしイースター島とチリの間にもう少し島があって渡っていける距離だったなら、あるいは… である。


さて、人口が島の食料生産で賄えなくなる以前の話だが、現在は荒涼とした大地が広がるばかりのイースター島も、かつてはそれなりの食料豊富な島だったらしい。というか、でなければ大量のモアイ像を作ったりできないはずだ。

モアイ本体もそうだが、それを載せている「アフ」と呼ばれる台座部分も、作るには相当な労力がかかる。片手間に作って間に合うものではなく、石を削るには専業職人が必要だ。彼らモアイ労働者のぶんまで食料まで余分に生産できなくては、仕事が成り立たない。

かつてのイースター島にはヤシが茂り、木材もあった。
木材があれば舟が作れる。遠洋に魚を取りにいける。
しかしそれ以上に保水と保土の効果が大きかったはずで、現在のイースター島の痩せた土地とは比ぶべくもなかったと思われる。

熱帯雨林のように、森林の再生しやすい好条件があればよかった。
また、そうではなくとも、遠洋まででなくても釣りができる環境があればよかった。

しかしイースター島は気温も降雨もあまり条件が良くなく、さらに若い火山島のせいで海辺はほぼ断崖絶壁、おまけに水温も低いとあって浅瀬での漁がしづらい環境。さらに移住しようにも近場に島もないとあっては、木材が底をついた時点で完全に「詰み」のマップなのである。そこに住む人間が自然に森林を育てることを覚え、長い時間をかけて元の環境を再生しようとするのは難しかっただろう。残された選択肢は、島に残された環境でも維持できる最低限の人口を保ったまま細々と生き長らえる方法だけだ。


他から隔絶された環境では、いったん選択肢を誤った先にはリカバリの出来無い衰退しかない。
陸続きに他国やフの文明があり、勢力が衰えたあと他の支配下に置かれた場合などは、生存という意味では、まだ幸運な方だったかもしれない。

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