「マチュピチュ『発見』100年 インカ帝国展」へ行ってきた

上野の国立科学博物館でやっていた、インカ帝国展へ行ってきた。



花見シーズンの週末しかも天気がいいとあって、駅は改札からして大混雑。おまけにインカ展も入り口の行列はさほどでもないのに、中にはいると人でごった返して落ち着いて見えないという大変な状況に…。

やはり人気は黄金などのピカピカ光る製品。インカといえば黄金! という感じでイメージが染み付いているのもあるだろうし、やはり目立つということもある。が、人が実際に生活に使ってた道具のほうが、私は好きだ。食器とか農耕具とか普段着とかね。そういう地味なもののほうが、人の生きた痕跡が感じられると思う。

インカ文明を語る時に、そうした生活用品が少ないのは、まずもってインカ帝国を形成した諸地域・諸部族というのが現在の住人の直接的な祖先たちだということが挙げられると思う。スペイン人が来たことによって、王政は崩壊し、負うと貴族たちが殺された。しかしその配下の人々はそのまま同じ場所に生き続けた。トップが変わったことによって生活スタイルが若干変わったにしても、インカ時代に使っていたものは、スペイン支配時代もそのまま使い続けたはずなのだ。

まあそりゃ、インカ時代の生活用品がそのままの姿で出てくるわけがないよな、…という。
使い込まれて廃棄されたか、再利用されたか、いずれにしろ、現在まで残っているものは少ないだろう。手に入れられるのは墓や見捨てられた神殿から出てくる副葬品、祭事用品、王侯貴族の持ち物。墓に生活用品一式までぶちこんだエジプトなんかと違い、庶民の生活は見えづらい。

ただ逆に言うと、今そこに生きている人たちがインカ帝国の末裔たちなわけで、その生きた生活を見ていると、インカ時代のことも分かると思う。スペイン人が持ち込んだヨーロッパ式の農耕法は、現地人の知っていた農耕法に比べ非効率的だった、などという話もある。現地の人々が行なっていたインカ時代から続く独特の農耕法は、実はその地方・その作物においては最良の方法だったというわけだ。インカ、というより中南米の文明を研究するにおいては、現代まで生き残っている知恵を掘り起こす民俗学の分野との連携も必要だと思う。


前置きはこのくらいで本題だが、この展示会は「マチュピチュ"発見"100周年」ということになっている。
発見とはいうが、たんにスペイン人の侵略者たちが山の上の街に気づいていなかったから忘れ去られただけ。発見者のビンガムは、クスコまでいって近所の人に「なんか遺跡ない?」と聞いてマチュピチュに案内してもらったというから、発見というよりも、「世に知られるようになってから」ちょうど100年、と言ったほうがいいのかもしれない。

#エジプトさんでも、このテの「発見」はよくある
#近所の人は、遺跡があるのは昔から知ってたりする

タイトルどおり、天空都市とも言われる高地の遺跡マチュピチュが主題となって話は進むが、展示品自体はわりと広範囲にインカ時代のものが来ていたと思う。周辺地理などの詳しい解説がついた、「インカ史の中でのマチュピチュの位置づけ」のような扱われ方をしていたかと。

それから風景写真などは監修の先生方が自前で撮ってきたものが使われており、ウリとなっている3D映像も普段見られないだろう視点・方角からマチュピチュの遺跡全体を俯瞰させてくれており、そこらの3D映画なんかよりずっと迫力のある仕上がりだったと思う。映像の中に霧が覆う場面があったが、マチュピチュは実際に霧が多く、それが飲水や農業水の確保を容易にしていたとされるため、リアリティがあった。このへんはさすが現地に行き慣れている監修者の手腕というところか。

体験コーナーでは、綿、リャマ、アルパカ毛を実際に触れるということで容赦無くモフモフし、あまりの夢中さに他所様のお子さんに不審がられる始末。リャマとアルパカだとねえ、アルパカさんのほうが柔らかいんだよ毛が…。その毛でもって、高地に暮らす人々の温かい上着が作られていたと。

人がやったらめったらに多いのと、上野という土地柄迷惑な人もそこそこいるということさえ除けば、楽しい展示会だったと思う。うん。まあ。あの、ご高齢者を悪く言うつもりはないんですが、出口がわからないと係員にキレたり、見られないからと目の前の若者グループに大声で毒づいたりするのはチョット恥ずかしいんで、そういう方は朝イチで来て人が増える前に帰るか、雨の平日あたりを狙えばいいんじゃないかな。


カラー版 マチュピチュ―天空の聖殿 (中公新書)
中央公論新社
高野 潤

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by カラー版 マチュピチュ―天空の聖殿 (中公新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


写真が美しく、解説も丁寧なマチュピチュ本。これを見ていると現地に行ってみたくなる。

この記事へのトラックバック