200年前、その言葉の意味を誰も知らなかった ―古代文字の解読履歴を少しおさらい

象形文字ルウィ語の資料を探しているうちに、芋づる式に色々出てきた。

現在、当たり前のように翻訳が出版され、さも昔から知られていることのように言われているオリエントの歴史は、実はここ数百年の間に再構築されたものみたいなんだ。

ヒエログリフの解読は1821年 シャンポリオンによる。
それほぼ同時代に「ヒッタイト」がようやく再発見され、象形文字ルウィ語にいたっては、解読されてからまだ100年も経っていないとか、そんな状態。考古学の発展すげえな、というのもあるし、未だに未解読の遺物が山盛り各地の博物館に眠っているって話も納得したもんです。


というわけで、芋づるで出てきた色々を簡易にまとめてみる。
ただ、あまり細かいとこまで考えてないので、年代と解読した人物名は適当です。だいたいの目安ということで。

【解読の基準】
ここでは、有力説を最初に打ち立てた人、解読の大きなキッカケを作った人を「解読者」として扱う。また、解読に際して論文の発表された年代を記載している。

ただし最初から100%で解読できるわけがないので、最初の人の解読法にはたいてい誤りがあり、別の学者が精査して訂正していくことになる。ある一つの言語を「解読」するというのは、ある日とつぜん意味が分かるようになるようなドラマティックなものではない。

どの時点を持って「解読がなされた」と見なすかが微妙な言語もある。同時に二人の学者が論文を発表して、そのどちらも完璧ではないが部分的に正しかった、など。



・古代ペルシア文字(第一種楔文字) 1802-03年 グローテフェント
 ※ただし当時の学会が認めなかったため、顧みられるまで90年かかった

・エジプト聖刻文字 1821年 シャンポリオン

・キプロス文字 1872年 ジョージ・スミス

・楔型文字ヒッタイト語 1915年 フロズニー

・象形文字ルウィ語 1930年代 メリッジ

・ウガリット語  1930年あたり ハンス・バウアー 他

・エラム文字 1946年 E・ヒンクス

・バビロニア語 1947年 E・ヒンクス、ローリンソン

・クレタ線文字B  1952年 ヴェントリス


#謎 トルコルーネ …つかトルコにルーネあったんだ?
#別途調査


こうして見ると、ヒエログリフの解読はわりと早かったほうじゃないかという気がしてくる。
サンプルが豊富だった、というのが一番大きいんだろうな。線文字Aなんかだと、まず文章になっているサンプルが少なくて、なかなか他の言語との比較が難しいみたいだ。

楔型文字については、解読にたずさわった学者はほぼ同じ。複数言語を同じ楔型文字を用いて記録した石版があり、それぞれの言語について解読していく感じなので、いったん楔型文字の音価が分かってしまえば連鎖的に解読が出来たんだろうと思われる。
音がわかれば、類似言語から何となく意味分かるもんね…。

未知の言語の解読は、ある文字が何の音を意味するのか突き止めるまでが大変。
エジプトのヒエログリフなんかだと、音として使われない文字も混じっているのが解読に手こずった理由やね。意味だけを表す文字、ってのはアルファベットに慣れているヨーロッパ人には理解しづらかったんだろうと思われる。


数百年前のヨーロッパでは聖書記述が歴史扱いされていたのも無理もなく、このへんの文字が解読されていなかった時代には、頼れる一次資料がほとんどない手探り状態からのスタートだったんだな…。



*** いちばん最近に解読されたことになってる線文字Bの本でも紹介してみる

線文字Bの解読 (みすずライブラリー)
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この本もう取り扱われていないのか。。残念。
文字の解読にどんだけ苦労するか、どんな議論が交わされるのかってのが分かる。
答えを知ってるからこそバカにしてしまいそうになるけど、答え知らないで解読するのって大変だと思う。


線文字B―古代地中海の諸文字 (大英博物館双書―失われた文字を読む)
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これはわりと無難系の線文字Bの本。

おいらが高校生くらいの時に読んだどれかの本で、「線文字Aも近いうちに解読される(キリッ」とか書いてあったけれど、解読された話はついぞ聞かないのでどうやらアテが外れたようだ…。学者さんがんばれ。

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