エジプト革命後、エジプトの遺跡が盗掘されまくっててヤバい件/立ち上がるエジプト人考古学者たち
各方面からニュースが流れてきてますが、なんか、お前んとこでも記事にしとけ的な無言の圧力を感じたのでヤットキマス。
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女性エジプト考古学者、Dr. Monica Hannaのインタビューから。
“If we Egyptians don't protect our heritage, who will?”
私たちエジプト人がエジプトの遺産を守らなくて、誰が守るの?
*****
エジプトは2011年の革命によって、それまで独裁を行なってきたムバーラク大統領が失脚しました。
その後、イスラム原理主義よりの「ムスリム同胞団」に属するモルシー氏が大統領に就任、現在に至ります。軍部が早々に大統領を見限ったことで内戦状態にはならず、デモによって独裁を倒したということで美しく「革命」と呼ばれていますが、この政権交代はそうすんなりいったわけではなく、選挙ですったもんだし、大統領が就任した現在も、イスラム原理主義者が国内で幅を利かすことには強い反発があります。つい最近も大統領がエジプト各地の県知事を一方的に任命し、その大半が支持母体のムスリム同胞団だったという状態で、新たな独裁者の出現ではないかなどと批判が噴出。エジプトでは、いまだに政治的な混乱が続いていると言っていいでしょう。
この混乱の中、エジプト国内は治安が急速に悪化し、遺跡泥棒が跋扈する状態になってしまいました。
遺跡の盗掘自体は革命直後から始まっており、発掘用の機材をぬすまれたエジプトの考古学チームに対する支援として、日本人考古学者がWeb上で寄付を募っていたこともあります。
http://archsurv.tumblr.com/post/3703066234
革命後二年が経ち、発掘を再開している考古学チームもあるようですが、この状況は好転していない様子。
※冒頭の写真はこの記事から
http://triblive.com/usworld/world/4198483-74/hanna-heritage-archaeological#axzz2WUk26Fav
・外国人考古学チームは、発掘許可を取り消されるのを恐れて被害を報告するのを嫌う。
・政府の古代遺物検査官は盗掘に関するレポートを無視することがある。
・実際に遺跡に行くと荒れ果てているのに、政府は被害の実態を把握していない
いや、多分だろうなーとは思ってました、だってエジプトさんだもn(
革命デモの最中にカイロ考古学博物館が略奪される事件があって、当時の考古庁の最高責任者だったザヒ・ハワス博士が即座に盗まれたもののリストを公表したんですが、リストに載ってないものまで戻ってきた(そしてリストにある一部は戻って来なかった…)ということがあり。すべての収蔵物を把握してないのは前からわかってたけど、展示してる分すら分かってないのはどうよ、と苦笑した思い出が。
政府に任せても埒が明かん、というわけで、冒頭の「エジプト人自身で守らなきゃ」発言に繋がります。
遺跡の破壊・盗掘に関する情報を集めるサイトを民間で作って、観光客を含む発見者が報告できるようにするプロジェクトが開始されているそうですが、活動の中心人物であるモニカ・ハンナ博士のもとには、匿名の脅迫電話もかかってくるんだとか。
http://archaeology.org/news/1003-130618-egypt-looting-monica-hanna
辿っていくと色々出てきますが、ある遺跡などはミイラが掘り返されて、犬が人間の骨をかじり、子供たちが土器や彩色された棺の破片で遊んでいるというひどい状況に陥っている模様。掘り起こされた骨が地面に散らばるさまは、「まるで大虐殺の跡のようだ」と。
とくに破壊のひどいアブ・シールの遺跡。
場所はココ、カイロから南へ70マイルほど。
ここが遺跡…だったはずの場所ですが、遠目に見ても、掘り起こしまくったのがわかります。
これは確かに大虐殺の跡にしか見えない。
黄金の副葬品やアクセサリーを剥ぎ取ったあと捨てられたミイラの腕。
ですが、以下の文章もまた真実。
今年のエジプトの夏はすさまじく暑くて、3日に一度は40度を越えてるらしいです。なので電気を使いまくってて停電の発生率も上がっているんだとか。
で、車検制度もないので日中にオーバーヒートしたポンコツ車が道路を塞いで大渋滞になるとか、車のクーラーが意味を成さないくらい暑いとか、そんな話がカイロ在住の日本人から流れてきてます。
シナイ半島の石油パイプラインはやたらと爆破されるし、食糧費の高騰は革命前から深刻だったしetc.
日々を生きるのも大変なのに遺跡とか将来のこととか考えてらんねーよ! ってのもまた真理。
ただ、そんな中、エジプト人自身の手でなんとかしたい、とハンナ博士が立ち上がったのは、希望の持てることだと思います。
あと、ちょっと気になったのが↓で…
・・・日本に盗品買うようなコレクターって、いるんだ?
いや、アメリカヨーロッパ中東はわかるんだけどさ。日本…日本人でエジプトコレクターって…。サザビーズとかのオクで買ってるのもカウントされてるんだろうか?
まあさ、今はエジプトに置いとくより日本にあったほうが紛失の可能性は低いだろうけど、盗品の売買を是認するわけにもいかんし、難しいところだなあと思う次第。
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外務省の公式サイトでは、シナイ半島での外国人誘拐事件くらいしか広報されていませんが、エジプト在住の日本人のもとには、日本人が巻き込まれた強盗事件に関する注意喚起メールが回っているそうです。(最近だと、道で携帯電話を奪われそうになったので抵抗してナイフで刺された、など)
観光客が減ったことで失業率が上がり、生活に困窮した人々の犯罪が凶悪化しており、カイロのような都会でも治安が悪化しているとの情報がありますので、エジプト旅行に行く方はくれぐれもご注意を。
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女性エジプト考古学者、Dr. Monica Hannaのインタビューから。
“If we Egyptians don't protect our heritage, who will?”
私たちエジプト人がエジプトの遺産を守らなくて、誰が守るの?
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エジプトは2011年の革命によって、それまで独裁を行なってきたムバーラク大統領が失脚しました。
その後、イスラム原理主義よりの「ムスリム同胞団」に属するモルシー氏が大統領に就任、現在に至ります。軍部が早々に大統領を見限ったことで内戦状態にはならず、デモによって独裁を倒したということで美しく「革命」と呼ばれていますが、この政権交代はそうすんなりいったわけではなく、選挙ですったもんだし、大統領が就任した現在も、イスラム原理主義者が国内で幅を利かすことには強い反発があります。つい最近も大統領がエジプト各地の県知事を一方的に任命し、その大半が支持母体のムスリム同胞団だったという状態で、新たな独裁者の出現ではないかなどと批判が噴出。エジプトでは、いまだに政治的な混乱が続いていると言っていいでしょう。
この混乱の中、エジプト国内は治安が急速に悪化し、遺跡泥棒が跋扈する状態になってしまいました。
遺跡の盗掘自体は革命直後から始まっており、発掘用の機材をぬすまれたエジプトの考古学チームに対する支援として、日本人考古学者がWeb上で寄付を募っていたこともあります。
http://archsurv.tumblr.com/post/3703066234
革命後二年が経ち、発掘を再開している考古学チームもあるようですが、この状況は好転していない様子。
※冒頭の写真はこの記事から
http://triblive.com/usworld/world/4198483-74/hanna-heritage-archaeological#axzz2WUk26Fav
・外国人考古学チームは、発掘許可を取り消されるのを恐れて被害を報告するのを嫌う。
・政府の古代遺物検査官は盗掘に関するレポートを無視することがある。
・実際に遺跡に行くと荒れ果てているのに、政府は被害の実態を把握していない
いや、多分だろうなーとは思ってました、だってエジプトさんだもn(
革命デモの最中にカイロ考古学博物館が略奪される事件があって、当時の考古庁の最高責任者だったザヒ・ハワス博士が即座に盗まれたもののリストを公表したんですが、リストに載ってないものまで戻ってきた(そしてリストにある一部は戻って来なかった…)ということがあり。すべての収蔵物を把握してないのは前からわかってたけど、展示してる分すら分かってないのはどうよ、と苦笑した思い出が。
政府に任せても埒が明かん、というわけで、冒頭の「エジプト人自身で守らなきゃ」発言に繋がります。
遺跡の破壊・盗掘に関する情報を集めるサイトを民間で作って、観光客を含む発見者が報告できるようにするプロジェクトが開始されているそうですが、活動の中心人物であるモニカ・ハンナ博士のもとには、匿名の脅迫電話もかかってくるんだとか。
http://archaeology.org/news/1003-130618-egypt-looting-monica-hanna
辿っていくと色々出てきますが、ある遺跡などはミイラが掘り返されて、犬が人間の骨をかじり、子供たちが土器や彩色された棺の破片で遊んでいるというひどい状況に陥っている模様。掘り起こされた骨が地面に散らばるさまは、「まるで大虐殺の跡のようだ」と。
とくに破壊のひどいアブ・シールの遺跡。
場所はココ、カイロから南へ70マイルほど。
ここが遺跡…だったはずの場所ですが、遠目に見ても、掘り起こしまくったのがわかります。
これは確かに大虐殺の跡にしか見えない。
黄金の副葬品やアクセサリーを剥ぎ取ったあと捨てられたミイラの腕。
ですが、以下の文章もまた真実。
Meanwhile, the threatened heritage is a low priority for many Egyptians beset by daily electrical outages, fuel shortages, higher food prices, rising street crime and political instability.
一方、脅されている遺産は、毎日の停電、燃料不足、食料品価格の高騰、路上犯罪率の上昇と政治的不安に悩まされる多くのエジプト人にとって優先度の低い事項である。
今年のエジプトの夏はすさまじく暑くて、3日に一度は40度を越えてるらしいです。なので電気を使いまくってて停電の発生率も上がっているんだとか。
で、車検制度もないので日中にオーバーヒートしたポンコツ車が道路を塞いで大渋滞になるとか、車のクーラーが意味を成さないくらい暑いとか、そんな話がカイロ在住の日本人から流れてきてます。
シナイ半島の石油パイプラインはやたらと爆破されるし、食糧費の高騰は革命前から深刻だったしetc.
日々を生きるのも大変なのに遺跡とか将来のこととか考えてらんねーよ! ってのもまた真理。
ただ、そんな中、エジプト人自身の手でなんとかしたい、とハンナ博士が立ち上がったのは、希望の持てることだと思います。
あと、ちょっと気になったのが↓で…
For others, that heritage is a chance to cash in. Looted objects are sold in dirt-poor villages near sites such as Abu Sir al Malaq; others go to wealthy collectors, particularly in the United States, Europe, Japan and the Middle East, experts say.
盗掘された遺産は、このアブ・シールの近くにあるような極貧の村にとっては、換金できる可能性を秘めた品である。売り払われた品の多くはアメリカ合衆国やヨーロッパ、日本と中東の裕福なコレクターのもとへ行くと、専門家は言います。
・・・日本に盗品買うようなコレクターって、いるんだ?
いや、アメリカヨーロッパ中東はわかるんだけどさ。日本…日本人でエジプトコレクターって…。サザビーズとかのオクで買ってるのもカウントされてるんだろうか?
まあさ、今はエジプトに置いとくより日本にあったほうが紛失の可能性は低いだろうけど、盗品の売買を是認するわけにもいかんし、難しいところだなあと思う次第。
****
外務省の公式サイトでは、シナイ半島での外国人誘拐事件くらいしか広報されていませんが、エジプト在住の日本人のもとには、日本人が巻き込まれた強盗事件に関する注意喚起メールが回っているそうです。(最近だと、道で携帯電話を奪われそうになったので抵抗してナイフで刺された、など)
観光客が減ったことで失業率が上がり、生活に困窮した人々の犯罪が凶悪化しており、カイロのような都会でも治安が悪化しているとの情報がありますので、エジプト旅行に行く方はくれぐれもご注意を。