山で本当にあったxxな出来事。

梅雨に突入してしまい、週末休みがとれても山にいけない、そんな中の人ですよ。

いや一応雨具とかも装備はあるんだけどさ。景色見えないしさ。寒いしさ。濡れながらバス停でぽつんと帰りのバスを待ってたりすると「トトロとかこねーかなー」なんて遠い世界に行っちゃうしさ。

やっぱりお山は晴れか薄曇りくらいの時がいい。


そんなフラストレーションの貯まる季節、ふと思い出したので山であったちょっと不思議な? 出来事の話でもしてみようと思う。

不思議な話というか、一歩間違うと怪談話なんだが。

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◆◆◆

登山口のバス停というのは、だいたい、一日に数本しかないのが普通で、朝の登り始めの時間と、下山してくる帰りの時間帯くらいしかバスが来ない。帰りの時間に遅れると、自力で車道を歩いて麓の集落にあるバス停にたどり着かないと帰れないわけだが、麓まで徒歩一時間、とかいうことも、よくある。

なのでバスに遅れないように、前もって歩行時間を見積もってコースを組むのだが、余裕を持ちすぎて時間が余ったことがあった。

早めに着いたバス停で、のんびりとおやつなどを食べつつバスを待つ。
その時はシーズンも終わりに近づいて日暮れが早く、最終バスを前にして日は傾いている。待ってるのは自分一人。

まもなくバスが来ようかという時になって、小走りに初老の男の人がバス停にやってきた。

「バスはまだですか」
「そろそろだと思いますよ。」

聞かれて答える。男の人は、安堵した様子で腰に手を当てつつ、「ああ、やっと間に合いました…」と呟いて、どこかへ消えてしまった。バス停のそばにはトイレがあるので、てっきりそこへいったんだろうなと思いながらベンチでぼーっとしていた。

やがて、バスが山道を登ってきた。その日の最終バスである。
ドアが開いたので乗り込みながら振り返るが、さっきの男の人がついてこない。

「さっきまで、もうひとりいたんですけどね…」
「え? これに乗らないと大変ですよ」

しかしトイレのほうに気配はなく、周囲の草木の間には、濃い影が落ちるばかりで誰もいない。
五分ほど待ってから、バスは扉を閉めて発車する。乗客は自分一人。それから麓の国道に合流するまで、山道に人影は見当たらず、バスを呼び止める人もいなかった…。


◆◆◆


ある山で、池のある縦走コースを通っていた。

途中がけ崩れがあり、遠回りしたのでちょっと予定が押していて急ぎ足。池から最寄りのバス停まで1時間弱といったところ。走らないと間に合わない。

その池はコポコポと音が聞こえるほど水が湧いていて、普段なら気持ちよく休憩ところなのだが、その日は時間が押している上に雨が振りそうで空が曇ってきている。しかも秋口で、風が冷たい。

そんな池のほとりに、ふとみると、中年夫婦が黙って座っている。見間違いではない。草むらに直に、膝を抱えて並んで水面を眺めている。何してるんだろう、バスに乗らないのかな? ていうか登山客にも見えないけど、どっかにテント置いてるのかなあ…

などと思いつつ、声をかけているヒマもないので小走りにその場を通り過ぎた。


結局、バスにはギリギリ間に合った。息を切らせながら乗り込んだとき、曇天の合間からは既に小雨が降り出していた。

雨が降ると、山の気温は急激に下がる。たとえ夏でもセーターが必要になることがある。
あの夫婦は秋口の雨の山で一泊する装備を持っていたのか、なぜあんなに池を見つめていたのか、今も不思議でならない。

◆◆◆


すこし靄がかかっていた。

その時通っていたコースはロープウェイで登れる山も途中にあるような有名なコースで、ひとつひとつの山は大した高さではないが、とにかくアップダウンが多くて道が長い。ロープウェイでやってきて、ついでに山道も…と、ナメてかかってケガをする人も後を絶たない。

そんなコースに、事故の多い単独登山でぷらっと行っちゃう私もだいぶアレな感じなのだが、まあそこはそれ。登山装備に地図を持って、道を間違えないように気をつけながら歩いていた。

その日は人が少なくて、歩き始めてしばらくの間は、誰とも合わず、人の気配もしなかった。
だが、いくつかのピークを越え、靄がかかりはじめたあたりで、どうやら誰かに追いついたらしく、行く手に黒い背中が見え隠れしはじめた。靄でよく見えないが、たぶん成人男性の一人パーティーだろうと思った。追いつくことはなく、見え隠れする黒い背中をずっと追いかけている。

そのまましばらく歩き続け、やがて昼前になっていた。太陽が高く登って靄が薄れてきた頃、休憩予定のピークに到着。そこでは、先に来ていた女性数人のパーティーが昼食をとっていた。

だが、ここまで自分が追いかけてきたはずの人の姿はない…

自分も昼食を広げながら、次の山へと続く急斜面を見下ろしてみたが、そこを歩いているわけでもない。


あの時見ていた背中は、一人で靄の中を歩き続けたせいで見えてしまった幻のようなものだったのか、それとも地図にはない横道があって、あの人は途中から別の道を行ったのか。

ちなみにその山は道のあちこちに地蔵さんが立っている、わりといわくつきの山系だったりするのだが(古いものだとゼロ戦が墜落したとかいう慰霊碑もある)、心霊話はとんと聞かないので、たぶん気のせいだったと思うことにしている。


◆◆◆


と、…わりとあるな。思い出してみると。

一人でシーズンオフの山とか行ってると、わりとこういう出来事がある。もう日が暮れようという峠に一人腰掛けていたおじいさんとか、あれからどうなったんだろう。「行かないとバス出ちゃいますよ」「ああ、あとで行きます。ちょっと休んでから…」みたいな会話をして、それっきりバス停に来なかったり。遭難のニュースは出てなかったから無事に下山出来たんだろうけど。

自分は幽霊とかあんま信じてないほうなので、こうした話に登場するものはすべて生きた人間か勘違いだと思っているのだけれど、逆に幽霊と出くわしてても全く気が付かないという自信はある。

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