恋女房ならぬ鯉女房。助けた魚が嫁になる

なんとなく読んでいた神話の本で、「助けた魚が嫁になる」というモチーフが日本全国にあるらしい、ということを読んだのでメモがわりに。

助けた鶴が人間の女に化けて恩返しにやってくる…とか、獣の恩返し系の神話はたくさんあるが、魚介類もアリだとは。しかも嫁。子供が生まれることもある。

新潟市、長岡市に伝わる伝説だそうだ。

かつて命を助けてもらった鯛が男のところへ嫁となってやってきた。作った汁の味が不思議とうまいので、その秘訣は何であろうかと、亭主が物陰から覗いてみると、女房がすり鉢で味噌をすってから、着物の裾をまくってすり鉢にまたがり、小便を注ぎかけていた。男はこれを見て腹を立てる。女はその本性を見破られたので、恩返しに嫁にきたのだと語って、泣く泣く帰っていった。



隠し味は小便。尻から食べ物を出すオオゲツヒメという神様も日本神話にはいたりするから、尻から隠し味が出てくるのも以外とアリかもしれない。それに、正体が鯛だとすると鯛出汁なので、確かに美味いかもしれない。

どこかコミカルな話である。

しかしびっくりするのは、「田螺(たにし)」や「蛤(はまぐり)」まで嫁になるというのだ。「蛤女房」や「田螺女房」というわけ。いずれも夫が禁を破って嫁の正体を見てしまい、嫁が帰って行ってしまうという展開なので「異族婚姻譚」という分類になるらしいが、いやいやいや、タニシとか。貝とか。どうやって擬人化(美人嫁)すればいいのか。

同様のモチーフは朝鮮半島や中国にもあるそうなので、渡来してきた伝説なのだろう。日本人がとくべつ頭おかしいわけではなさそうだ。


…しかし、古来より擬人化といえば美人な若い女なのだな、元のモノが何であれ、男に化ける話はないんだな…
などと、意味もなくシミジミと思ってみる次第。


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余談ですが、…
こういう伝承ってだいたい文字で書かれてるのが研究対象なので、文字を書ける率の高かった男性文化だけが現在までのこってるんだと思ってます。きっと女性原作の擬人化(イケメンVer)も、どこかにあると信じたい。

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