月の綺麗な季節になりました。というわけでエジプト神話の月の神様の話でもしようか

「最近エジプト成分が少ない」と知人に言われたのでやっとくよ!


エジプト神話で「月の神」といえば、たぶん一番有名なのは、学問の神様でもあるトト神。
新年明けてから第一の月は「ジェフティ」月と呼ばれ、つまりトト神の名前がつけられていて、トト神をまつる大祭もあったという。

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古代エジプトの一年はナイルの氾濫シーズンから始まるので、古代のジェフティ月は7月半ば~8月半ば(推定)。古代エジプト歴を引き継いでいる現代のコプト教が使う「コプト歴」では9月半ば~10月半ば。

というわけで、現代で言うところの「ジェフティ」月=月神の月 は まさにいま。 ジャストナウ。中秋の名月とともにトト神を祭っても全然オッケー! むしろドンと来い。テストで良い点をとりたい貴方、字が上手くなりたい貴方も、今宵はトト神にパンとビールを祀ってみないか。きっといいことがあると思うの。



さて、月の神様は一柱ではない。

もう一柱の有名どころがコンス神。月の化身、とされる。「横切るもの」「さまよい歩くもの」という別名が、古代エジプト人が月に対して抱いていたイメージを端的に表していると思う。
頭の上に三日月を載せたミイラの姿で描かれる神様で、新生児の守護者とされる。また、魔除けの神としても信仰されていたようだ。
誕生を守護する神でもあり、コンスの象徴は胎盤を形式化した円盤。


もう一柱、あんまり目立たないが月神として重要なのがイアフという神様。
時代が進むにつれて、月神としての役割はトトとコンスに奪われ、目立たなくなってしまうが、「月」という単語にもなっているので、元祖「月の神」といえば、たぶんこの神様だったんだと思われる。

この三柱が主な「月の神」だろうと思う。
古代エジプトの月の神は、いずれも男性だ。ちなみに日本も月の神は男性だが、太陽が女性。


太陽と月が男性と女性の組み合わせになっている神話は多いが、エジプト神話では両方とも男性ー男性になっている。面白いことに、太陽を象徴する「女神」はいるが(セクメト女神やハトホル女神など)、月を象徴する「女神」は、エジプト神話だと見当たらない。冥界神は夜=月が属性の一部となることが多いので、マイナーどころまで広げていけば何処かにいるのかもしれないが…。

エジプト神話では、月は太陽の裏返し、対になるものと考えられていたようだ。
「銀の太陽」とも呼ばれ、昼間、太陽が辿った空の航路を、夜に通る船とされる。
太陽の船に乗るのが男性だから、その裏返しである月の船も男性が乗っていると考えたのではないかなー、と私はなんとなく思っている。

古代エジプトに、名月を見るような行事があったかどうかは定かではない。
が、世界のどこにいたって美しい月は人の心をうつものだ。

ふと風の止んだ夜、あるいた乾いた砂漠から見上げた澄んだ空に、しらじらと輝く月を見つけたら、古代エジプト人だってきっと眺めて時を過ごしたに違いない。

そんなことを思いながら、今宵はベランダで夜風に吹かれながら、月の航路を辿ってみませんか。



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「xxの名前」シリーズ、月の名前。
月にもいろんな呼び方、名前があるんだと知って、ウンチクと同時に中二病的なネタも仕入れられます、たぶん。

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高橋順子

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