豊富なイラストがイメージをそそる…「英国執事の世界」

姉妹品のメイドの本はいまひとつ食指が動かなかったが、こっちの執事本が気が付いたら手にとってました。
うむ、確かに「英国執事」という言葉のイメージの呪縛にはすさまじいものがあるぜ(笑)



執事やメイドの原型は、12-13世紀あたりの騎士文学に既に登場している。アーサー王伝説に登場するケイ卿なんかも、その系譜の源流の一つだろうし。(この編に従えば、「執事」というより「従者」なのだが…)
確かに最初は上流階級の子供たちが行儀作法を習い結婚相手を見つけるための場であったんだなあ、と思う。そこから、純粋な仕事としての従僕へと変化していって、18世紀、19世紀あたりには今の我々が想像するような執事やメイドといった労働者たちになる。

アメリカは階級社会だと言われるけれど、そもそもイギリスからして大概な階級社会なわけで、上流階級の「紳士、淑女」と、中流・下流の下々の人たちの間には決して越えられない、越えてはならない壁がある。
使用人用の入り口が別に設けられていたという話や、主人と使用人は決して一緒に食事をとってはならなかったこと、建物の構造からして主人の区画と使用人の区画は別にされており、主人が使用人の区画に立ち入ることはめったになかった、など、なるほどなと思うとともに、某マンガはだいぶ無茶をしたんだということがよくわかった(笑)

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あとこのマンガ、忠実に描いてたんだなー…と。

執事の本だけど、ハウスメイドとレディースメイドの差とかも出てきます。ページボーイとフットマンとボーイと執事の違いとか。上流階級のお宅には色んな階級の使用人がいて、それぞれの立場の差や仕事の分担に従って動いていたようだ。

本の中にはお給料の目安なども出てきて、年間いくら払えば執事が雇えるのかとか、チップなどによる臨時収入がどのように手に入るかなどが書かれていた。意外にも一番の高級とりは男性コック。確かにコックも専門職。執事もお給料はよいが拘束時間が長く、銀器磨きなどの辛い業務も抱えていたようだ。

また、執事は結婚すると辞め無くてはならないこともあり、結婚はキャリアにとってマイナスになるというのは驚いた。泊まり込みでほぼ一日中働き、妻帯していても家族の存在は見えないものとして扱わねばならず、主人のために人生を捧げることを期待された存在。なんというキツい職業。ちょっとびっくり。
それでも鉱夫や農夫をやるより肉体的に楽と言われると、確かにそうなんだけど。

ただ執事のほうも、キャリアを積むために色んな家を転々とする存在であったようで、フットマンなどの下級職から執事まで上がり詰めれば、主人である紳士たちと同等に近い扱いを受けられる特権を持っていたようだ。
執事の転職についての件は、現代のホテルマンとよく似ている。優秀なホテルマンも、口利きやコネでより上位のホテルに転職を繰り返していくと聞いたことがある。貴族の家に仕える「執事」は絶滅したけど、高級ホテルのホテルマンとしての執事は、確かに現代にも生き残っている。

その意味では、現代日本の「執事喫茶」に元ホテルマンいが執事役で出てくるっていうのは、ある意味正しいことなんだと思いました(笑)  メイドのほうが雇うのが安いが、熟練した男性スタッフは高くつくので上流階級でも簡単に雇えないというのは納得。安っぽいメイド喫茶は多くても、執事喫茶は数が少ないんだよねー。

#執事喫茶は普通に楽しいです。お茶会したい。

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