ネタ成分を求めて。「第21回西アジア発掘調査報告会」に潜入してみた。

参加じゃないのですよ潜入なのですよ。
何しろ学者でもなきゃ友の会会員でもない一般人なので!

というわけで、前々から気になってたけど遠いわ年度末の繁忙期にぶち当たってるわで毎年気がついたら終わってるコレに、今回は念願の一般参加紛れ込み成功っ。

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第21回西アジア発掘調査報告会 ―2013年度発掘調査の速報―
http://jswaa.org/jswaa/21-houkokukai.pdf

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トルコの遺跡のいくつかがダム建設で沈む、というニュースが流れていてですね。
http://mainichi.jp/feature/nationalgeo/archive/2014/02/24/ngeo20140224003.html

その沈む遺跡の一つハッサンケイフ・ホユックを日本の調査隊が掘ってるので、その情報を探していたらその調査報告会に出るってことが分かり、行ってやろうと思ってた…んですが・・・

 参加したのが二日目のエジプトの日で、トルコは初日だったというオチが。

ちょおまええええ! …いやまあ池袋まで二日連チャンで行くのどのみち無理なんで、エジプトだけでもしょうがないんですけど。資料はもらえたし、どんまい俺。

この会は、「最新の調査報告」というだけあって、現在発掘中の遺跡の話を、掘ってる先生自らが30分ずつくらい報告していく場でした。「報告書がまだ出来てません。」「報告書できる前に新聞に掲載されました。」とか言ってる先生もいましたね(笑)

まあ参加はしたんですが、ぶっちゃけ、この報告会が何ターゲットの会なのかは今もイマイチよく分かってません。来てた客層からして業界人メインだったので、おそらく考古学会内の同業者のヨコの繋がりで懇親会も兼ねてお互いやってることを報告しあう、みたいな、身内的な会なのだろーと思います。(その意味でも私が紛れ込むことは、外部者の"潜入"である…) 

ただ学生らしき人がほとんどいなくて、ご年配の学者さんばっかりでした。研究者も、若手はあんまりいない感じ。隅っこで熱心にメモとってた人はたぶん院生だろうなーと思ったけど。いい顔つきでした、何年か後に本とかテレビとかで名前出てくるタイプだなアレは。

一般人と思われるのは、他のイベント同様に引退されたご高齢者大目。会のはじまるだいぶ前から前列陣取って、お菓子とお茶広げちゃってたりするタイプの(笑) 友の会の人かもしれない。
あとエジプトのターンだけ聞いてサッと会場出て行く人も多かったかな…。
エジプトはなんだかんだで一般人とっつきやすいですもんね。ぶっちゃけキルギスとか私も知りません。今回はじめて聞いて、ほーそうなんだーと思ったくらい。30分だけだとまったく予備知識なしの人には、何がなにやら分からんだろうし、ある程度知ってて興味ある人むけの場なので、ズブの素人は紛れ込んでもたぶんあんまり面白くないかもしれない。

あと、発表されている現場はおそらく代表的なものだけで、他にもあるけど「お披露目」的な意味合いで発表してるんだろうな、と思ったり。



と、こんな感じで雰囲気っちゅーのは実際に現場に紛れ込んでみないとわかんないです。
意外と…紛れ込めてたんじゃないかな… 意外と…。うん、あんまりアウェイ感はなかった。

で、IT系の同じような場と違って面白いと思ったのは、「役に立つか立たないか」「モノにできるか出来ないか」をギラギラ感が薄いということ。IT系の技術発表会とかフォーラムとか、どーしても利益が絡むからね。この技術は客に提案して儲けになるのか?! とか、このストリームはこれから主流になっていくのか、コストをかけて勉強して損しないか?! とか、メモとりながら真剣に天秤にかけてる人は、たぶんいない。別ジャンルであっても考古学はお仕事の範疇のはずなんだけど、モノが学問だけに、「仕事」とか「報告会」の意味あいが違うんだろうなーとか。

まあIT系の会は、マジになってナンボなところもありますが(笑)

クラウドとか流行りだしたときのITフォーラムに参加した同業者の皆さんの「ここで習得しないと食いっぱぐれる」感はまさに必死乙でした。ええ私もその一人ですが何か。ナツカシイナー



というわけで、二日目報告会でちぇきってきた、どうでもいい話とか。
(書いてない報告者の時は、となりのオリエント博物館を見に行ってました。。。)

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・アラビア半島内陸部の地形発達と人類史

比較的若い先生による発表とあり、GPSの図なんかも出てきてイマドキ風の考古学ってかんじの発表。出てきた石器の年代を決めるのが難しいという話から、なるほどこうやって石器の時代特定してたのかーと分かったこともあり。人類の出エジプトコースについての言及は、ちょうど調べてたとこなので今度ついでにやっとく。

・エジプト ヒエラコンポリス遺跡HK11C

エジプト最古のネコの骨が出たHK6の斜め向かい。なんというタイムリーさ。
エジプト人6人くらいとこぢんまりとやってる発掘現場らしいけど、私はこういう生活観あふれる遺跡が好きなので是非頑張ってほしいなー。先王朝時代の土臭い感じが好みなのだ。遺跡から出てきた魚の骨はマジメに分類したのかなあれ、大変そうだな魚の骨…。

・ウセルハト墓(TT.47)

記録されたっきり行方不明になってた墓を探すところからスタート、っていうのがてかにもエジプトらしい。大学業務との兼ね合いの苦労とか話されてて相変わらずという感じ。新聞にも出たウセルハト墓のニュースだけど、本当の発表は1/5の予定だったらしい。1/3のお正月にエジプト考古庁が発表したのは、ちょうどカイロで大規模なデモがあり、ネガティブなニュースをポジティヴなニュースで上書きしようとした意図があったんじゃないかとか。エジプトさんらしいやり方である。

・ユーラシア古代遊牧民

発表になれてない若手研究者が頑張りました的な感じ。新入社員の発表会を見てるときのような気分になった(笑) もうちょっと自信もってもいいんじゃよ…。最古かもしれない土器。シリアが内戦に突入してフィールドがなくなりました、ってのは切ない。

・キルギス共和国チュー河流域の考古調査

キルギスと日本の大学の間に交流があったとか知らなかったよ。地元の友人Fさんが大好きそうな西遊記ネタ。唐が引き上げたあとイスラム国家になっていく町の遺跡の発掘調査、ローマなきあとのブリテン島みたいで面白い。今のウイグルなんかもそうだけど、中央アジアがイスラームになっていった契機はあまり知らない部分なので、今度ここも調べておこう。あと発表者が花粉症でつらそうでした。直前までレッドブル飲んでたの見てしまい…。

・アッシリア・コロニー時代の交易ルート

フイールド調査はひたすら歩くしかないんだなーと思った。トルコ広い。住宅地が密集してる日本では出来ないよね…この手法…。近所の村人に聞いて遺跡探しに行ってるのがヒッタイト発見の時のエピソードっぽかった。今もそんな状態なのね。ロバート・マック・アダムスって誰だっけ。どっかで聞いたような聞かないよーな。発見物の分析が、まさかのクズル・ウルマックに繋がる。面白そうだけどアッシリア時代がいまいち分からない。今度調べよう。

・アラビア湾の港町

先生www 引退してヒマだから発掘てwww 先生ww
でも「発掘楽しいからもやめようと思ってやめられないんですよねー」って…ああうん。なんかものすごくまったりした発表。時間余ってたし。なにが一番驚いたかって、アラブ首長国連邦なんて日本の考古学者掘らせてもらえるんだ。ってことと、工夫がインド人だったってことだよ。インド人…オマーンやドバイにも出稼ぎにいってるよね。港町を処女地まで掘り下げての調査、海沿いなので海水が滲み出して大変だったらしい。

・ローマ時代の下ガリラヤ

ガリラヤって掘らせてもらえるんだ。聖書関連のとこはイスラエルの大学の専売特許かと思ってた。
じつはマイクの音声小さめでよく聞こえなかった。考古学から見た聖書の世界? だったか、本の宣伝をされていたのは分かった…。

・ワディ・タワヒーン

これも、エルサレム見えるようなとこで日本人が発掘させてもらえるんだ、ってのにびっくり。現地の大学との連名でもないし。あとパレスチナ砲撃しまくってるイスラエルが平和ってのがちょっと違和感。「遺跡の時代としては第二神殿時代なんですけど、発掘を手伝ってくれてるパレスチナ人の前ではその名前はちょっと言えないですねえ…」ああ、うん。デスヨネ。

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以上ざっくり。
「あとで調べる」が山盛りすぎて、あーうーどうしようーって感じなんすけどね。

ネタを仕入れに出向いているという意味ではIT系のフォーラムとかわんないので、結局ネタになりそうな「あとで調べる」ものばかりメモって帰ってきた私です。人に教えられるんじゃなく自分でモノにしていく気がないと前には進めない。

むこう三ヶ月ぶんくらいのネタは仕入れられたので、ぼちぼち調べていきますかね。

あと予想外にマッチョ系の先生がいたのが。考古学者ってヒョロっとしたメガネのおじさんか、恰幅のいい丸っこい先生が多いと思ってた、たたき上げの先生はガテン系なんだな成るほどねとかどーでもいいことを思っt

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