中東情勢 ―イシス様が攻めてくるぞぅ

今月の初め、イラクの首都に近い重要都市モースル陥落したことから急激にニュースへの露出が増え始めた過激派集団、通称「イスラム国家」。その略称が「ISIS」(イシス)であることから「! イシス女神キター」とか食いついたのが私ですよ。

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はいそこ不謹慎とか言わない。何でもいいんですよ興味のキッカケなんて。 いいですか、この世の事象には「エジプトに関連する」「関連しない」の二つがある。こじつけでもいい、前者に入れられた事項だけが私の中で重要なのですよ! やらぬ善よりやる偽善という言葉もございます。斜に構えた無関心より不謹慎でも関心を持て、人に言われたことを鵜呑みにするより間違っていても自分で調べろ。

というわけで早速 本屋で立ち読みしつつクーラーに当たr 新聞捜したりネット記事読んだりして仕入れてみました。




ちなみにニュースによって略称が「ISIS」「ISIL」と安定しませんが、これは「イラクとシャームのイスラーム国家」という名称の「シャーム」をそのまま訳すか、シリアあるいはレバノンに置き換えるかの違いのようです。

"シャームとは、東地中海沿岸地域を指し、シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを含む地域を意味して使われることがある用語" (中東調査会の資料 http://www.meij.or.jp/members/kawaraban/20140107101100000000.pdf)だそうです。


 「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」
 「イラクとシリアのイスラーム国家(ISIS)」
 「イラク・レバントのイスラム国共同 (ISIL)」

名称の違いの問題(NAVERまとめ)
http://matome.naver.jp/odai/2140272484508080601

英語にはない単語なので訳語がブレてるようなのですが、無理に「シャーム」を訳さなくてもいい気がするので、ここでは「ISIS」で統一することにします。ていうかそうじゃないと怖さが伝わってこないし。イシス様まじ怖い。勝てる気がしない。



ちなみに先ほどリンクを張った中東調査会の資料の日付は2014年1月。
歴史事件というのはある日とつぜん起こるのではなく、水面下で予兆となる出来事が積み重ねられていくものだとはよく言われますが、まさに今回のがそれだと思う。ただ中東情勢をウォッチしていた詳しい人たちですら今回の出来事は青天の霹靂だったと言ってる人が少なくないので、「まさかここまでしてくるとは」という感じなんでしょうか。今回のISISはここ最近で急速に力をつけてきているようです。

NAVERのまとめは内容はつぎはぎでイマイチ重要なところが抜けてるようなのですが、大筋はだいたい分ります。今回暴れている「ISIS」は、実は昔から存在しる歴史の長い組織で、いったん地下にもぐっていたのが最近また表に出てきたもののようです。

この組織、最近まではシリア内戦に便乗して介入して暴れまくってました。仲間(?)の過激派からもマジキチ扱いされるくらい民間人を殺しまくっているやばげなところ。
しかも、一時期はアサド政権と停戦して、一緒になって他のアルカイダ系の組織をぶっ潰してたりしたようです。
国際ニュースに出てくるまでには、シリアとイラクの国境を挟んだ地域を既に掌握しており、一気にイラク首都近くまで攻め込むお膳立ては整っていたということ。




ここで重要なポイントが、この組織がやりたいことはイスラム原理主義っていうより少数派シーア派を無くしてスンニ派で統一しちゃいたい ってことみたいだという話。

イスラムにはスンニ派とシーア派があり、シーア派は中東ではイラン、イラク、レバノン、アゼルバイジャンでとくに多く、残りの中東国ではスンニ派が多いのでシーア派はイスラムの中でも少数派です。これらの少数派をぶっ潰すべく戦っているのが「ISIS」と見ることができるのではないかと。民間人を虐殺してるのも、シーア派を認めていないからとすれば意味はわかりますね。理解は出来ませんが。

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なので、この組織の活動はシリアやイラクといった「国」には縛られません。シーア派の多い「地域」(シャーム)が対象です。国境を越えて活動する組織かつシーア派は皆殺しだァーヒャッハアーなので、イラクの隣である程度のシーア派人口を擁するクウェートも危機感を持っているようです。

ちなみにエジプトもファーティマ朝時代はシーア派だったんすけどね。シーア派期待の星とか言われてた時代が…。今は多数がスンニ派です。
なおエジプトでは、「アラブの春」以降、国内でシーア派が活動を広げていると危機感を持っていて、コプト教徒といっしょにシーア派も弾圧したりしてました。なのでエジプトまで飛び火してくることは恐らくあまりないのでしょうが…



毎日人が死にまくっている反面、中東の内戦には現在、ヨーロッパからも多数の戦闘員が補充されているようです。ちょっと前に流れてたニュースでは、こんなのが。

・フランスから若者が渡航
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3490_all.html

このニュースではISISは「イラクとシリアのイスラム国」と翻訳されていて、アルカイダが設立したことになっています。(本当はもっと複雑で、その後はアルカイダとも干戈を交えているみたいなんですが。)

・シリア内戦に英国人300人参加か
http://www.afpbb.com/articles/-/3003781

ここに出てくるアルヌスラ戦線はISISから分離したといわれている組織なので、おそらくISISにも欧州から来た若者が戦闘員として参加しているんじゃないかな…。


これらの若者たちが帰国して、ボストンマラソンの事件と同じように自国内でテロを起こすんじゃないか、というのが現在のヨーロッパ諸国のもっぱらの懸念事項となっているようです。その懸念がいつか現実のものになる日が来ないことを祈りたいですが… が…。



誰かがカネを出し、兵器とイデオロギーを与え、そこに失業しカネもなく世の中に絶望した若者たちがやってくる。これじゃ戦争は終わりません。数十年たち、若者たちがいずれ年老いれば本人は空しさに気がつくかもしれませんが、後からやってくる若者たちにそれは多分伝わらない。

中東戦争と違うところは、国vs国ではなく 国vs国に匹敵する軍事力を持った組織 というところでしょうが、ここにアメリカやロシアや中国が加担すると、代理戦争という意味では中東戦争と同じ構図になるような気がしなくもない。「内戦」とはいえ、国が分裂するだけでは終わらなさそう。



ちなみに中東で次にやばそうなのはイエメンかもしれません。
中東情報ではおなじみ「中東の窓」の記事だと、こちらも首都付近で戦闘が続いているそうな。
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4695942.html


"イラクではいくらISISが首都に迫っているとはいえ、まだ60kmもあり、40kmと言えばサナアから直ぐのところでの戦闘だけに驚きます。"


いやいやいや。60kmも40kmも対して変わりませんやん。
つか東京から鎌倉で約40kmですよ。
東京から小田原で約70kmですよ。
平塚あたりが爆撃されてる感? どうすんだよこれ。

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戦場が近いぶん、平和への道は遠いです。

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