古代エジプト美術と乳の系譜 ~おっぱいから見る伝統芸術のはざま~

またこいつ下品な話をしやがって、と顔を顰める諸兄たちには申し訳ないが、中の人は今日もまじめに生きている。

まずはこいつを見てほしい。
https://55096962.seesaa.net/article/201410article_3.html

バハリア・オアシスから発見された、グレコ・ローマン時代時代の裕福な女性のミイラ覆いである。りっぱな黄金のロケットおっぱいがついている。英語でいうと Golden boob である。私はこの乳にそこはかとない違和感を覚えていた。


古代エジプトの乳はこんなではない。


一般人の想像する「古代エジプトの芸術」といえば、だいたい新王国時代のものである。なにしろ点数が多いし、見た目が派手だ。国家資産を湯水の如く使えた時代でもあるので、黄金や輝石も沢山使われている。その新王国時代の女性の乳表現は、たとえばこんな感じなのである。

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マアト&レンペト女神


素晴らしき哉ちっぱい の世界。

これこそが、このささやかな乳こそが古来よりのエジプト美術の伝統だったはずだ。
それが、プトレマイオス朝になると…↓

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一転して 巨乳至上主義 に。

いやむしろ奇乳、物理法則を無視して宙に浮かぶ、現代の萌えアニメでいうところの Dimension boob である。

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※画像に意味はありません


そう、新王国時代までは…雌牛の女神ハトホル様も

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美女と名高かったネフェルタリ王妃も

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基本的に乳はささやかなのである。

第三中間期のアメンの巫女カロママ像あたりまではその伝統が踏襲されている。

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それが末期王朝に入ったとたんこのざまですよ!!

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ヌト女神


一体なにがあったエジプト人。乳のサイズがBからEじゃ全然違うぞどういうことなんだ。

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とにもかくにも、この巨乳ムーブメントはローマ支配時代以降も続いていくことになる。
これ重要な美術史の転換期だと思うんですよ(迫真)

彫像は人々が美しいと感じる理想の「美」を表現しているわけなので、乳の大きさの変化は、美的感覚や基本的な価値観が変わったことを意味する。特に女神像に限らず、個人の彫像まで巨乳化してますからね。人々にとっての「永遠に残したい姿」がAでもBでもなくEやDカップだったと。いや目視だけで具体的なサイズまで分かりませんけど。実際に計らせてくれるなら話は別ですが。

とにもかくにも、第三中間期から末期王朝の間で何かが起きている。 例えるなら、同じガンダムの名を冠するシリーズでも監督が富野 由悠季から今川 泰宏に変わるくらいの違い。

たかが乳、されど乳。
次回エジプト展に行った時は、まず展示品の女性像の胸を見てほしい。そのサイズにより、だいたいの年代が分かるはずだ。 「んーこの表現は末期王朝以降だね?!」とか、同行者にドヤ顔で語ることも出来るはず。そしてぜひとも考察してみてほしい、このサイズの違いの裏に秘められた思想の時代変化というやつを。




なお私はどちらかというと伝統的ちっぱいのほうが好きだが、別にプトレマイオス朝あたりのロケットおっぱいでも特に文句はない。

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主曰く、「乳に貴賎なし、すべての乳を愛しなさい」。
私はその教えに従おうと思う…、アーメン・ラー。



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記事中の写真の出展元

エジプト美術 世界美術大全集 西洋編2
小学館

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