総括 パタゴニア ~光と陰の大地

というわけで、十日ほどかけて南部パタゴニアをぐるっと回ってきました。

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パタゴニアは国の名前ではなく地域名。国でいうと、チリとアルゼンチンにまたがっており、南米大陸の南緯40度より以南(南極に近い側)で、大陸の1/5くらいが対象です。かつては全域がチリに属していましたが、地域名の由来にもなっている先住民の抵抗が激しかったり、環境が厳しくて入植が進まなかったり、ドサクサに紛れて一部がアルゼンチンに帰属することに。しかしアルゼンチンは かなりいー加減な国 なので、チリ側とアルゼンチン側で全然管理が違います…。

行ってみてわかりましたが、アルゼンチン側の国境は、はっきり言って ザル でした。(笑) 国立公園も管理しきれてないとかでザッツフリーダム状態。その話はまた後ほど。

実際に行って見ないとわからん、というのは持論ですが、ここほど「本に書いてない」ことが多い土地は今までになかった。
「地球の歩き方」をはじめ、諸ガイドブックは大事なことをかなり書き落としていると思いました。もっとも、だからこそ、地球の裏側の最果ての地まで個人旅行で行った甲斐があるというものです。


まずパタゴニアが「風の大地」と言われること。
これは有名なエッセイ「パタゴニア 風とタンポポの物語り」で表現される言葉でもありますが、実際は事実の一部でしかありませんでした。というのも、自分が滞在した期間のうち、風が強かったのは初日2日のみ、プンタ・アレーナスからプエルト・ナタレスまでの区間とパイネ国立公園の一部だけだったからです。それ以降はそよ風ふんわり程度、無風の時間も多かった。少なくとも「季節を問わず」ではないし、「四六時中」でもない。

「空が広い」というのも、空が広いだけなら別に他にも同じような場所は沢山あるし、日本でも高い山に登れば空しかないですからね。これも違うなと。

代わりに自分が出した結論は、パタゴニアは「光と陰の大地」である、というものでした。



パタゴニアは雲が多いです。雲ひとつない晴天の時間は長続きしません。

たとえ地上に風が吹いていなくても、上空には常に風が吹き続けているらしく、あっという間に雲がわいて形を変え、次々と流れていきます。その雲が作る「陰」が大地を流れてゆく。だから自分の立っている場所が、今は日向なのに、一瞬後には日陰になっていたりする。目の前の道路は雨なのに、自分の上だけは日差しが照りつけている、なんてことも。


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山に登って平原を見下ろすと一目瞭然です。
こちらトーレス・デル・パイネに登った帰り道から撮ったパイネ国立公園の様子ですが、見事な光と陰のコントラストが出来てます。ちなみにこの日も風はほとんど吹かなくて、トーレスへの登山道は終始穏やかな光と陰の中。

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光と陰が複雑に交錯し、広い大地の上を陰が流れてゆく場所、それがパタゴニア。
だから一瞬ごとに風景は姿を変え、振り返れば全く別の顔を見せてくれる。下は、雲に隠れていたトーレスの三本塔が一瞬だけ顔を出し、そこに光が当たって黄金色に輝いた瞬間。数分後にはまた雲に隠れてしまって、これたまたま振り返らなかったら見られなかったと思うんですよね。本当に一瞬だけ。風景が次々と変わっていくので、何時間でも眺めていたくなります。

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ここが、稀有なる "すべての瞬間が美しい土地" なのは確かだと思いました。



今からパタゴニアへ行く人へ。

ここはバスツアーで回ってはいけない土地の一つです。たとえ短い距離でもいい、自分の足で歩け。自分で歩いて感じたものだけが、本当に自分の知ったものになる。
車窓から眺めるものはテレビ画面で見るのと何も変わりません。視覚的な美しさだけなら、テレビのハイビジョンで事足ります。土の感触、風の匂い、日差し、ここにしかないそれらを身体で感じられなかったら、現地まで行く意味は何も無い。

パタゴニアは、頭で理解するのではなく、五感を使って感じる世界でした。



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あと、「風とタンポポの物語り」知ってる現地人には、結局会えませんでした。さすがにもう少ないのか。(笑

つーかチリ側は現地人にほとんど会ってないんですよね、山の中歩いてるか現地の休日に移動してるかだったもんで… ただ「日本」と言う国のことは良く知られていた。「俺のバイクはカワサキだよ!」とか「日本といえばソニーだよね」とか言われて、ああやっぱり日本は技術の国と思われてるんだなーと思ったり。それから、魚介の輸出先らしいっす。

それからイスパ語版のBTOOOMが本屋に置いてあったのが謎だった…
ドラゴンボール置いてあるのはともかく、なぜそのチョイス…。


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