サハラ、砂漠の画廊 ―タッシリ・ナジェール遺跡について調べる。

年末に読んでた「三笠宮殿下米寿記念論集」の中に収録されていた「タッシリに岩壁画を訪ねて」を読んだあと、あっこれ調べないと! みたいな感じになってたので、とりあえずタイトルで引っ掛かったそれっぽいのを一冊手に入れてきた。

サハラ、砂漠の画廊―タッシリ・ナジェール古代岩壁画
新潮社
野町 和嘉

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タッシリ・ナジェールは、一万数千年前から延々8000年もかけて人類が壁画を描き続けてきた岩山の一つである。現在はサハラ砂漠のど真ん中の乾燥しきった地域だが、絵が最初に描かれはじめたころはまだ緑豊かな土地だった。そのため、ゾウやカバ、キリン、ガゼルなどの現在ではアフリカ内陸部でしか見られないような動物たちと、それらを狩る人間とが描かれている。<狩猟民の時代>と呼ばれる時代だ。

のちに乾燥化が進むにつれ、牛を飼い始めた<牛の時代>、地中海沿岸部の文化と交じり合う<馬の時代>、<ラクダの時代>へと移り変わってゆく。絵は同じ場所に何層にも渡って描かれたものがあれば、別々の時代の絵が繋がっていることもある。また、少数ながら岩に刻み込んだ線画もあるようだ。

この本は写真集で、それぞれの壁画や時代背景についての考察はあまりないが、壁画や、壁画のある場所の雰囲気などはよく分かる。



タッシリ・ナジェールとは、現地に住むトゥアレグ族の言葉で「川のある台地」を意味するという。名前を聞いたことはなくても、「宇宙人っぽい壁画があるところ」みたいなので一時期有名だったので、有名な壁画はおそらく見たことがある人が多いと思う。

こういうやつ。↓
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写真集なので、これと同じような「円頭人」の画像はたくさん出てくる、のだが、これが宇宙人っぽい摩訶不思議な人間に見えるのは、実は線画マジックなんである。実際の写真で見ると、こんなに宇宙人っぽく見えない。

というか、前後に描かれている同じような円頭人たちは、身体にペイントしていたり、腰布をつけていたり、おっぱいがあったり、明らかに人間としか見えないのだ。頭を極端に単純化して描いているだけなんだなと分かる。あぁまぁそうだよね。という感じ。

ちなみにタッシリ・ナジェール以外にも周辺には同じような壁画の描かれた地域が複数あるのだが、いずれもアルジェリア-リビア国境地帯のため、現在は非常に危険であり、観光客が行くのには適さない。

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いっぺん行ってみたいが…
これはさすがにちょっと…無理だよなあ… (´・ω・`)


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あと気になったこと、前に調べてたインダス文明で「一本角の牛」の印章というやつが出てきたんだ。

こういうやつ↓
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同じような図が、タッシリ・ナジェールの「牛の時代」の壁画にある。
こういうの↓
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はじめは、「角が一本なの真横から見てちょうど重なり合ってるのを表現してんじゃね?」と思っていたのだが、なんかどうも違うっぽい。頭傾けて目が両方見えてる牛でも、角が一本しかなかったりする。
これは儀礼的な意味で角を削ったりしてるんだろうか…?

インダス文明とサハラの放牧文化に直接的な繋がりがあったかどうかはさておくとして、興味深い類似だと思う。

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