「ツタンカーメンのヤグルマギク」の真実。副葬品にヤグルマギクの花束は存在しません
10年くらい前、テレビバラエティでよく流されていた(と、記憶している)「ツタンカーメンのヤグルマギク」。
王妃アンケセナーメンが入れたものだとして大々的に流され、ドラマチックに思っていた人も多いと思います。
ですが… 残念ながら、それはバラエティ向けに脚色された誤った情報です。
ツタンカーメン王墓の副葬品に、ヤグルマギクの花束は存在しません。
・花束は存在しましたがヤグルマギクではありません。
・ヤグルマギクの"含まれる"花輪は入っていましたが、形状が花束ではありません。
・そもそも発見者のカーターが「王妃が入れたものかもしれない」と言ったのは、全然別の花でした。
では、みんなが見ていたものは何だったのか。
バラエティ番組で頻繁に流され、吉○作治氏のサイトにも堂々と掲載されていたコレ↓。
テレビとか見て「えっこれのどこが花束なん? 花なくね?」と疑問に思った方はいませんか。
ナレーションではさんざん「発見当時は青い色が残っていて…」とか言ってるのにただの灰色じゃんって思いませんでしたか。その疑問は正解です。色が失せたのは保存状態が悪かったのもありますが、花に見えないのはそりゃ これは花束じゃないから ですよ当たり前です(笑)
正体は、発掘番号198番。ワニナシの束なのです…。
この束は確かに第一の棺の上に置かれていたものですが、花束ではないですよね。
実は、ハワード・カーターがヤグルマギクに感動したというのが、そもそも嘘なのです。
実際に発掘記を読んでみると分かりますが、 そんなことは書かれていません。 出てくる記述は以下の通りです。
『横たわったこの少年王の額には、上・下エジプトを象徴する見事な象嵌の二つのシンボル――コブラとハゲタカ――があり、そして、おそらく、人間の素朴な感情をあらわすもっとも感動的なものは、このシンボルの周辺に、小さい花束が置かれてあったことだ。』
つまり棺を開けた直後に花束が目に入ったことになりますが、第一の棺の上にはヤグルマギクは無かったので、彼が目にしたのは別の花です。もっと言うならば、「コブラとハゲタカのシンボルの周辺」ですので、ここでカーターが述べている花は↓コレのはずです。
王妃が入れた主張をするのなら、これじゃなきゃダメだったんですけどねー。ちなみにカーターも、王妃が入れたなどと断言はしていません。『わたしたちは、この花束を、夫に先立たれた少女の王妃が、「二つの国」を代表した若々しい夫にささげた最後の贈り物と考えたい。』…と、そうだったらいいなぁ~くらいに書いてます。
ヤグルマギクが出てくるのは、第二の棺の上に置かれていた"花輪"の中です。
しかしそれも、ヤグルマギクだけで出来ていたわけではありません。花輪は「ヤグルマギク、マンドレイク、蓮、柳、オリーブ、さらに野生のセロリ」から成っていました。
この形状を見て花束などと表現する人はいないでしょう。どう見ても「花輪」か「花の首飾り」です。
そしてヤグルマギクは、この花輪の一部に過ぎなかったので、その花だけに特別な意味があるとは到底思えません。
さらに言うならば、埋葬のさいに花を供えられることは古代エジプトでは一般的でした。
ほとんどの王墓が盗掘に遭う中、災難を免れたアメンホテプ1世は、ツタンカーメンと同じように埋葬当時のまま青い花に飾られて埋葬されて見つかっています。
また、王家の谷からは埋葬の際に使われた葬式道具を収めた穴が幾つか見つかっていて、そこからは、お葬式に使われた道具一式とともに花輪の残骸も見つかっています。
花輪作りは副葬品作りの一環だったのです。
ツタンカーメンの墓の中にも、たくさんの花輪や花束が入っていました。その中の一つくらいは王妃が手ずから作ったかもしれませんが、作った人の名前が書いてあるわけじゃなし、空想の域を出ません。まして王が暗殺された証拠かもしれないとか言い出すのは、それもう陰謀小説の読みすぎじゃないっスか? 的なレベル。
かつて、テレビバラエティで明らかな嘘が堂々と流されていた暗黒の時代がありました。
インターネットがまだ今ほど一般的ではなかったので、おかしいと分かってる人は片隅で声を上げるしかありませんでした。
今だに信じている人がいるのは残念ですが、もういいでしょう今からは。王妃アンケセーメンが入れたヤグルマギクの花束など存在しません。その代わり、ツタンカーメンは家族や家臣、多くの人々に見送られて、彼等が入れてくれた多くの花や緑に囲まれて眠ったのです。ショッボい嘘つかなくても、古代エジプトはロマンで一杯だよ。
*************************
この記事は、本体サイトに掲載の「ツタンカーメンのヤグルマギク」のまとめなおし版です。
http://www.moonover.jp/bekkan/ooparts/8.htm
ツタンカーメン副葬品リスト
http://www.griffith.ox.ac.uk/gri/carter/HomePage.html
ハワード・カーターによる「ツタンカーメン発掘記」は日本語版が手に入ります。
王妃アンケセナーメンが入れたものだとして大々的に流され、ドラマチックに思っていた人も多いと思います。
ですが… 残念ながら、それはバラエティ向けに脚色された誤った情報です。
ツタンカーメン王墓の副葬品に、ヤグルマギクの花束は存在しません。
・花束は存在しましたがヤグルマギクではありません。
・ヤグルマギクの"含まれる"花輪は入っていましたが、形状が花束ではありません。
・そもそも発見者のカーターが「王妃が入れたものかもしれない」と言ったのは、全然別の花でした。
では、みんなが見ていたものは何だったのか。
バラエティ番組で頻繁に流され、吉○作治氏のサイトにも堂々と掲載されていたコレ↓。
テレビとか見て「えっこれのどこが花束なん? 花なくね?」と疑問に思った方はいませんか。
ナレーションではさんざん「発見当時は青い色が残っていて…」とか言ってるのにただの灰色じゃんって思いませんでしたか。その疑問は正解です。色が失せたのは保存状態が悪かったのもありますが、花に見えないのはそりゃ これは花束じゃないから ですよ当たり前です(笑)
正体は、発掘番号198番。ワニナシの束なのです…。
この束は確かに第一の棺の上に置かれていたものですが、花束ではないですよね。
実は、ハワード・カーターがヤグルマギクに感動したというのが、そもそも嘘なのです。
実際に発掘記を読んでみると分かりますが、 そんなことは書かれていません。 出てくる記述は以下の通りです。
『横たわったこの少年王の額には、上・下エジプトを象徴する見事な象嵌の二つのシンボル――コブラとハゲタカ――があり、そして、おそらく、人間の素朴な感情をあらわすもっとも感動的なものは、このシンボルの周辺に、小さい花束が置かれてあったことだ。』
つまり棺を開けた直後に花束が目に入ったことになりますが、第一の棺の上にはヤグルマギクは無かったので、彼が目にしたのは別の花です。もっと言うならば、「コブラとハゲタカのシンボルの周辺」ですので、ここでカーターが述べている花は↓コレのはずです。
王妃が入れた主張をするのなら、これじゃなきゃダメだったんですけどねー。ちなみにカーターも、王妃が入れたなどと断言はしていません。『わたしたちは、この花束を、夫に先立たれた少女の王妃が、「二つの国」を代表した若々しい夫にささげた最後の贈り物と考えたい。』…と、そうだったらいいなぁ~くらいに書いてます。
ヤグルマギクが出てくるのは、第二の棺の上に置かれていた"花輪"の中です。
しかしそれも、ヤグルマギクだけで出来ていたわけではありません。花輪は「ヤグルマギク、マンドレイク、蓮、柳、オリーブ、さらに野生のセロリ」から成っていました。
この形状を見て花束などと表現する人はいないでしょう。どう見ても「花輪」か「花の首飾り」です。
そしてヤグルマギクは、この花輪の一部に過ぎなかったので、その花だけに特別な意味があるとは到底思えません。
さらに言うならば、埋葬のさいに花を供えられることは古代エジプトでは一般的でした。
ほとんどの王墓が盗掘に遭う中、災難を免れたアメンホテプ1世は、ツタンカーメンと同じように埋葬当時のまま青い花に飾られて埋葬されて見つかっています。
また、王家の谷からは埋葬の際に使われた葬式道具を収めた穴が幾つか見つかっていて、そこからは、お葬式に使われた道具一式とともに花輪の残骸も見つかっています。
花輪作りは副葬品作りの一環だったのです。
ツタンカーメンの墓の中にも、たくさんの花輪や花束が入っていました。その中の一つくらいは王妃が手ずから作ったかもしれませんが、作った人の名前が書いてあるわけじゃなし、空想の域を出ません。まして王が暗殺された証拠かもしれないとか言い出すのは、それもう陰謀小説の読みすぎじゃないっスか? 的なレベル。
かつて、テレビバラエティで明らかな嘘が堂々と流されていた暗黒の時代がありました。
インターネットがまだ今ほど一般的ではなかったので、おかしいと分かってる人は片隅で声を上げるしかありませんでした。
今だに信じている人がいるのは残念ですが、もういいでしょう今からは。王妃アンケセーメンが入れたヤグルマギクの花束など存在しません。その代わり、ツタンカーメンは家族や家臣、多くの人々に見送られて、彼等が入れてくれた多くの花や緑に囲まれて眠ったのです。ショッボい嘘つかなくても、古代エジプトはロマンで一杯だよ。
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この記事は、本体サイトに掲載の「ツタンカーメンのヤグルマギク」のまとめなおし版です。
http://www.moonover.jp/bekkan/ooparts/8.htm
ツタンカーメン副葬品リスト
http://www.griffith.ox.ac.uk/gri/carter/HomePage.html
ハワード・カーターによる「ツタンカーメン発掘記」は日本語版が手に入ります。