イギリスで競売に出された古王朝時代の座像を買い戻そうとするエジプト考古庁。

なんかめんどくさいことになってるなぁと思いながら見てたこのニュース。

Egypt calls for fundraising campaign to re-buy Sekhemka statue
http://www.thecairopost.com/news/164726/culture/egypt-calls-for-fundraising-campaign-to-re-buy-sekhemka-statue

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発端はイギリスのノーサンプトン美術館(Northampton Museum) →ココ が収蔵品の、古代エジプト第五王朝時代のセケムカーの座像をクリスティーズのオークションに出品したこと。

この座像自体は Spencer Compton侯爵が1849年~50年のエジプト旅行で手に入れて持ち帰り、その後、子孫の手によって地元の美術館に寄贈されたもの。ノーサンプトンの地方自治体が、美術館の拡張のため(あるいは財政難が裏にある?)所蔵美術品の一部をオークションに出して収益を上げることを決めた結果、この座像がオークションに出展されることになった模様。

2014年の7/10にオークションが行われ、落札額は £15.76 million ($20 million)・・・・ う、うーん世の中お金ある人はあるんだな。

この座像の状態のよさ、貴重さを考えると金額的な評価自体は妥当な気もするのですがしかし、買い戻そうとしているエジプト政府にとっては大きな痛手。財政難のエジプト政府、当然おかねたりない。そこでイギリスやエジプト本国で募金を募るハメに。

現在イギリス政府はこの座像の輸出禁止措置をとっており(ということは外国人が競り落とした?)、その期限は8/28の正午。しかしそれまでに20億円以上も集められるかってーと… うん…。ちょっと厳しい。




ちなみに日本でも同様の事案は過去に起きている。
運慶作の仏像がニューヨークでオークションにかけられた件だ。この件は、無事に日本に買い戻されている。三越にお金を渡したのは真如苑という宗教団体とのこと。お値段は13億(ソースによっては14億)。

http://tamrhyouka.hiho.jp/geijyutu-unkeizou.html

日本の場合はお金を出せる人がいたから戻って来たけど、今回のエジプトは…。果たしてお金を出してくれる実業家は現れるのだろうか。




そして今回の件が提示した問題は、「美術品を保持するとはどういうことか」「美術館の役目とは何なのか」という問題。

美術館にとって、収蔵品は単なる動産、資産の一部、という扱いでよいのか。収蔵品を展示することによって世の中に貢献している面は考慮されないのか。

それと同時に、美術館だって収益が上げられなければ収蔵品の保持も管理もできないという現実がある。「このような素晴らしい像がパプリック・スペースで展示されることなく個人収蔵家の手に入ってしまうとは!」という批判は、「だったらあんたが維持費出してくれや」という返しにも繋がる。ノーザンプトン美術館の財政状況は分からないが、本当にこの座像を売りに出さなきゃヤバいような財政状態だったのだろうか。批判があった時点で、「じゃあこれエジプト政府に売るから、5億くらいで買い取ってよ」というふうに持っていけなかったのだろうか…。


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Save Sekhemka Action Group
https://www.facebook.com/Sekhemka

この団体のやってることも、うーん、プロ市民だよねぇ…って感じであんまり好きになれないんだよなぁ。。

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