ハトシェプスト女王を題材にした少女マンガを読んでみた…が…。 (現行の方向性ではかなり厳しい)
なんかオススメ本に出てたので読んでみた。最近出たコレ。
タイトルの時点でなんとなく内容の察しがついた、まではいいのだが、 タイトルから想像したとおりの内容そのまま、かつ想像の域を1ミリたりとも越えていなかった というのは逆に想定外だった…。
一読しての感想。
これ、山岸 凉子の「ハトシェプスト」の焼き直しだよね?
「彼女は男勝りだった」「むしろ男嫌いだった」「父親に憧れていた」「男に生まれたかった」など、設定が完全に被っている。
そもそも、史実に沿うならば、ハトシェプストがファラオを名乗ったのは自身の晩年、かつ結婚して子供も産んでの後である。よって判っている史実だけから自由に想像したなら、ここまでの設定被りは考えにくい。直接参考にしたのか、無意識に影響を受けたのかはわからないが、山岸凉子ではないにしても、おそらく誰か他の先人の影響を強く受けているはずだ。だからなのか、全編に渡って借り物くさい雰囲気が漂う。作者自身のイメージによると思われる部分も多少あるが、それが借り物の部分と融合しきらずに浮いている。
そもそも、ハトシェプストなどというメジャーどころを敢えて作品に仕立て直すのであれば、他の作家と被らないように新しいストーリーを描けなければ話にならない。でなければ、他の作家たちが今まで散々作り上げてきた"男装の女王"ハトシェプストの凡庸なイメージにしかならないからだ。
エジプトの知識が足りないとか間違ってるとかはどーでもいい。
イメージが貧弱でストーリーがお決まりのパターンでしかないというのが厳しいのだ。そしてその結果として、登場人物の誰一人まともに共感することが出来ないというのが致命的な問題的となっている。辛うじて感情移入できるのがハトシェプストの異母兄弟で憎まれ役のセティ(トトメス2世)だというのだから救われない(笑) ハトシェプストに対しては、むしろ嫌悪感ばかりが先に立ってしまった。
だいたい彼女は、行動に一貫性が無さ過ぎる。一体ぜんたい、どうしたいのか。かんしゃくを起こし、ワガママで皆にムリヤリ認められようとしているばかり。序盤からして何一つ成長しているようには見えない。周りが優しくするからつけあがってロクでもない大人になっている。
私にはどうしても、この作品、主人公のハトシェプストに思い入れがあって描かれているようには読めなかった。「何かエジプトものを描きたいけど資料を読み込んでイチから想像するのが面倒くさいので、すでにテンプレの出来上がっているハトシェプストにしてみました。」みたいな理由で選んだのだったら、まぁ判る。
せめてハトシェプストが本当に美人なら良かったんである。
物語中ではさんざん「美しい」「高貴ですばらしい」と言われているが、どのシーンのハトシェプストもイマイチ、可愛くも美しくもない。絵柄は小奇麗だが、魅力を感じなかった。まぁこれは好みの問題っていう話もあるが。
うーん…。
着飾ってドアップで出てくるシーンはまだ辛うじてなんとか、気品とか美しさを感じられる…が…。他の表情アップのシーンとか完全にそのへんの少年で、侍女のほうがまだ可愛いくらい。(その侍女のデザインが山岸版にいたコとマジ被りだったりするのだが…)
ちなみにこの人、幼少期のシーンではおかっぱ頭、3年後のシーンでは腰までの超ロング、結婚後にバッサリ髪を切ったはずなのにその後なぜか元通りの長さまで髪の毛が伸びている、と、行動どころか頭髪も一貫していないというわけのわからなさ。もはやギャグに近い。
エジプトでもローマでも、何がテーマであろうとも、どんな物語も、キャラクターに魅力がなければ面白くなるわけがない。
せめて、最低限、ハトシェプストが「なぜ」父に憧れていたのかとか、父とどのような子供時代を過ごしたのかとかは描くべきだっただろう。出てきたもんの特に何もせずにサクっと死んだトトメス1世とか意味わからん。同様の理由で母親が死ぬシーンも全く感情移入できなかったなぁ…。
とりあえず、このマンガは今の路線のままでは相当厳しい。いいとこ2-3巻で、想像どおりのお決まりのエンディングを迎えるしかないだろう。面白くするには2巻で相当な方向転換をしないと無理だが…、巻末の予告編を見る限りその予兆は無いようだ(´・ω・`)
せめて… せめて…
序盤から出てる 鷹 の 伏 線 く ら い 回 収 し よ う ぜ
あんだけ意味深に出てきて、しかもタイトルもホルスなのに、まさか何もストーリーに絡まないとか思わなかったわ!!!(笑)
************
エジプト知識のまちがい(適当にでかいとこだけ
・農耕は基本ナイルの水を利用した天然灌漑なので日照りとか恵みの雨とかいう概念は多分ない
・王権が女系で伝えられるという説は今では支持されていない
・エジプトに宦官はいない
・エジプト人は乗馬は基本的にしない。主要な利用目的は戦車用。限られた軍人は出来た人もいたかもしれないが、馬に触れることのない庶民出身で文官のセンムトが出来る可能性は限りなくゼロに近いと思う
カツラとか服装とかがんばってるとこもあったんだけどなー、唐突にそこだけ描写が細かくなって他が適当なんで、「いや服装の説明より他にやることあるだろ…」って思っちゃったんだよなぁ。
学説なんて数年でガラっと変わったりするもんなので史実に従えとかリアリティ出せとかはないが、本に書かれていることを自分の中で租借できずにそのまんま紙の上に出力したらそりゃペラくなるに決まっている。作品冒頭部分のモノローグなんかがまさにそうだし、途中に出てくるヌビアやらクシュやらの描写もそう。何処にあるどんな国なのか、とか、エジプトにとってどういう位置づけなのかとか、全然想像できずに描いてるなっていうのが判ってしまう。
間違っててもいいんだよ、ていうか厳密に言えば古代世界を物語にするのに間違いなんて本当はないんだよ。
ハトシェプストが馬に乗れたって思うんだったら乗れたことにすればいい、ただしそこにリアリティを出せるかどうかは腕次第。せめて馬小屋の描写でもあればなぁ。まぁ、鐙とか鞍とかはどうがんばっても古代エジプトの時代には発明されていないのだが…。
タイトルの時点でなんとなく内容の察しがついた、まではいいのだが、 タイトルから想像したとおりの内容そのまま、かつ想像の域を1ミリたりとも越えていなかった というのは逆に想定外だった…。
一読しての感想。
これ、山岸 凉子の「ハトシェプスト」の焼き直しだよね?
「彼女は男勝りだった」「むしろ男嫌いだった」「父親に憧れていた」「男に生まれたかった」など、設定が完全に被っている。
そもそも、史実に沿うならば、ハトシェプストがファラオを名乗ったのは自身の晩年、かつ結婚して子供も産んでの後である。よって判っている史実だけから自由に想像したなら、ここまでの設定被りは考えにくい。直接参考にしたのか、無意識に影響を受けたのかはわからないが、山岸凉子ではないにしても、おそらく誰か他の先人の影響を強く受けているはずだ。だからなのか、全編に渡って借り物くさい雰囲気が漂う。作者自身のイメージによると思われる部分も多少あるが、それが借り物の部分と融合しきらずに浮いている。
そもそも、ハトシェプストなどというメジャーどころを敢えて作品に仕立て直すのであれば、他の作家と被らないように新しいストーリーを描けなければ話にならない。でなければ、他の作家たちが今まで散々作り上げてきた"男装の女王"ハトシェプストの凡庸なイメージにしかならないからだ。
エジプトの知識が足りないとか間違ってるとかはどーでもいい。
イメージが貧弱でストーリーがお決まりのパターンでしかないというのが厳しいのだ。そしてその結果として、登場人物の誰一人まともに共感することが出来ないというのが致命的な問題的となっている。辛うじて感情移入できるのがハトシェプストの異母兄弟で憎まれ役のセティ(トトメス2世)だというのだから救われない(笑) ハトシェプストに対しては、むしろ嫌悪感ばかりが先に立ってしまった。
だいたい彼女は、行動に一貫性が無さ過ぎる。一体ぜんたい、どうしたいのか。かんしゃくを起こし、ワガママで皆にムリヤリ認められようとしているばかり。序盤からして何一つ成長しているようには見えない。周りが優しくするからつけあがってロクでもない大人になっている。
私にはどうしても、この作品、主人公のハトシェプストに思い入れがあって描かれているようには読めなかった。「何かエジプトものを描きたいけど資料を読み込んでイチから想像するのが面倒くさいので、すでにテンプレの出来上がっているハトシェプストにしてみました。」みたいな理由で選んだのだったら、まぁ判る。
せめてハトシェプストが本当に美人なら良かったんである。
物語中ではさんざん「美しい」「高貴ですばらしい」と言われているが、どのシーンのハトシェプストもイマイチ、可愛くも美しくもない。絵柄は小奇麗だが、魅力を感じなかった。まぁこれは好みの問題っていう話もあるが。
うーん…。
着飾ってドアップで出てくるシーンはまだ辛うじてなんとか、気品とか美しさを感じられる…が…。他の表情アップのシーンとか完全にそのへんの少年で、侍女のほうがまだ可愛いくらい。(その侍女のデザインが山岸版にいたコとマジ被りだったりするのだが…)
ちなみにこの人、幼少期のシーンではおかっぱ頭、3年後のシーンでは腰までの超ロング、結婚後にバッサリ髪を切ったはずなのにその後なぜか元通りの長さまで髪の毛が伸びている、と、行動どころか頭髪も一貫していないというわけのわからなさ。もはやギャグに近い。
エジプトでもローマでも、何がテーマであろうとも、どんな物語も、キャラクターに魅力がなければ面白くなるわけがない。
せめて、最低限、ハトシェプストが「なぜ」父に憧れていたのかとか、父とどのような子供時代を過ごしたのかとかは描くべきだっただろう。出てきたもんの特に何もせずにサクっと死んだトトメス1世とか意味わからん。同様の理由で母親が死ぬシーンも全く感情移入できなかったなぁ…。
とりあえず、このマンガは今の路線のままでは相当厳しい。いいとこ2-3巻で、想像どおりのお決まりのエンディングを迎えるしかないだろう。面白くするには2巻で相当な方向転換をしないと無理だが…、巻末の予告編を見る限りその予兆は無いようだ(´・ω・`)
せめて… せめて…
序盤から出てる 鷹 の 伏 線 く ら い 回 収 し よ う ぜ
あんだけ意味深に出てきて、しかもタイトルもホルスなのに、まさか何もストーリーに絡まないとか思わなかったわ!!!(笑)
************
エジプト知識のまちがい(適当にでかいとこだけ
・農耕は基本ナイルの水を利用した天然灌漑なので日照りとか恵みの雨とかいう概念は多分ない
・王権が女系で伝えられるという説は今では支持されていない
・エジプトに宦官はいない
・エジプト人は乗馬は基本的にしない。主要な利用目的は戦車用。限られた軍人は出来た人もいたかもしれないが、馬に触れることのない庶民出身で文官のセンムトが出来る可能性は限りなくゼロに近いと思う
カツラとか服装とかがんばってるとこもあったんだけどなー、唐突にそこだけ描写が細かくなって他が適当なんで、「いや服装の説明より他にやることあるだろ…」って思っちゃったんだよなぁ。
学説なんて数年でガラっと変わったりするもんなので史実に従えとかリアリティ出せとかはないが、本に書かれていることを自分の中で租借できずにそのまんま紙の上に出力したらそりゃペラくなるに決まっている。作品冒頭部分のモノローグなんかがまさにそうだし、途中に出てくるヌビアやらクシュやらの描写もそう。何処にあるどんな国なのか、とか、エジプトにとってどういう位置づけなのかとか、全然想像できずに描いてるなっていうのが判ってしまう。
間違っててもいいんだよ、ていうか厳密に言えば古代世界を物語にするのに間違いなんて本当はないんだよ。
ハトシェプストが馬に乗れたって思うんだったら乗れたことにすればいい、ただしそこにリアリティを出せるかどうかは腕次第。せめて馬小屋の描写でもあればなぁ。まぁ、鐙とか鞍とかはどうがんばっても古代エジプトの時代には発明されていないのだが…。