山のあいさつ ~山歩きをする人はなんで挨拶するの、って聞かれたから
山歩きをしてる人が決まって交わしている「こんにちはー」の挨拶。
あれなんで挨拶すんの? 決まりあんの? って最近トレッキング始めた後輩に言われたので書いておこうと思う。
実は山の挨拶の歴史は古い。最古の記録は平安時代にまで遡り、薄暗い山の中で「あやしきもの」に出会った場合は挨拶の声をかけ、返事が無ければ用心して念仏を唱えつつ進むべしとの記載があるという。これが今に言う「山の挨拶」の発祥である。
その後も、山伏や行商人、山間部で働くマタギのような職業の人たちが、人気(ひとけ)のない山の中で人影に出くわしたときは、、人か妖(あやかし)かを見分けるために挨拶をしたという。いわば「挨拶」は、自分が人であることを示すための合言葉だったのである。
… というのは冗談だが、事情はだいたいあってたりする(笑)
人里離れた薄暗い山の中で突然人に出くわすとちょっと用心してしまうので、それを和ませるためというのが主な理由だ。
また本来、山歩きは「ほとんど人に逢わない」ようなもののため、たまに出会った同行の士とは、ちょっと言葉を交わしたいじゃないか、的な意味合いもある。
これは、ガイドブックなどに載ってないようなマイナールートや、藪こぎしないと進めないような旧道で、一日に一人か二人しかすれ違わないようなときには身を持って体感できる。朝からずーっと山の中にいて人間を見てないと、たまにであった人と「こんにちはー」って一言挨拶するだけでも気分がスッとしたりするのだ。
あと基本的に、単独登山をしてる最中だと、途中すれ違った人に警戒してしまうこともあるからね。
今の時代の山の中では物取りや盗賊なんかはいないはずなんだけど、過去、死体の不法投棄とかのよからぬ場面に出くわした人がいるそうなので…。
山は本来、人の立ち入るべからざる場所だ。
異界に通じる口がある、と昔の人が信じたのは、単なる迷信ではない。実際今でも、山に出かけてそのままきれいさっぱり消えてしまう人がたまにいる。ていうか、何年か前に奥多摩(東京都)で行方不明になった人だって、まだ出てきてないくらいだ。
異界を旅する冒険者同士、すれ違ったら挨拶くらいしてもいいんじゃないの。それはマナーとかじゃなくて自然とそうしたいと思うようになるもんだよ。
…逆に、もはや異界の魔力を失ったザ・観光地な山では、挨拶なしでもいいと思うんだ(´・ω・`)
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おいらは冬山はやらないので、今年もそろそろ山シーズン終了。
紅葉はもう見てしまったのだけれど、年のシメにどっか登りに行きたいなぁ…。