人類の農耕の歴史は常に塩との戦いだった。…日本以外。
エジプトで使われていた塩の話を調べるついでに農耕と塩害の話を読んだらなかなか興味深い内容で、とりあえず理解できたところを図解しつつメモしておくことにする。
●降雨の少ない地方では、農業を行うとほぼ確実に農地が塩害化する
まずは、ここからだ。
塩害化とは、土中の塩分濃度が上がりすぎて作物が育たなくなること。
メソポタミア文明は塩害による収穫量の減少が問題になっていたことが記録される最古の文明。インダス文明も塩害によって打撃を受けたのではないかという説がある。またエジプトは、古代には塩害に悩まされていなかったが、農耕の手法を変えて以降は深刻な塩害に悩まされている。
しかしどうして農業をやったら塩害が発生するのか?
今までずっとその部分がよく分からんかったのだが、こういうことらしい。
(1)
そもそも地面の下には、大昔に干上がった海の残した塩分が隠されている。
これは全世界だいたいどこでもそう。
何しろ陸地というのは海の上にできているものなので…。
そして、その塩分を地下に閉じ込めているものは、途中の土中にある水分。塩分は純粋な水より重たいので、間に水分があると沈殿する。
(2)
水分は日が照っていると地表から蒸発する。
水分が蒸発すると、そのぶん地下の塩分は上昇することになる。
(3)
しかし水分が蒸発して雲ができると雨が降るわけで、雨が降って水分が地面に補充されると、上がった塩分がまた下がる。日本の農地でほとんど塩害が起きないのは、世界的にも珍しい多雨の国であり、水分が途切れることは滅多に無いため。
(4)
降雨の少ない地域でも、農地に水を張って休ませる灌漑農法を行っていれば、水分が補充されることによって塩分の上昇を防ぐことが出来る。メソポタミアの一部や古代エジプトで行われていたのはこの農法。(古代には塩害とは無縁だったエジプトだが、ナイル川にダムを作って大規模な天然灌漑を行えなくなったことが原因で、現在では深刻な塩害に悩まされる国の一つとなってしまった。)
**************
つまり、
農地からの蒸発量+植物が吸収する水分 < 補給される水の量
であれば、地中の塩分は上昇しない。
逆に、
農地からの蒸発量+植物が吸収する水分 > 補給される水の量
であれば、年々地中の塩分が上昇して、土中の塩分濃度が上がり続け、いつか作物が育たなくなってしまう。
しかも厄介なことに、いちど上昇した塩はそう簡単に土中に戻ってくれないという厄介さである。
水分の蒸発量は、様々な要因で変化する。
気候変動で雨量が変化する、河川の流路や流量が変わる、あるいは上流の森を伐採したら土地の保水力が減ってしまった、など。そもそもが森を切り開いて畑にすること自体、地面からの水分の蒸発量を増やす行為である。農業=自然破壊であり、農耕を開始した時点から、人類は塩害と戦い続ける宿命を負ってしまったと言ってもいい。
日本などは昔から雨量が多く、水田も多いことから、農耕と塩害が結びつかなかった(しかも人工的に塩水を農地に撒くナゾの農法すらある!)例外的な地域だろうと思う。
地下水のくみ上げによって農地が塩害化するというメカニズムも、この図で分かると思う。土中の水分が減少するののは同じだからだ。
水というのは、無限の資源ではない。
確かに海は世界中にある。だが「真水」は、限りなく有限に近く、そして現在、既に地球上の全人類を養うには不足してしまっている。その限られたパイを奪い合っているのがこの世界であり、十分な真水を得られない地域は満足に飲食を賄えていない。一度塩害化された農地は、そう簡単に使えるようにはならない。真水が不足すれば、世界の農耕に適した土地は、次第に減ってゆくことになる。
わりとマジメな話をしてしまったが、「水に不足しない」日本は、ガチで恵まれてる国なんだと思うんだよ。
資源のない国だといわれてるけど、確かに石油とかは無いんだけどさ、水と豊かな土地はあるんだよ。見方を変えれば、もうそれあるだけでバンザイレベルの資源の豊富さじゃないのかってね。
ほかの水資源に乏しい国の、塩害化との必死の戦いを見てて、なんかちょっと申し訳なく思ったのでした。
●降雨の少ない地方では、農業を行うとほぼ確実に農地が塩害化する
まずは、ここからだ。
塩害化とは、土中の塩分濃度が上がりすぎて作物が育たなくなること。
メソポタミア文明は塩害による収穫量の減少が問題になっていたことが記録される最古の文明。インダス文明も塩害によって打撃を受けたのではないかという説がある。またエジプトは、古代には塩害に悩まされていなかったが、農耕の手法を変えて以降は深刻な塩害に悩まされている。
しかしどうして農業をやったら塩害が発生するのか?
今までずっとその部分がよく分からんかったのだが、こういうことらしい。
(1)
そもそも地面の下には、大昔に干上がった海の残した塩分が隠されている。
これは全世界だいたいどこでもそう。
何しろ陸地というのは海の上にできているものなので…。
そして、その塩分を地下に閉じ込めているものは、途中の土中にある水分。塩分は純粋な水より重たいので、間に水分があると沈殿する。
(2)
水分は日が照っていると地表から蒸発する。
水分が蒸発すると、そのぶん地下の塩分は上昇することになる。
(3)
しかし水分が蒸発して雲ができると雨が降るわけで、雨が降って水分が地面に補充されると、上がった塩分がまた下がる。日本の農地でほとんど塩害が起きないのは、世界的にも珍しい多雨の国であり、水分が途切れることは滅多に無いため。
(4)
降雨の少ない地域でも、農地に水を張って休ませる灌漑農法を行っていれば、水分が補充されることによって塩分の上昇を防ぐことが出来る。メソポタミアの一部や古代エジプトで行われていたのはこの農法。(古代には塩害とは無縁だったエジプトだが、ナイル川にダムを作って大規模な天然灌漑を行えなくなったことが原因で、現在では深刻な塩害に悩まされる国の一つとなってしまった。)
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つまり、
農地からの蒸発量+植物が吸収する水分 < 補給される水の量
であれば、地中の塩分は上昇しない。
逆に、
農地からの蒸発量+植物が吸収する水分 > 補給される水の量
であれば、年々地中の塩分が上昇して、土中の塩分濃度が上がり続け、いつか作物が育たなくなってしまう。
しかも厄介なことに、いちど上昇した塩はそう簡単に土中に戻ってくれないという厄介さである。
水分の蒸発量は、様々な要因で変化する。
気候変動で雨量が変化する、河川の流路や流量が変わる、あるいは上流の森を伐採したら土地の保水力が減ってしまった、など。そもそもが森を切り開いて畑にすること自体、地面からの水分の蒸発量を増やす行為である。農業=自然破壊であり、農耕を開始した時点から、人類は塩害と戦い続ける宿命を負ってしまったと言ってもいい。
日本などは昔から雨量が多く、水田も多いことから、農耕と塩害が結びつかなかった(しかも人工的に塩水を農地に撒くナゾの農法すらある!)例外的な地域だろうと思う。
地下水のくみ上げによって農地が塩害化するというメカニズムも、この図で分かると思う。土中の水分が減少するののは同じだからだ。
水というのは、無限の資源ではない。
確かに海は世界中にある。だが「真水」は、限りなく有限に近く、そして現在、既に地球上の全人類を養うには不足してしまっている。その限られたパイを奪い合っているのがこの世界であり、十分な真水を得られない地域は満足に飲食を賄えていない。一度塩害化された農地は、そう簡単に使えるようにはならない。真水が不足すれば、世界の農耕に適した土地は、次第に減ってゆくことになる。
わりとマジメな話をしてしまったが、「水に不足しない」日本は、ガチで恵まれてる国なんだと思うんだよ。
資源のない国だといわれてるけど、確かに石油とかは無いんだけどさ、水と豊かな土地はあるんだよ。見方を変えれば、もうそれあるだけでバンザイレベルの資源の豊富さじゃないのかってね。
ほかの水資源に乏しい国の、塩害化との必死の戦いを見てて、なんかちょっと申し訳なく思ったのでした。