「ピラミッドは農閑期に農民を働かせて作った」説→調べたら農閑期なんてありませんでした。
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「ナイルの増水する時期は農閑期。農民はピラミッドを作ってた」という説に異議を唱えてみる
https://55096962.seesaa.net/article/201512article_22.html
何故か確定事項のように繰り返される「ピラミッドはナイルの増水している期間、農閑期で失業している農民を働かせて作った」という説。しかしこの説には穴がボコボコあいており、農閑期は失業期間じゃ無いし、ナイルの増水はせいぜい3-4ヶ月でめちゃくちゃ短いし、ピラミッド作ってなかった時代は何をしてたんだよって話だし、まぁツッコミどころは多数あったわけです…。
しかし、 そもそも農閑期なんて無い ということが分かってしまえば、前提からして間違えているので細かく指摘するまでもなく「この説はナシ」になりますよね。
というわけで、農閑期が存在しなかったという話を補強すべく、資料を適当に探して、もちょっと細かく古代エジプト農業カレンダー作ってみました。ドン。
★収穫時期について
農業で最も手がかかるのは収穫シーズン。現代のようにコンバインなどない手作業の時代、収穫シーズンは家族総出で(場合によっては日雇い労働者も借りてきて)必死で働く必要のある季節です。特に麦は熟しすぎると実が脱落してしまうので収穫は時間との戦いだったはず。つまりマーキングした時期は、一年で一番忙しい時期となります。
そして、収穫後は天日干し・脱穀・穀倉への収納という作業がおそらく一ヶ月くらい入ってきます。
★種まきについて
灌漑後、種まきに先立って畑の土の掘り起こしが必要となります。
参考にした資料には播種シーズンの記載がなかったので、前回エントリで載せた現代エジプトの麦の栽培サイクルから推定しました。
★南北差について
エジプトは日本同様に南北に細長い国で農業暦に南北の差が大きく出ますが、エジプトは日本ほど南北の気候差はなく、ナイル上流(最南端)地域ではほとんど農業が行われていないことから、地域による差は半月程度と想定します。
★ナイルの増水時期について
ナイルの増水(氾濫とも呼ばれる)は、日本でいう梅雨のようなものなので水源地域の雨季と連動して年によって多少ズレます。最大水位の時期は8月半ば~10月と大きく変動しているようですが、開始時期についてはあまり変化していないようなのでこれでいきます。
★ここに掲載した以外の農作物について
前回エントリを参照のこと。実際は、「ナツメヤシ→8-9月あたりが収穫期」など、麦の合間にちょくちょく夏野菜と果実の週クシーズンが入ってきます。
で、明確な資料は見つからなかったんだけど現代の農耕で作られている農作物の収穫時期と、資料だけでは見えてこない前後の作業を、さっきの表に足してみますとですね…こうなります。
だいたい春から夏にかけてのシーズンに作物の収穫時期が集中しているのはお分かりいただけますとおり。
で、農作のカレンダーに欠けているのが、大麦・小麦を収穫したあとの「後処理」の部分。麦は天日干ししてそのあと脱穀しないと保存できないですね。これも手作業なので相当手間がかかります。収穫したら終わりでヒマじゃねぇ? って考えてしまうのは実作業をリアルに想像できてないから。
で、収穫し終わったら当然、納税作業も発生するはずなんですよ。それが終わったら一段落してしばしの休暇…じゃないでしょうか。
でもその休憩も長くはないです。灌漑水路開いて畑に水入れないといけないから。
大麦は塩害に強いので灌漑が不十分でもOKなんですが、小麦は塩害に弱いので十分に水を入れないと次の年の収穫率が下がるんですよね…。
以上のデータを総合すると、農閑期なんて ありません。
ナイルの氾濫時期、畑に水を入れて灌漑をしている間は確かに比較的ヒマにはなると思いますが、9月にはもう早い畑には種を播き始めているので、ヒマな期間は1ヶ月あるかないかくらい。かなり短いです。ということは、その間だけピラミッドつくりに行くとか無いですね。ご近所さんなら炊き出しの手伝いくらいは行けたかもしれないけど、組織だった大規模建造に参加できるような長期休暇にはなりません。
農業カレンダーは嘘つかない。
麦の収穫シーズンは短く出来ないし、かかる手間も軽減できない。古代エジプトに農閑期無いです!! おっけーですか? 異論があるなら"農閑期"をひねり出してください。
これは、誰か専門家がそう言ったとかではなく、自分が調べてそう考えたという話です。が、現在のところこれが最も妥当と考えます。だって見てのとおり、農業カレンダーに十分な隙間が無いですもん。
この結果をもって、自分はピラミッドを含む大規模建造の労働者は専門の通年労働者であったと結論しました。もしかしたら多少の季節労働者はいたかもしれないけど、それはメインの労働力ではない。
というわけで、うちはこの説でいきます。
「ナイルの増水する時期は農閑期。農民はピラミッドを作ってた」という説に異議を唱えてみる
https://55096962.seesaa.net/article/201512article_22.html
何故か確定事項のように繰り返される「ピラミッドはナイルの増水している期間、農閑期で失業している農民を働かせて作った」という説。しかしこの説には穴がボコボコあいており、農閑期は失業期間じゃ無いし、ナイルの増水はせいぜい3-4ヶ月でめちゃくちゃ短いし、ピラミッド作ってなかった時代は何をしてたんだよって話だし、まぁツッコミどころは多数あったわけです…。
しかし、 そもそも農閑期なんて無い ということが分かってしまえば、前提からして間違えているので細かく指摘するまでもなく「この説はナシ」になりますよね。
というわけで、農閑期が存在しなかったという話を補強すべく、資料を適当に探して、もちょっと細かく古代エジプト農業カレンダー作ってみました。ドン。
★収穫時期について
農業で最も手がかかるのは収穫シーズン。現代のようにコンバインなどない手作業の時代、収穫シーズンは家族総出で(場合によっては日雇い労働者も借りてきて)必死で働く必要のある季節です。特に麦は熟しすぎると実が脱落してしまうので収穫は時間との戦いだったはず。つまりマーキングした時期は、一年で一番忙しい時期となります。
そして、収穫後は天日干し・脱穀・穀倉への収納という作業がおそらく一ヶ月くらい入ってきます。
★種まきについて
灌漑後、種まきに先立って畑の土の掘り起こしが必要となります。
参考にした資料には播種シーズンの記載がなかったので、前回エントリで載せた現代エジプトの麦の栽培サイクルから推定しました。
★南北差について
エジプトは日本同様に南北に細長い国で農業暦に南北の差が大きく出ますが、エジプトは日本ほど南北の気候差はなく、ナイル上流(最南端)地域ではほとんど農業が行われていないことから、地域による差は半月程度と想定します。
★ナイルの増水時期について
ナイルの増水(氾濫とも呼ばれる)は、日本でいう梅雨のようなものなので水源地域の雨季と連動して年によって多少ズレます。最大水位の時期は8月半ば~10月と大きく変動しているようですが、開始時期についてはあまり変化していないようなのでこれでいきます。
★ここに掲載した以外の農作物について
前回エントリを参照のこと。実際は、「ナツメヤシ→8-9月あたりが収穫期」など、麦の合間にちょくちょく夏野菜と果実の週クシーズンが入ってきます。
で、明確な資料は見つからなかったんだけど現代の農耕で作られている農作物の収穫時期と、資料だけでは見えてこない前後の作業を、さっきの表に足してみますとですね…こうなります。
だいたい春から夏にかけてのシーズンに作物の収穫時期が集中しているのはお分かりいただけますとおり。
で、農作のカレンダーに欠けているのが、大麦・小麦を収穫したあとの「後処理」の部分。麦は天日干ししてそのあと脱穀しないと保存できないですね。これも手作業なので相当手間がかかります。収穫したら終わりでヒマじゃねぇ? って考えてしまうのは実作業をリアルに想像できてないから。
で、収穫し終わったら当然、納税作業も発生するはずなんですよ。それが終わったら一段落してしばしの休暇…じゃないでしょうか。
でもその休憩も長くはないです。灌漑水路開いて畑に水入れないといけないから。
大麦は塩害に強いので灌漑が不十分でもOKなんですが、小麦は塩害に弱いので十分に水を入れないと次の年の収穫率が下がるんですよね…。
以上のデータを総合すると、農閑期なんて ありません。
ナイルの氾濫時期、畑に水を入れて灌漑をしている間は確かに比較的ヒマにはなると思いますが、9月にはもう早い畑には種を播き始めているので、ヒマな期間は1ヶ月あるかないかくらい。かなり短いです。ということは、その間だけピラミッドつくりに行くとか無いですね。ご近所さんなら炊き出しの手伝いくらいは行けたかもしれないけど、組織だった大規模建造に参加できるような長期休暇にはなりません。
農業カレンダーは嘘つかない。
麦の収穫シーズンは短く出来ないし、かかる手間も軽減できない。古代エジプトに農閑期無いです!! おっけーですか? 異論があるなら"農閑期"をひねり出してください。
これは、誰か専門家がそう言ったとかではなく、自分が調べてそう考えたという話です。が、現在のところこれが最も妥当と考えます。だって見てのとおり、農業カレンダーに十分な隙間が無いですもん。
この結果をもって、自分はピラミッドを含む大規模建造の労働者は専門の通年労働者であったと結論しました。もしかしたら多少の季節労働者はいたかもしれないけど、それはメインの労働力ではない。
というわけで、うちはこの説でいきます。