パキスタン/巨大ダムに沈もうとしているシルクロードの岩絵

こないだこそっと紛れ込んできたとある会の南アジア部で紹介されていたプロジェクトで、バルティスタンのディアメル・バシャ・ダムに水没する予定の岩絵・線画の記録に人手がぜんぜん足りてない! という話が出ていたので、ちょろっと調べてみた。


まず水没しそうになってる岩絵・線画というのは、かつてのシルクロード沿線の岸壁に刻まれているものだ。インダス川上流(パキスタン北部)にある。
いつからいつまで、誰が描いたのか、といった情報すら定まっていない。仏教ネタで描かれているものは、おそらく紀元後だろう…と言われているが、動物の絵とかだと、もしかしたら先史時代かも? みたいな感じでよく分からないらしい。記録もとられていないのだという…。

絵の刻まれている場所というのがかつてのシルクロードの一部である。法顕や宗雲といった仏教史上の有名人が北上した道でもある。にもかかわらず、正確な記録もないし、ちゃんと研究もされていない。
しかし現在建設中の巨大ダムによって、そのうち3万数千点は水没してしまう。水没を免れたとしても、風化などによって年々壊れていっているものだ。とりあえず今のうちに正確な記録だけでも残そう! というのが、現在行われているプロジェクトなのだそうだ。


なお、この地域がなんで記録も研究も不十分かというと、

 ・インドからパキスタンが分離独立するときに係争地だったから
 ・外国人隊に解放されたのはつい最近
 ・中国の支援で高速道路を作ろうとしてる、まさに政治的な立地
 ・宗教的にも複雑。ダム建設予定地はイスラム教スンニ派が多いが周辺はシーア派が多い
 ・2010年の憲法改正後、連邦政府と州政府との間で文化財保護などの権限の線引きが曖昧なままになってしまっている

…などといった理由があるらしい。

あんま分かってなかったんですけど、パキスタンも民主化運動で国内で衝突があったのね(´・ω・`) 政権交代とか近年も政治的なゴタゴタが多くて、正式な回答を待ってるといつまでたっても始まらないとかで、現地のハザーラ大学と協力してスタートしてる見切り発車なプロジェクトみたい。でも、グズグズしてたら全部水没しちゃうんで、確かに今すぐ始めないと間に合わない。

「岩絵を救え」じゃなくて、「消え行くものをせめて記録しよう」なのが切ない…。



このプロジェクトには、NPO団体「南アジア文化遺産センター」というところが支援に入っているので、ここに情報がある。
https://sites.google.com/site/jcsachweb/home/activity/huchdc

あと、株式会社ラングというところが関わっている。
http://www.lang-co.jp/

ラングのほうはエジプト関連でもよく名前の出てくる会社、映像処理を担当してるところ。


NPO団体のほうは、いまどき企業でこんなベタなサイトあるのかーって思うくらいアレな感じですがまぁそこはNPOらしくて逆に良いかも(汗

"・記録化作業は急を要しますが、機材と資金が不足しています。そこでNPO法人南アジア文化遺産センターでは、まず、基本的な機材の提供から開始することとしました。
・必要なのは、デジカメ、GPS、タブレット、ラップトップPCなどで、決して高価な機材ではありません。また中古品であっても、十分に使用できます。"

ということで、使わなくなったデジカメとか余ってれば欲しいそうです。現地の人に渡して、写真撮ってもらったのを日本に送ってもらって日本で加工するんだとか。まぁもし興味とかあって、機材余ってれば送ってあげてくだされ。


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西アジア発掘調査報告会は、あんま進捗のないプロジェクトとかは二年に一回くらいにして、こういうあんまり知名度のないやつ多めでやってほしい気がする、そのほうが面白いから。あとたぶん、一般人参加のキッカケにもなると思うんだ。

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