【ネタバレなし】シン・ゴジラを見に行ってきた。~その裏にあるシステム屋の戦いとは

ネタバレはないのでご安心を、というか映画ほとんど関係ねぇ。



えー、皆さん、映画の中で会社や勤務地やイケすかねぇクライアントが滅殺されてご機嫌でしたかね?

  私はたぶん、自宅を破壊されて涙目になってました

まぁそんな時もある。




さて、巨大不明生物が東京に攻めて来たら自分たちはどうするのか。

映画を観ながら、ちょっと考えていました。自衛隊のお仕事が国と国民を守ることなら、我々システム屋のお仕事は ビジネスを支えるシステムを守ること でございます。システムとは何か。代表的なところを挙げてみます。


 ・銀行など金融

金融システムというと東証や、大手企業の支払いなどを想像する人もいますが、一般市民の生活に一番ダイレクトに響くのがこれ。たとえば振込み、引き落としなんかも裏でシステムがやってます。一般市民に影響するところで端的に言うと、金融に関わるITシステムが停止すると、お金の引き出し、クレジットカードの使用が出来なくなります。
  
 ・物流

人口の多い首都圏は、物流の集中するところ。在庫、出庫、売り上げ、発送手続き、その他もろもろの管理はシステムで行っています。
スーパーやコンビニの物流なんかも裏にはITシステムがあり、システムに異常が発生すると物流は停止します。

 ・公共交通機関

地方のローカルバスなどはあまりITの恩恵を受けてないところもありますが、首都圏の交通でバスや列車は、システム制御なしに動けません。日常的に「信号故障のため電車遅延」なんてのもありますが、深刻なシステムトラブルが発生した場合は遅延どころではないです。

 ・ネット、電話など通信

電話回線なら銅線で繋がってるだけだしシステム故障しても問題ないっしょ? と思われるかもしれませんが、NTT基地局の収容機械が故障すると繋がらなくなります。ネットはもちろん、ITの領域なんで、たとえ回線が無事でも基幹システムが故障すると接続できなくなります。



これらの中でも、ライフラインに直結するシステムや、1時間停止しただけでも多額の損害が出るようなクリティカルなシステムは、事業継続計画(BCP)を考慮して災害対策用の環境というものが設置されてます。分かりやすくいうと緊急時の切り替え用バックアップ。
映画の中で霞ヶ関がやられたあと立川に避難するシーンがありましたが、あれのサーバ版みたいなもんです。さすがに怪獣は想定してないですが、東京が大地震で壊滅したときに大阪側をメインシステムとして使えるようにしとく、みたいな感じで関西にバックアップを置いてあることが多いです。3.11以降は特に災対設置案件が多かったですね(とおいめ)

東京ヤバい、ってなったら、まず間違いなく災対環境への切り替えが発生します。
映画の中だと、一回目の上陸時点ではまだ、被害状況が見えないので切り替え判断は発生しないですが、二回目上陸では確実に切り替え判断が下ると思います。システム停止してからでは遅いんで。関わってるシステム屋は、メインサイトを東京に戻す時のために最低限の人員だけ東京近郊に残して、避難しつつも次の対策を打たねばなりません。

検討事項はザッと思いつく内容だと以下のようなものです。



 ・東京側のシステムへの切り戻しは可能か

データセンターがゴジラによって物理的に破壊されたとか、インフラの復旧が絶望的とかでなければ、メインシステムを東京側に戻す作業が出てきます。この際に問題となるのが保守・運用要員が通勤可能か、電力が安定供給できるか、といったことです。データセンターが物理的に無事でも、中につとめる人と電気がないと、そのデータセンターはただの"ハコ"です。3.11の時は、小さなデータセンターは、自家発電システムの能力との兼ね合いで、あまり重要ではないサーバを停止せざるを得ないなんてこともありました。



 ・関西側システムの増強検討

多くの場合、災対用のシステムは臨時で動けばいいって考えなので、東京のメインシステムより性能が劣ります。長期運用するメインシステムで使うなら、増強計画を考えないといけないです。ただし、物理的な増強は短期間では難しいですし、大手ベンダーも被災していた場合、故障時のスペアパーツすら手に入らないという事態も起こりえます。

(というか何年か前、タイで工業地帯が洪水にあったときは、スペアディスクが一時的に品薄になって苦労しました…)



 ・新規の災対システムの構築

避難が長引く場合、東京のシステムをいったん放棄して関西側をメインにする必要があります。その場合、関西のシステムに対するバックアップをもう一つ作らないといけないです。ゴジラが移動してきて関西も壊滅する、なんて状況もありえるわけですし。その場合、おそらく北海道か九州あたりが選択肢になると思います。

 北海道→夏涼しいので夏場の電力消費が少ない/ただし大きなハコがあまりなく、IT要員の確保も困難

 九州→九州電力の発電力を頼る/ただし台風や火山噴火によるリスクヘッジが必要

…ぶっちゃけ日本のITインフラは首都圏に集中しているので、どこを選定しても厳しそうですが。




東京側が完全廃棄になった場合も、東京側のシステムを停止させ、中に残っている個人情報などを削除する作業が必要なんですよね…。特に金融システムなんかだと、「もしもの時はハードディスクを物理的に破壊してこい!」的なカンジになります。

映画の中では、首都圏からの避難民が失業しているというセリフもありましたが、システム屋、特にインフラ系は、たぶん失業どころか 避難中に死ぬほど働いてる と思いますね!


 「東京が破壊されても、システムを稼動させ続ける。」

いかなる状況であってもシステムを止めないこと。
たとえ縮退運転であっても最低限の機能は稼動させ続けること。

それがシステム屋の戦いなんだっていうとちょっとカッコいいけどまぁ現場は泥沼ですお察しくださ(ry
現状でも人手たりてねぇのにゴジラが攻めて来たらもはや「物理炎上案件www」とか笑ってる余裕もなくなりそうです。リアルで東京が戦場にならないことを祈ります(´・ω・`)


*****

さて大変面白い映画だったゴジラですが、いっこだけ

映画を見に行く前にネタバレは見るな

これだけは声を大にしていっときます。レビューも見ちゃダメ。
情報は一切シャットアウトしていくことをオススメします。でないと面白みは半減以下になります。マジで。



個人のレビューなどは、見終わったあとに読むといいです。

この映画は実に優秀な 面倒くさい人ホイホイとなっておりまして、映画には憲法関連とか左右の人が好きそうなネタは一切出てこないのに、そのことをあげつらって延々と持論とか述べてる人がいるんですよw いかに普段からそのことばっかり考えているのか、いかに見た者を自己フィルタを通して歪めているのかが分かると思います。一言でいうなら"面倒くさい人"。

ひとつ例を挙げると、デモのシーンでは、「ゴジラを守れ! 保護せよ!」と、「ゴジラを倒せ! 敵だ!」の両方のシュプレコヒールが流されているそうですよ。片方しか聞こえないのは、普段から自分の聞きたいものだけ聞いてる証拠。そんな感じで、色んなところに「面倒くさい人用トラップ」が仕掛けられているのもこの映画のニクいところです。





というわけで皆、ゴジラ見に行こう。

この記事へのトラックバック