2000年以上前の古代エジプト人の顔をミイラから復元! →たぶん古代エジプト人じゃないよコレ…

時間まちでだらだらしてたときに何となく見つけた記事。

 古代エジプトの女性はこんな顔? 2000年以上前のミイラ化した頭部から復元
 http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1608/24/news045.html#l_ah_mummy3.jpg

タイトルからして「ん? 何?」ってカンジだったけど、本文も色々間違えてるなぁ。ソース記事へのリンク貼ってくれてるので、そっちを見れば内容は分かるけど、なかにちゃんと書いてあるのにそもそも何で間違えたんだよって話。

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[>大元の英語記事はこれ
https://pursuit.unimelb.edu.au/articles/brought-to-life-2000-years-later



●メリアムンではなくメリトアムンだし名前の意味が違う

Meritamun のtの字が見えない人が記事を書いてしまったらしい。
そして「メリトアムン」とは「アムン神(アメン神)に愛されしもの」ってカンジの意味であって、「女神アムン」なんていう解説は本文のどこにも書かれていない(笑)

"The team has already produced a reconstruction of the head of an 18 to 25-year-old woman who lived at least 2000 years ago that they named Meritamun, which means beloved of the god Amun."


ここでは「アメン神に属するもの(寵愛を受けたもの)」と訳されているが。
アメン神って一時期最高神やってたテーベの太陽神で、男性なんで、なんで女神と間違えたのかは謎。

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●2000年前は古代エジプトじゃない、この人ギリシャ人かもしれない

何回も言ってますけど古代エジプト王朝最後の女王、クレオパトラ7世が亡くなったのは紀元前30年です。
今から2000年前のエジプトはローマ属領です。
あとクレオパトラの属していたプトレマイオス朝はギリシャ系の支配者が統治した外来人王朝です…。

「古代エジプト」と言うなら、せめてプトレマイオス朝が始まる前の紀元前4世紀あたりまでだなぁ。



本文中では、このミイラの正確な年代がわからなくて、もしかしたら紀元前1500年くらいまで遡るかもしれないと言ってますが、歯に虫歯の跡があるとのことなので、砂糖が伝来したグレコ・ローマン時代(=プトレマイオス朝以降)ってのが妥当だと思うな。(※) つまり今から2000年ちょっと前くらい。

(※エジプトでは蜂蜜も食べられていたので、蜂蜜でも虫歯にはなります。本文にもそれは書かれている。ただしエジプトの若い貴人のミイラから虫歯の痕が見つかることはあんまり無い。余程大量に食べるしかいないと…。砂糖で虫歯になったほうが可能性は高い)


そして思い出してください、上に書きましたが、プトレマイオス朝はギリシャ系の外来人王朝です。
このミイラが、手の込んだミイラ処置からして貴人なのは間違いないですが、プトレマイオス朝の貴人だった場合は… 支配者層はギリシャ系なので… ほぼ確実に、エジプト人では無いです。

もちろん地元エジプト人と外来のギリシャ人との混血も多かったので、ハーフとかクォーターの可能性もありますが、「古代エジプト人」の代表的な外見とはおそらく違いますよね。




というわけで現状、この顔は古代エジプト人じゃなくて古代ギリシャ人の顔になってる可能性があります(笑) 

ていうか時代がグレコ・ローマンって確定すれば、ほぼ確実にハーフとかクォーターじゃないのかな…。名前もメリトアムンなんていう純エジプト風じゃなくて、クレオパトラとかベレニケとかセレーネとかいうギリシャ風の名前だったと思うよ。



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メルボルン大学がこのミイラを入手した経緯は不明みたいだけど、本文を読むと、はるか昔にエジプトで調査をしていたフレデリック・ウッド・ジョーンズ教授(1879~1954年)のコレクションの一部だったんじゃないか、と書かれてる。そのくらい昔ならエジプトからミイラの持ち出しはフリーダムだったし、記録も散逸してそうだと思う。

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