ネイティブなカナダ人の60%は移民後に死亡している、という研究

およそ175年前に人口の激減があり、約9000年に渡って持続してきたカナダ土着民のコミュニティの60%程度の人口が失われたと思われる、という記事。原因はヨーロッパからの入植者が持ち込んだ疫病など。まぁ中南米と一緒のパターンですね…

Almost 60% of ancient native Canadian community died within years of European settlers arriving, study reveals

http://www.independent.co.uk/news/science/first-nations-canada-european-settlers-diseases-killed-almost-60-genetic-study-british-columbia-a7418441.html

ただ、比較対象として調べてる古代人と現代カナダ人がそれぞれ25人しかいなくて、サンプル数として妥当なのかどうかは自分では判断がつかない。近代の混血のないサンプル、って絞ったから人数が少ないのかもしれないが。

興味深かったのは、どの程度の人口減があったかより、人口減の原因の部分だ。

途中に出てくるHLAっていうのがわかんなかったのでググってみた。どうやら白血球の抗原らしい。白血球さんは体に入って来た異物を倒しにいく血中ウォリアーさん。なので、ネイティブ・カナディアンの多くの持っていたその抗原型が、ヨーロッパ人の持ち込んだウィルスに対して不利だったために人口の減少を引き起こしたと推測される、ということらしい。現在生き残っている人たちは、かつては少数派(生存に不利)だったHLAの持ち主、ということになる。

遺伝的な多様性は、こういうときのためにある。
普段は不利に見える性質も、状況が劇的に変わる瞬間には突然強みに変わったりする。いわばトランプゲームの大富豪で富豪と平民が入れ替わる瞬間だ。これだから生物の生存戦略は面白い。繫栄を極めた生物が突然絶滅して少数派が台頭しはじめるような減少は、多種族間だけじゃなく一地域の人間集団の中でも起こりえるということだ。

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…ところで、もし本当に60%が消滅してたとしたら、現代人のゲノム分布って植民前と全然違うことになるんじゃなかろうか。現代人の遺伝子解析で人類の旅路を探る云々とかやってるのには関係しないのかどうか、ちょっと気になる。

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