このジャンルの学者の苦労がよくわかる…「人類の足跡10万年全史」
ザックリ言うとアフリカを出たあとの人類がどうやって世界に拡散していったのかっていう話の本。
「10万年」は、諸説ある中で最も古い年代を採用してのアフリカ以後の時間だと思われる。
ちょっとデータ古いとこあるかな? と思ったけど、原著は2003年に出たものらしいから妥当。ここ10年分くらいは入ってないけど、全体的に面白い本だった。
で、この本、内容の半分くらいは必死に以下を主張してます…。
・アフリカからの人類の拡散は、ただ一度。つまり白人もモンゴロイドもみんな10万年前は一緒
・ヨーロッパ人はべつに特段優れてないよ。石器の発明も壁画なんかのクリエイティブな発想も、アフリカを出る時点で人類が既に持ってた能力だよ
そんなの当たり前じゃね? って思うかもしれないけど、必死に否定しなきゃならないのは、つまりそれを強固に信じてる人が本の著者の見ている世界にいるから、ってことなんだ。人類の起源は一箇所ではなく複数あって、「優れたる」ヨーロッパ人と「劣った」それ以外の人間は別の起源を持ってるんだ、と信じたい人が世の中にいるんだ。日本で見かけないだけで…。
ここらへん、学者さんの苦労がほんとしみじみうかがえる。
まずそこの先入観をとっぱらわないと話も始められないんだなぁ、って。みんな同じ種族なんだから基礎能力は同じに決まってんじゃん特化の方向とかの違いでしょ、って思うんだけど、そうじゃない人も多いんだろうな…。
というわけで本編。
最初に「ほほう」と思ったのがこれ、人類がアフリカを出た時点では、インド~アジア方向にしか進める道がなかった、というもの。自分、このへん時系列が良く判ってなかった。
アフリカからの脱出ルートは、昔は「陸続きなんだしエジプトからシナイ半島でしょ」と言われてたんだが、最近では現在のソマリアあたりからアデン方向に海を渡っていたことがほぼ確実になっている。これを裏付ける考古学的な遺跡も、近年いくつか見つかっている。ただ、その時代というのは、海伝いに緑地を辿ってインドまで行くことはできても、気候的に内陸は砂漠になっていて、当時の人類では居住不可能な世界だった。
そう、だからヨーロッパよりオーストラリアの岩絵のほうが古い!!
オーストラリアから古い石器が見つかるのも、約7万年から7万4000年前くらいに発生したとされるトバ火山の大噴火の灰の下から(つまりそれ以前の時代の地層から)石器が出てくるのも、そういうことなんだ。色々繋がった。
人類がヨーロッパとかエジプト方向に移動できるようになるのは、気候が変わって"緑の回廊"が繋がる5万年くらい前から!
つまりだから、アボリジニの祖先はヨーロッパに人が住みつくより前からオーストラリアで絵描いてたってことなんだよ。言いたいことが判ってくると、「なるほど、これは白人至上主義の人からしたら受け入れられんだろうなぁ」っていうのも薄々感じられるようになってくる。とっても面白い。
アフリカからの脱出ルート、最初に海を渡った年代については、当時の海水レベルを測定して割り出しているんだけど、その方法は唸らされるものだった。なんと海のプランクトンレベルを調べてる。
寒くなって海の潮位が下がる→水位が下がる→紅海の出入り口が塞がれる→紅海の水が干上がって、塩分濃度が上がる→プランクトンが死ぬ。
当時はまだスエズ運河なんてないので、紅海の唯一の出入り口が詰まってくると海水が十分に循環せずに紅海の塩分濃度が上がってプランクトンが減ってしまう。つまり海底に降り積もってるプランクトンの量を調べれば、気候変動の証拠がつかめるよ! ってことなのだ。学者さん頭いいな…。
それによると、気候の急激な悪化は8万5千年前くらいで、それによって海岸にいた人類は食料の安定して得られる新天地を目指さざるを得なくなった可能性があるという。そして、オーストラリアまで到達した。
一方で、インドあたりに定住していた人類は、実はインドネシアのトバ火山の噴火でいったん絶滅している可能性がある、という。なのでインド付近の遺伝子の分布は、インドの東西から再入植されて広がってきた痕跡を残しているとか。インド丸々降灰範囲に入ってるとか、やっぱトバさん凶悪火山だわ。
あと最後の方に書かれているけれど、繫栄を謳歌してるように見える人類も、実は最終最大氷河期でかなり大量に死んでて、遺伝的な多様性が失われたままいまだそこからの回復途上にある、という見方は、なるほどと思った。いま残ってる遺伝子より、失われた遺伝子のほうが多い。生き残るって本当に大変だよなあ…。
という感じで、10万年の紆余曲折の旅について色んな事件を知ることが出来て、よく人類いままで行きてられたなって気分になるので、ちょっと話長いけどこの本おすすめ。あとね、やっぱりね、人間を動かす最大の原動力は「ごはん」だと思うのです。
「10万年」は、諸説ある中で最も古い年代を採用してのアフリカ以後の時間だと思われる。
ちょっとデータ古いとこあるかな? と思ったけど、原著は2003年に出たものらしいから妥当。ここ10年分くらいは入ってないけど、全体的に面白い本だった。
で、この本、内容の半分くらいは必死に以下を主張してます…。
・アフリカからの人類の拡散は、ただ一度。つまり白人もモンゴロイドもみんな10万年前は一緒
・ヨーロッパ人はべつに特段優れてないよ。石器の発明も壁画なんかのクリエイティブな発想も、アフリカを出る時点で人類が既に持ってた能力だよ
そんなの当たり前じゃね? って思うかもしれないけど、必死に否定しなきゃならないのは、つまりそれを強固に信じてる人が本の著者の見ている世界にいるから、ってことなんだ。人類の起源は一箇所ではなく複数あって、「優れたる」ヨーロッパ人と「劣った」それ以外の人間は別の起源を持ってるんだ、と信じたい人が世の中にいるんだ。日本で見かけないだけで…。
ここらへん、学者さんの苦労がほんとしみじみうかがえる。
まずそこの先入観をとっぱらわないと話も始められないんだなぁ、って。みんな同じ種族なんだから基礎能力は同じに決まってんじゃん特化の方向とかの違いでしょ、って思うんだけど、そうじゃない人も多いんだろうな…。
というわけで本編。
最初に「ほほう」と思ったのがこれ、人類がアフリカを出た時点では、インド~アジア方向にしか進める道がなかった、というもの。自分、このへん時系列が良く判ってなかった。
アフリカからの脱出ルートは、昔は「陸続きなんだしエジプトからシナイ半島でしょ」と言われてたんだが、最近では現在のソマリアあたりからアデン方向に海を渡っていたことがほぼ確実になっている。これを裏付ける考古学的な遺跡も、近年いくつか見つかっている。ただ、その時代というのは、海伝いに緑地を辿ってインドまで行くことはできても、気候的に内陸は砂漠になっていて、当時の人類では居住不可能な世界だった。
そう、だからヨーロッパよりオーストラリアの岩絵のほうが古い!!
オーストラリアから古い石器が見つかるのも、約7万年から7万4000年前くらいに発生したとされるトバ火山の大噴火の灰の下から(つまりそれ以前の時代の地層から)石器が出てくるのも、そういうことなんだ。色々繋がった。
人類がヨーロッパとかエジプト方向に移動できるようになるのは、気候が変わって"緑の回廊"が繋がる5万年くらい前から!
つまりだから、アボリジニの祖先はヨーロッパに人が住みつくより前からオーストラリアで絵描いてたってことなんだよ。言いたいことが判ってくると、「なるほど、これは白人至上主義の人からしたら受け入れられんだろうなぁ」っていうのも薄々感じられるようになってくる。とっても面白い。
アフリカからの脱出ルート、最初に海を渡った年代については、当時の海水レベルを測定して割り出しているんだけど、その方法は唸らされるものだった。なんと海のプランクトンレベルを調べてる。
寒くなって海の潮位が下がる→水位が下がる→紅海の出入り口が塞がれる→紅海の水が干上がって、塩分濃度が上がる→プランクトンが死ぬ。
当時はまだスエズ運河なんてないので、紅海の唯一の出入り口が詰まってくると海水が十分に循環せずに紅海の塩分濃度が上がってプランクトンが減ってしまう。つまり海底に降り積もってるプランクトンの量を調べれば、気候変動の証拠がつかめるよ! ってことなのだ。学者さん頭いいな…。
それによると、気候の急激な悪化は8万5千年前くらいで、それによって海岸にいた人類は食料の安定して得られる新天地を目指さざるを得なくなった可能性があるという。そして、オーストラリアまで到達した。
一方で、インドあたりに定住していた人類は、実はインドネシアのトバ火山の噴火でいったん絶滅している可能性がある、という。なのでインド付近の遺伝子の分布は、インドの東西から再入植されて広がってきた痕跡を残しているとか。インド丸々降灰範囲に入ってるとか、やっぱトバさん凶悪火山だわ。
あと最後の方に書かれているけれど、繫栄を謳歌してるように見える人類も、実は最終最大氷河期でかなり大量に死んでて、遺伝的な多様性が失われたままいまだそこからの回復途上にある、という見方は、なるほどと思った。いま残ってる遺伝子より、失われた遺伝子のほうが多い。生き残るって本当に大変だよなあ…。
という感じで、10万年の紆余曲折の旅について色んな事件を知ることが出来て、よく人類いままで行きてられたなって気分になるので、ちょっと話長いけどこの本おすすめ。あとね、やっぱりね、人間を動かす最大の原動力は「ごはん」だと思うのです。




