旧約聖書に、らくだがいることに気づく。→あれ? まだ飼育始まってないんじゃね?

なんとなーく見てた旧約聖書絵に、ふつーにラクダが登場してて「あれ…? 時代設定これいつだっけ…?」ってなった、という話。

画像

※これはドレ画


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★前提条件★

らくだは最初は食肉動物で乗り物ではありません。紀元前3000年くらいのらくだは、狩って肉をたべる野生動物扱い。飼育開始はおそらく紀元前2000年前後。
アラビア半島外で飼育が始まるのは紀元前1200年くらいからで、エジプトで家畜として使われ始めるのは紀元前6世紀から。

参考: 古代エジプトとラクダ使用の歴史
https://55096962.seesaa.net/article/201006article_8.html
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ヨセフの時点で既に絵にらくだが出てきてるんだけど、てことはギリギリで時代的にいけなくもない…けど、まだ大規模な飼育は始まっていないし、「乗り物」という利用はしてないはずなんですよね。最初の目的が、牛や羊と同じで「肉と乳」「ついでに皮とかもとれるといいな」ってものなので。飼育の始まった当初は、鞍とか開発されてないので、まずらくだに乗れないです。 らくだに安定して乗れるようになるのが紀元前1000年前後の技術革新です。

同じようにウマも、鞍が出てこないうちは長距離用の乗り物にはならないです。
馬の鞍もラクダ同様に紀元前1000年前後に発明されてて、それ以前だと布を敷いて乗るのが精々で、あまり乗り心地がよくなく、かつ乗るのに技術もいるので騎兵なんかは出てきません…


参考: 古代エジプトに騎兵はいないが、「もしも馬に乗れる人がいたら」という仮定で話をする
https://55096962.seesaa.net/article/201601article_9.html


ちゅうわけで、ラクダや馬に「騎乗する」という概念が出てきてる時点で、そこの部分の成立は紀元前1000年以降なんだな、って判っちゃうわけですねー。
たとえば「出エジプト記」の「疫病の災い」の部分。

"もしあなたが去らせるのを拒み、なおも彼らをとどめておくならば、見よ、主の手が甚だ恐ろしい疫病を野にいるあなたの家畜、馬、ろば、らくだ、牛、羊に望ませる。"


ここね、モーセが「いた」と設定されている時代がラメセス2世の時代だったと仮定すると、紀元前1300年~1200年で、辛うじてらくだが家畜化されていた時代だけれど、まだそれほど数は多く無く、エジプトでは一般的でないんですね。馬も同様で、軍用がメインだし一般庶民の家畜ではない。

荷物運ぶならロバが一般的な時代において、ロバと同等の扱いで馬とらくだが出てきているということは、ここの部分が書かれた時代は、おそらく両者が一般的となる紀元前600年くらいまでは新しくなると思う。



まあなんだ、そもそも旧約聖書自体が後世に編纂された神話全集みたいなノリなんで、史実と関連づけるとおかしくなるのは当然で、これもその証左の一つ、というわけっすね。

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