アイスランドで15世紀初頭に流行した謎の伝染病の正体がマジで謎な件

最初にこの情報を読んだのは「アイスランド小史」という本。
アイスランドの歴史を辿る、グンナー・カールスソン(Gunnar Karlsson)の本の和訳だ。

アイスランド小史
早稲田大学出版部
グンナー カールソン

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ざっくり概要を言うと、流行が始まったのが1402年で、1404年までに島全体に広がったのが一回目。
二回目は1494年~1495年。
しかしアイスランドの風土病にはならず、その後は発生していないらしい。
「アイスランド小史」のほうだと図がかなり省略されてしまっているのだが、原著のほうだとこんなかんじで疫病の伝播の図が載っている。

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その後の16世紀にまとめられた資料から、このときの人口減は50-60%にも達するという。

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最初は黒死病か何かかなぁと思っていたのだが、その後、エジプト関連のあれやこれやのついでにペストや黒死病の歴史を辿って、知識が増えてから読み直すと、あれっと思った。

 ・流行が始まったのは8月だが、その後、冬を越えて1年以上も流行している
 ・そもそも夏の気温でさえ15度前後の気温しかなく、冬場はウィルスの活動下限を下回る
 ・アイスランドにはネズミが生息してないためネズミの媒介は無い

そしてペストの場合だと、一度出来た抗体が10年ちょっとで切れるはずだが、このアイスランドの疫病は、再流行まで90年もかかっている。

流行の発端が現在のレイキャビク周辺っていうことは、よそから船で運び込まれたんじゃないかなぁ…とも思うのだが、それにしては同時期のアイスランド以外では流行していないし、そもそもアイスンランドの冬の気温と乾燥に耐えられるウィルスなんているかな? っていうのが疑問。何しろ離島のことだし、司教座が放棄されてるくらいだから記録を残しそうな聖職者も真っ先にやられてるしで、リアルタイムの詳細な記録がなくて正体が分からない。

この病気は一体なんなんだろうか…。

疫病の歴史に詳しい人ちょっとチャレンジしてみてくだされ。



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※「ペストである」と書いてある本もある。が、ペストである確固たる証拠が無く、「なんとなくペストにされてるけど、これほんとにペストだったの?」というのがこの記事の主題です。アイスランドの町と町の間はかなり離れており、隣の町まで数日かかるとかザラ。さらに一年を通して気候は乾燥・寒冷なのでペスト菌の流行には厳しいので、そのへん巧く説明できるかどうかってことです。

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現地確認

レイキャビクの「サガ・ミュージアム」では黒死病(ブラック・デス)として展示してありました。イギリスからはいって、アルシングで人が集まったときに集団感染した、というストーリーのよう。
国立博物館は行く時間がなかったので未確認…。

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