「バビロニア復興したで!」から「ごめん滅びたわ」まで。ネブカドネザル2世とその時代

移動中に読む本探していたら、世界史リブレットでネブカドネザル2世のがあったので、またマニアックなところを…と思いながら読んでみた。

ネブカドネザル2世: バビロンの再建者 (世界史リブレット人)
山川出版社
山田 重郎

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ネブカドネザルって誰よ、という話だが、ザックリ言うと

 ・新バビロニアの王。「新」とつくのは、バビロニアは一度アッシリア傘下に入っていて、そこからの復興王朝だから
 ・バビロン捕囚をやった人。なので当然、旧約聖書にも出てくるのだが、エジプトの王と違って扱いがわりといい。近い国には気遣いするが遠い国には強気に出る旧約聖書編纂者。

という感じ。
ちなみに「2世」とついているが、1世のほうはイシン第二王朝のAUOもとい英雄王で、時代が600年くらい離れて居る。2世は伝説の王の名前にちなんで名前をつけられたのかもしれないが、1世とは直接的な血のつながりや王朝の系譜の連続は存在しない。


読んだ感想としては、リブレットシリーズらしく、薄い本の中でも良くまとまっていて、まあまあ、といったところ。ただ面白いなと思ったのは、そもそもネブカドネザル2世がこのシリーズの中に入っていることである。
「世界史」リブレットなので、神話・伝説上の人物は扱えない。あくまで「歴史」としてのシリーズである。なのでどこまでが歴史でどこから伝承なのかがハッキリしなかったり、伝説しかなかったりする人物は扱えない。ムハンマドは多分いけるだろうが、イエスはムリだろう。ネブカドネザルも1世だと「史実」としてはネタが少なすぎて多分書けない。でも、このネブカドネザル2世は、史実ネタで1冊出来ていて内容も妥当。なるほどこのあたりの人物からならOKなんだな…と思いながら読んでいた。聖書に出てきたり、伝説も多い王様だけど、どこから史実として確実かという線引きが出来れば、確かに問題はない。

さて、その「線引き」の部分だが、どこらへんで線を引かれているかというと。

 ・バビロン捕囚は史実
 ・当時のバビロニアの都市マップも存在するので規模はだいたい判る
 ・エジプトとの交戦も史実
 ・おそらく王家の一族ではなく父の代に一般人から即位
 ・バベルの塔の元になったのは、ネブカドネザル時代の壮麗なバビロニンに聳えていたエテメンアンキ(マルドゥクの神殿)の可能性が高い

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↑史実
伝説or旧説↓
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 ・空中庭園が存在した証拠はなく、都市プランからしてもおそらくない
  元ネタはアッシリアのほうと思われる
 ・海の国との結びつきの証拠はない、ウルク出身のほうが可能性がある

という感じ。

ハビロン捕囚といえばバビロニアへ連れていかれたユダヤ人が空中庭園を見てビビる、というシーンが印象的なのだが、実際はそんな庭園がバビロンに存在した証拠はないという。新アッシリアのほうには確実にあったらしいのでそっちじゃね? という説が紹介されていて、ああなるほど…と思った。神話伝承って時代や場所を越えて色んなものがごっちゃになるもんだから、その説明なら納得できるなと。



ちなみに新バビロニアの栄光の時代は短く、最盛期は87年しかない。親子三代分である。そのうちネブカドネザル2世の在位は、紀元前605年から562年の43年。ほぼ半分が彼の仕事。
偉大な王の没後にはよくあるパターンで、新バビロニアの栄光はネブカドネザル2世の死後、たった24年で霧散してしまう。紀元前539年、アケメネス朝ペルシャの到来によって無血開場、新バビロニアの時代は終わり、東方から来た新たな東地中海の覇者が君臨することになるのである。そこからはジャンル違いとなってしまうので、メソポタミアの本は、だいたい新バビロニアが滅びたあたりで終わっている。

ネブカドネザルの名は、本の最後に出てくるお馴染みの名前でもあるのだった…。

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