ヴァイキング・ソードをスキャンする/ヴァイキングたちの武器とは?

年度末終わったやったー! と思ったら4月からの組織改変で人使いの荒いえらい人が上について酷い目にあっている中の人ですこんにちは。だが! どんなに! 忙しくても! 俺の魂の半分は自由なままだー(ヒャッハー
というわけで魂の旅先から受信した電波を解析してメモっておきますよ。



デンマークのナショナル・ミュージアム所蔵のヴァイキングの剣3本をスキャンして材質や製造方法を調べてみようというプロジェクト。結果は「この剣、強度足りなくて実用向けじゃないっぽいよ」という結果だった模様。

Scans of Viking Swords Reveal a Slice of Norse Culture
http://www.livescience.com/58654-viking-sword-scans-reveal-norse-culture.html

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まず前提として、ヴァイキングの主要な武器は剣じゃないです。

記事の中に「ヴァイキングにとって剣は儀礼的な意味のもの、権威の象徴である」という記載がありますがそのとおりで、実は耐久性あんまよろしくない剣が多いです。現存するヴァイキング時代の剣は2000本ほど、その中から今回は3本が調査されています。

その結果、すべて同じ製法で、異なる種類の鉄と鋼を溶接して組み合わされてるらしいことが判明。鋼のほうが鉄よいので、戦闘用として強度を上げたいなら刀身に鉄を入れて刃の部分を鋭い鋼にしないとうまくいかないはずなのに、そうはなっていない。また溶接された素材の間に酸化物が入り込んでおり錆びやすくなっている可能性がある、とも。

この剣での素材の使い方は、刀剣愛好家などに販売されている"なまくら"と同じ、ということみたいです。

というわけで、これらは「儀式用とか身分の高い人の装飾用とかだったんじゃないかな」というお話に。


ちなみにネットでヴァイキングの剣とかググるとやたらと出てくる「イングレイリ」とか「ウルフベルト」とかいう刀匠の名前の入ってる剣ですが、これらはライン地方(今でいうドイツあたり)から輸入されたもので、刃だけ輸入して柄を組み合わせるということをしていたので、ぶっちゃけヴァイキング自身は刀匠スキルはそんなに高くなかっただろうというのが有力な説。高貴な身分を表すのには使われてたけど、実際の戦闘での活躍率は低かったろうということです。当時の戦闘法からいっても、剣はすぐ曲がるか刃毀れするかしてしまうので、じつは、あまり実用的ではない…。



じゃ何を使って戦ってたんだよって話ですが、短剣とか手斧とかとかですかね!

<再現図>
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*出典元「世界の生活史6 ヴァイキング」

絵の中のツノのついてる兜に文句いう人がいそうですが、ツノつきの兜はね、儀式用としてはあった可能性があるんで。


[>参考とおまけ

よく言われる「ヴァイキングは本当はツノつき兜なんか被らない!」の真相。
https://55096962.seesaa.net/article/201604article_5.html

戦乙女<ヴァルキリー>と羽根つきヘルメット なぜ鳥の羽がつくようになったのか
https://55096962.seesaa.net/article/201603article_7.html


その左横の、頭の上になんか載ってる兜は現存してます。フレイ神の象徴であるイノシシがのってます(笑)

[>参考
神の加護を受けし兜/現存するアングロ=サクソン時代唯一の兜、「ベンティ・グレーンジ・ヘルメット」
https://55096962.seesaa.net/article/201608article_19.html

あとサットン・フーのおもがい付き兜もイラストに出てますね。厳密な意味でのヴァイキング時代の兜が残っていないので、近隣の時代・地域のものから再現してるイラストです。


絵の中には残念ながら出してもらえてないんですが、ヴァイキング行にいくなら手斧絶対忘れちゃだめですよ浮きますよ、手斧扱えない奴ヴァイキング名乗れない、これほんと重要。
男のロマン、手斧!

叩き割って良し、断ち切って良し! 夕飯の支度に使う薪割りにも、キャンプをこしらえるのにも使えていいことづくめ。戦闘力とともに生活力もアピールして、意中のあの娘をゲットしちゃお☆

サクスという名前で呼ばれる短剣も出てきてませんが、一人一本身につける類の必需品です。片刃のもので、これは女性も使ってたことが分かっています。憎いアイツの喉をかききってもよし、ヒツジの皮をはいでもし。便利なスグレモノ。

他には「エッダ」の中で神々が使う武器としても登場する槍、大弓。このへんがヴァイキングの武器一式。




というわけで、だいぶ脱線しましたが、最新技術を使えば現存する武器の強度や実用性が破壊せずにわかるようになってきたっていうのは実に面白いです。果たして残っているヴァイキングの剣の中に、実戦用のものはどのくらい残っているのか。ヴァイキングたち自身の冶金術レベルはどんなもんだったのか。そのへんのデータが出てくると面白いと思います。
同じゲルマン系でもブリテン島に渡った人らと南下してドイツ付近やイタリア付近まで行った連中とじゃだいぶ文化も違ってたりするんで、そのへんの差異も面白いかも。

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