統計データの面白さ 海外旅行

ニュースで流れる内容が正しいかどうかを確認するために、元データを追うことはたまにある。
今回は海外旅行の動向のデータを探してみた。

6.海外旅行者の旅行先トップ50(受入国統計)2016年版
https://www.jata-net.or.jp/data/stats/2016/06.html

ここで気にしていたのは日本からエジプトへの観光客数である。
最近、エジプトさんは「日本人旅行者が戻ってきつつある」と言っている。しかし大手旅行各社のツアー内容などを見るに、エジプト行きはかなり厳しい。

2014年度までしかないが、実際に数字を見てみると、こうなっている。

2011年度 27,635人(前年比 -78.1%)
2012年度 39,008人(前年比 +41.2%)
2013年度 31,181人(前年比 -20.1%)
2014年度 12,352人(前年比 -60.4%)

エジプトでは2011年にクーデターが発生し、それ以降の治安はあまり改善されていない。IS系組織のテロも相次いでいる。
そのせいもあって敬遠する人は多く、観光客は全く増えていない(むしろ減っている)ことが判る。たとえ2015年、2016年と観光客が増えていたとしても、さほど大幅な増は見込めないだろうし、「観光客が戻って来た」は言いすぎじゃないのかなぁというカンジである。

なお、この統計は「旅行」として出されているが、ビジネス客も区別なく含まれている気がする。
中国や韓国など近隣の国の旅行数が多いのはビジネスで往来しているからだと思われる。それを引いて考えると、ハワイの圧倒的な人気ぶりが伺える。そりゃあ現地で普通に日本語が通じるわけですよ…。



次に気になっていた年齢別の海外旅行数である。
https://www.jata-net.or.jp/data/stats/2016/07.html

金を溜め込んでいる高齢者が多いんだろう、と思うかもしれないが、実際に多いのは今も5年前も20代~40代。
内訳のExcelをダウンロードしてみたが、多い職業は「学生」「専門職」であり、「販売・サービス」と「主婦」が続く。高齢者は国内旅行比率が高い。

ここから読み取れるのは、年取って体力がなくなったらそもそも海外まで出られなくなるんじゃないか、ということだ。
たまに「年取って引退したら海外旅行で豪遊したい」みたいな話をしている人もいるが、海外旅行は若いうち向けなのかもしれない。


海外からの入国者数も見てみた。
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/index.html

近隣から来てる人数が多いのはまぁ当然として、あとはドイツイギリスフランスあたりの欧州。ただ何故スペインがこんなに多いのかは分からない。

スペイン人の来日動向を見るに、東京からINして京都とかで寺社巡りしてるっぽいのだが…。
http://www.jnto.go.jp/jpn/inbound_market/market_basic_spain.pdf


ついでに入国者の消費金額。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

意外だったのだが、「爆買い」で知られる中国人よりスペインとオーストラリアの旅行支出のほうが多い。

スペイン(24万9千円)、オーストラリア(24万1千円)、中国(22万5千円)

中国からの来日者は人数が多いわりに支出の差が大きいということだろうか。オーストラリア人はオーストラリアが夏になる冬季の北海道にスキーしにきてるのをめっちゃ見かけるので、スキーに金をかけているのではないかと思われるが、スペイン人が何に金を使っているのかが良く分からない。単に1億くらい使った代富豪が一人混じってたとかなのだろうか? 面白い発見をしてしまった。

ただしこれは「ひとりあたり」の消費額なので、訪日絶対数の多い中国人のほうが日本にカネを落としていってくれているのは確かである。



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と、いう感じで、元データを眺めないと気がつかないことは色々ある。統計データの面白さは一言では言い表しにくいが、「自分にしか見えない答えがそこにある」みたいな部分だろうか。対象は別に何でもいい。データは適切な方法で処理しないとただの数字の羅列だが、処理さえ出来れば意味を持つ。

…ただし、解析方法によっては恣意的な答えを出すことも出来るので…そこは社会統計学とかを勉強して回避しよう!!

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