【聖地巡礼】アルシング会場に行ってきた。「声が反響する」説はどうやら間違いっぽい
法の岩の上で「法の宣誓者」が声を出すと背後の岩壁に声が反響して聞こえやすい、みたいな話が本に書かれてるんだけど、現地でやってみたら全然そんな効果なかったよ…。
効果としては「若干、声にエコーがかかるので威厳は出るかもしれない」ってくらい。あと多分、背後の岩壁が城壁みたいな模様になっていることによる視覚効果+原っぱから見えやすい高台になってる、っていうくらい。
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●前提知識●
アルシングとは?
英語でいうと、アル=All シング=thing。アイスランドの「全島集会」、いわゆる国会のようなもの。
アイスランドはほぼ無人の島であったところにノルウェーから移住したヴァイキングたちが中心となって国が作られた。移住は8世紀末から行われていたが、全島集会の開始は930年の夏とされる。世界初の民主制とか世界初の議会などと呼ばれることもあるがそれは正確ではない。実体は、各地の有力首長(地主、ゴジと呼ばれる)を中心とした大規模町内会である。
アルシング会場のことはシングベリール(議会の原)と呼ばれ、毎年の6月初旬に島中から人が集まり、親族との交流、ニュースの交換、縁談の取り纏め、揉め事の仲裁などを二週間かけて行った。また口承で法律が伝えられており、「法の宣誓者」と呼ばれる代表者が「法の岩」の上から大声で暗誦して民衆に伝えていた。
民主的な政治の場のように聞こえるが、残念ながら実際はわりと暴力沙汰や決闘もあったようで、アイスランド・サガにはそうした場面が良く出てくる。最も、普段あまりないことだからこそサガとして記憶に留められたのかもしれないが。
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というわけで古代北欧史スキーにとっての聖地、シングベリールにちょっと行ってきた。
え、行き方? 直行便はないので、オスロとかコペンハーゲンとかヘルシンキとか、どっか適当な北欧の空港で乗り継ぎすればいけるよ! ちなみに首都レイキャビクからシングベリールはバスで1時間半くらい。レンタカーでも行けなくは無いけど途中の道が 北 海 道 か よ っていうくらい何も無いので、パンクしたり脱輪したりしたら地獄見ると思って自己責任でオナシャス。私は大人しくバスツアーに参加しました…。
というわけで、↓の見取り図(出典元:サガとエッダの世界)を参考に写真をドウゾ。
●「法の岩」
岩自体は平たくて草に埋もれている。岩の上に立って喋ったんだろなコレ、っていう感じ。
だが思ったより小さかった…。
そして背後の岩壁との高低差があんまりなくて「??」ってなった。
なお岩の手前はこんな感じで柵があるので近づくことは出来ない。
ちょっとカメラを引いてみたところ。人物との対比で大きさがわかるかと思う。
なお、ずっと気になっていた岩の裏側の崖は…
こんな感じでした。
背後に見えてる岩壁との間にかなり距離があることが判るかと思う。
●シングベリール
岩の前から見下ろした原っぱ。この目の前で法廷が開かれていた。
いちおうその跡地みたいなのはあるんだけど、草に埋もれてるちっちゃい円座みたいなやつで、うーんここなの? ううーん…みたいな。
だいぶ空想力頑張らないと、ここで全島集会が行われたとは想像しにいくいっス。
●アクサ川と滝
議会の原を流れるアクサ川が滝になってるとこ。
法の岩から1キロくらい離れている。けっこう歩く…
滝のあたりにあったアルシングでの決闘のパネル。
人を殺した場合の裁判もアルシングで行われ、一般的には被害者側の親族に対してお金を支払うことで仲裁されていた。奴隷の場合は安く、自由民の場合は高い。ただし血讐(フェーデ)という言葉が示すように、殺人に対して黙っていることは「不名誉」でもあった。そのため遺族が賠償に納得せず、互いの一族郎党を巻き込んだ紛争になることは珍しくなく、そのうちのいくつかはサガとして語り継がれた。
ちな、この滝のあたりから道がいくつかに分岐しているんだけど全部徒歩で回ろうとすると半日がかりになると思う。
●大地の割れ目「ギャヴ」
歴史に興味がない人にとっては、この場所は二つのプレートがぶつかりあう境界線が見られる地質学的に面白い観光名所だろうと思う。北米プレートとユーラシアプレートが毎年少しずつ離れてゆこうとした結果できたのが、この割目。アイスランドは「火山の島」で地震も多いが、それはこの二つのプレートの境界だからなのだ。もっとも四つもプレートが重なってる日本よりは少ないんですけどねHAHAHA。
ビジターセンターからは、割れ目を下りていくと「法の岩」に辿り着ける。
散策の道は割れ目を埋めたててつくられている。
埋め立ててない部分の底のほうをのぞいたらけっこう深かった。そして底にまだ雪が残っていた…。
****
で、ここに行ってみてわかったこと。
・5月初旬はまだ雪が残ってる、クッソ寒い
全島集会が6月なのは、それより前の季節だと寒くて集会出来ないからと思われる
・アイスランドは風が凄まじく強い。ガンガン風が吹きつけてくる原っぱでの集会は声が聞こえづらい。
それは「法の岩」周辺でも一緒。よってこの場所が声の響きやすさで選ばれたという説はだいぶ疑問。声の通りやすさだけなら岩と岩の間とかでやったほうがマシ
・法の岩と背後の岩壁の間はかなり離れていて、岩の前から声を出してもうまく反響してくれない。多少エコーがかかるくらい
というわけで、冒頭に戻る。
「法の岩」で法を宣誓したのは声が響きやすかったから、という説があるが、私はその説はあまり支持出来ないと思った。だって声ぜんぜん響かないし風に邪魔されるんだもの…。背後の岩壁による視覚効果とかのほうが主要な理由だと思うよ。
現地に行かないと判らんことは一杯ある、だから冒険クエストは面白い。
効果としては「若干、声にエコーがかかるので威厳は出るかもしれない」ってくらい。あと多分、背後の岩壁が城壁みたいな模様になっていることによる視覚効果+原っぱから見えやすい高台になってる、っていうくらい。
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●前提知識●
アルシングとは?
英語でいうと、アル=All シング=thing。アイスランドの「全島集会」、いわゆる国会のようなもの。
アイスランドはほぼ無人の島であったところにノルウェーから移住したヴァイキングたちが中心となって国が作られた。移住は8世紀末から行われていたが、全島集会の開始は930年の夏とされる。世界初の民主制とか世界初の議会などと呼ばれることもあるがそれは正確ではない。実体は、各地の有力首長(地主、ゴジと呼ばれる)を中心とした大規模町内会である。
アルシング会場のことはシングベリール(議会の原)と呼ばれ、毎年の6月初旬に島中から人が集まり、親族との交流、ニュースの交換、縁談の取り纏め、揉め事の仲裁などを二週間かけて行った。また口承で法律が伝えられており、「法の宣誓者」と呼ばれる代表者が「法の岩」の上から大声で暗誦して民衆に伝えていた。
民主的な政治の場のように聞こえるが、残念ながら実際はわりと暴力沙汰や決闘もあったようで、アイスランド・サガにはそうした場面が良く出てくる。最も、普段あまりないことだからこそサガとして記憶に留められたのかもしれないが。
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というわけで古代北欧史スキーにとっての聖地、シングベリールにちょっと行ってきた。
え、行き方? 直行便はないので、オスロとかコペンハーゲンとかヘルシンキとか、どっか適当な北欧の空港で乗り継ぎすればいけるよ! ちなみに首都レイキャビクからシングベリールはバスで1時間半くらい。レンタカーでも行けなくは無いけど途中の道が 北 海 道 か よ っていうくらい何も無いので、パンクしたり脱輪したりしたら地獄見ると思って自己責任でオナシャス。私は大人しくバスツアーに参加しました…。
というわけで、↓の見取り図(出典元:サガとエッダの世界)を参考に写真をドウゾ。
●「法の岩」
岩自体は平たくて草に埋もれている。岩の上に立って喋ったんだろなコレ、っていう感じ。
だが思ったより小さかった…。
そして背後の岩壁との高低差があんまりなくて「??」ってなった。
なお岩の手前はこんな感じで柵があるので近づくことは出来ない。
ちょっとカメラを引いてみたところ。人物との対比で大きさがわかるかと思う。
なお、ずっと気になっていた岩の裏側の崖は…
こんな感じでした。
背後に見えてる岩壁との間にかなり距離があることが判るかと思う。
●シングベリール
岩の前から見下ろした原っぱ。この目の前で法廷が開かれていた。
いちおうその跡地みたいなのはあるんだけど、草に埋もれてるちっちゃい円座みたいなやつで、うーんここなの? ううーん…みたいな。
だいぶ空想力頑張らないと、ここで全島集会が行われたとは想像しにいくいっス。
●アクサ川と滝
議会の原を流れるアクサ川が滝になってるとこ。
法の岩から1キロくらい離れている。けっこう歩く…
滝のあたりにあったアルシングでの決闘のパネル。
人を殺した場合の裁判もアルシングで行われ、一般的には被害者側の親族に対してお金を支払うことで仲裁されていた。奴隷の場合は安く、自由民の場合は高い。ただし血讐(フェーデ)という言葉が示すように、殺人に対して黙っていることは「不名誉」でもあった。そのため遺族が賠償に納得せず、互いの一族郎党を巻き込んだ紛争になることは珍しくなく、そのうちのいくつかはサガとして語り継がれた。
ちな、この滝のあたりから道がいくつかに分岐しているんだけど全部徒歩で回ろうとすると半日がかりになると思う。
●大地の割れ目「ギャヴ」
歴史に興味がない人にとっては、この場所は二つのプレートがぶつかりあう境界線が見られる地質学的に面白い観光名所だろうと思う。北米プレートとユーラシアプレートが毎年少しずつ離れてゆこうとした結果できたのが、この割目。アイスランドは「火山の島」で地震も多いが、それはこの二つのプレートの境界だからなのだ。もっとも四つもプレートが重なってる日本よりは少ないんですけどねHAHAHA。
ビジターセンターからは、割れ目を下りていくと「法の岩」に辿り着ける。
散策の道は割れ目を埋めたててつくられている。
埋め立ててない部分の底のほうをのぞいたらけっこう深かった。そして底にまだ雪が残っていた…。
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で、ここに行ってみてわかったこと。
・5月初旬はまだ雪が残ってる、クッソ寒い
全島集会が6月なのは、それより前の季節だと寒くて集会出来ないからと思われる
・アイスランドは風が凄まじく強い。ガンガン風が吹きつけてくる原っぱでの集会は声が聞こえづらい。
それは「法の岩」周辺でも一緒。よってこの場所が声の響きやすさで選ばれたという説はだいぶ疑問。声の通りやすさだけなら岩と岩の間とかでやったほうがマシ
・法の岩と背後の岩壁の間はかなり離れていて、岩の前から声を出してもうまく反響してくれない。多少エコーがかかるくらい
というわけで、冒頭に戻る。
「法の岩」で法を宣誓したのは声が響きやすかったから、という説があるが、私はその説はあまり支持出来ないと思った。だって声ぜんぜん響かないし風に邪魔されるんだもの…。背後の岩壁による視覚効果とかのほうが主要な理由だと思うよ。
現地に行かないと判らんことは一杯ある、だから冒険クエストは面白い。
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